元死人二人&解決策
「まさかあなたまでもがこんなことになっているとはね」
透は壊れた家の前で倒れている男に向かってそう告げる。その男の周りの土は赤く染まっていて体には何カ所か穴が開いていた。
「悠弥さんでも黒羽 仁たちに勝てなかったとはこれは予想以上に最悪なのかもしれないなあ」
1人で呟きつづける透。その顔にいつもの笑みはなく、想像以上の仁たちの強さに正直に言って恐れを抱いていた。
このままでは本当に自分が殺されてしまうかもしれない。自分はまだまだやってみたいことがたくさんある、人生を謳歌できなければ先に逝ってしまった家族たちに顔向けができない。
そう考えるからこそ自分が太刀打ちできずに、自分に敵意を持っている相手が恐ろしい。
「まったく、自分は変わることなく臆病だな」
「人間なんてそんなものだろう?」
透の呟きに反応する声があった。しかし透の周りの状況は一切変わっていない。
ではどこから声がしたのか。その答えは。
「悠弥さんまでもが死んだふりをしてやり過ごすとはね。この場合、実力のある人たちの死んだふりは必ず通用するのか。それとも彼らが馬鹿みたいに鈍いのか」
「その両方って考え方もあるだろう。別にどっちもって答えは悪いわけじゃあないんだからさ」
倒れていた黒羽 悠弥は先ほど透がやっていたように死んだふりをしていたのだった。
しかし
「体に開いていた穴はどうやったんですか?」
「普通に開いているよ。ただそこにあるべき血管や重要器官を魔法で別の場所に移動させてるだけでね」
「なるほど。ずいぶん細かい制御が必要な魔法かと思ったら体の肉を移動させて穴を作っただけですか」
「………どうしてそんなことをするのかなあ」
余裕のない透と同じように負けたはずなのに余裕のある悠弥。この差はいったい何なのだろうか?
「透君、君は今仁たちに殺されるかもしれないと怯えているのかもしれないがそう悲観するものでもないよ」
「………なんでそんなことを言えるんですか?」
「仁たちは確かに強い、しかしあれは彼らの才能以上の力だということは君も気付いているだろう?」
「ええ、だから僕は彼らに時間制限があると読んだんですが………」
「その読みは間違っちゃあいないよ。ただ彼らの時間制限は1日やそこらじゃあない。そして私たちが突くべきなのはそこじゃあない」
「ではどこなんですか?」
透の問いかけに悠弥は大げさに手を振り上げながら、まるで観客を沸かすためのパフォーマンスのように体を使い答える。
「孫に甘いおじいちゃんもそろそろ目に余る事態だろう?」
この歳になって父親に頼る悠弥だった。