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不幸前夜

「何も起きないわね」


「何も起きないね」



 結局僕たちはこの黒羽本家に来てから3日間、何も起こることなくすごしていた。

 それどころか勇者たちはそもそも何の活動もしていないのか五家の誰かが襲われたなどと言うこともなく過ぎている。


 黒羽の爺さんがアリスト王国から聞き出したことによると聖剣の新発見というのは聖剣の合成についてだった。

 2種類以上の聖剣を1つの聖剣にするという聞いたところではすさまじい技術に思えるのだがどうやらそううまくいくものではないらしい。


 なんでも合成することでその元となった聖剣の能力は使えるらしいのだがその力は幾分か弱くなるらしい。

 1本の聖剣で複数の能力が使えるというのはいいことだがその力が弱ければ意味がないということでもっと研究が進んでから発表するつもりだったらしいのだが、それに不満を持った発見者スティフ・サーリーが国から逃亡、その際に色々と持ち出しては問題のあるものを持ち出したらしく国から追手を出したらしい。



「しかしこれだけ何もないということはもしかして何かの準備をしているという可能性もありますね」


「まさかとは思うが『勇者の聖剣』を強化しているのではないか?スティフ・サーリーは聖剣も盗んだという話であったろう?」



 その可能性は否定できない。しかしいくら『勇者の聖剣』を合成したところで弱くなっては無意味だと思うのだが。



「そうだな、国から逃げる前は不完全だったとしても仁たちと一緒に逃げている間に完成させることも考慮しといた方がいいだろうしな」


「でもだからといって気を張りすぎたらだめですよー。みんなほどほどに気を休めましょうねー」



 2人の言うことはどっちも正しいね。最悪を想定しながらもほどほどに気を休める。大事なことではある。

 あるのだけど………どうにも今日は嫌な予感が強い。


 これまでの3日間感じた予感よりもはるかに強く感じる。本来ならここから全力で逃げようとするのだけど、何かあった時にここならばそれほどひどい被害は出ないだろうから逃げるわけにはいかないんだよな。



「透君、もしかして君も嫌な予感がするのかな?」


「ええ、悠弥さんもですか?」


「ああそうだよ。………透君、もしも私が君たちと別々に行動することになったらどうするつもりだい?」



 悠弥さんと別行動するならか。それなら



「僕の家に向かいます。ここほどではないですけど警備は厳しいほうですし、周りへの被害が出ないようにする仕掛けだけはどこよりも優れていると自負していますから」


「そうか、蓮たちを頼むよ」



 それがこの事件において最後の悠弥さんとの会話だった。後から思い返してみるとこの時すでに何が起こるかわかっていたんじゃないかと思ってしまう。

 そんなはずはないと分かっているのにね。



 そんなふうに思ってしまうほど、それだけあれは衝撃的な出来事だったんだよね。

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