事件は終わり また次が始まる
あの悲惨な出来事からすでに2日。つまり今日は週の初めである月曜日である。
いや、本当に大変だった。あれから悠弥さんたちを何とかシークレットルームに連れて行き他の客の邪魔にならないようにした後は時間をかけて蓮と茜がまずい反応をしなくなるまで放置し、蓮たちがなんとかなってからようやく悠弥さんたちをまともに戻すことができたのだ。
自給1000円じゃあ割に合わなかったように思える仕事だけど、まあ案外ああいう喫茶店みたいな店で働くのもいいかなと発見できたことで良しとしようか。
もう将来何をするかを考えておかないと危ないからなあ。
と、そんなことを考えて時間を潰していると瞬が教室に入ってきた。しかも一直線に僕の方に向かってきているのだけど、こんな朝から何の用だろうか?
「透君、いろはさんが迷惑をかけてすみませんでした」
「ああ、そのことなら気にしなくていいって言ったろ。もう解決したことなんだしそこまでの被害を受けたわけではないんだからさ」
瞬には土曜日のうちに何があったかを伝えておいたんだけどまさかまだ気にしていたとは。
僕としては自分のお父さんたちの方を心配してあげた方がいいと思うのだけどそこらへん彼はいったいどう考えているのだろうか。
「おはよう透君、瞬ちゃん。瞬ちゃんがここにいるなんて珍しいね」
「蓮さん、土曜日はどうもすみませんでした」
「ん?ああ、別にアレは瞬ちゃんのせいじゃないんでしょ。別に私も気にしてないから謝らなくていいよ」
「ですが………」
どうにも瞬は今回のことに責任を感じすぎている気がするなあ。でも今は瞬にしてもらいたいこともないし、本当に事故みたいなものだから僕としてはこの話を終わらせたいんだよなあ。
「ねえ瞬ちゃん、あなたがどうしてあのことに責任を感じているのかは分からないけれど、責任を感じているというのなら尚更あのことを忘れられるように掘り返さないでほしいの」
「そうですか。わかりました、この話はもうしないようにします」
「それじゃあまた放課後にね」
「ええ」
ずいぶんと冷淡に追い返したな。それだけ忘れたい出来事だったってことなのかな。
「透君もできれば話さないでね」
「まあ楽しい記憶とはいいがたいからね。必要がない限りは話さないよ」
「ありがとう。それじゃあ今日からの学校頑張りましょうか」
「そろそろ後期の中間テストがあるんだっけ?」
「それが終わったらいよいよ冬休みよ。………今年はお年玉をいくらもらえるのかしら」
「気の早い話だねえ」
まあ、そんな先のことを思えるのは平和だってことだよね。
こんなことを考えた日の昼休みに黒羽 仁が脱走したという知らせを受けたのだった。