灰色の王 白の愚者
何の手加減もせずに売ってくるディアの魔法を食らい続けておよそ20分、どうにか状況を変えようとしてもことごとく潰されてきた。
幸いと言ってはあれだがキングの駒を狙われていないのが唯一の救いだろう。つまりディアはまだ僕を見限ってはいないということなのだから。
しかしいつ見限られてもおかしくなくなってきたので少し前にした細工を発動させる。
「《解放》!!」
「これは!?」
僕の仕掛けにより一時的に魔法を全て(試練場の魔法以外は、つまりディアの魔法だけを)解除したことにより空中でいたぶられていた僕の体を再び打ち上げるものが無くなり僕は20分ぶりに地面に接することができたのだった。
「さてと、ここからどうしようかな?」
まあとりあえずはこの迫ってくる黒の駒たちをどうにかしようか。
「行けいわが兵士たちよ!!透を打ち倒せ!!」
そんなに煽らなくてもいいだろうに。とりあえずあの兵には何が聞くのかを試してみようか。
「『黒札』発動、《火龍・水龍・土龍・雷龍・風龍》」
全属性の魔法を『黒札』で放ってみたけれど弱点属性はあるのかな?
傷一つつかなかった、これは僕の黒札が弱くなったのかそれともあの駒たちが固いのか。前者だったらちょっと泣くかもしれないな。
まあ次だ。これならさすがに壊すまではいかなくても日々ぐらい入るだろう。
何も通用しなかった。さすがにへこむ。しかも僕の魔道具が効かない理由が魔力の影響を受けない材質で駒が作られていたというまず最初に気にしなければいけないことで、それに気づくのにずいぶんとかかったのが僕のへこみ具合をさらにひどいものにした。
「ああなんて僕は間抜けなんだ」
「確かにいまの貴様は気が緩みすぎではないか。こんなことに今頃気づくとは鈍いと言われても反論できんだろう」
「そうだね、ディアの言う通りだ。僕はなんて鈍い奴なんだ。こうなったらもう穴でも掘って『ここに鈍い男埋まる』とでも看板を置いてからどれだけ酸素が無くなっても気づかないか試すしかないじゃないか」
「それはもう鈍いという次元ではないだろう!!」
ふふっ、そんなことを言いながらどうせディアだって内心では「あいつマジ馬鹿じゃね?こんなことにも気づかないとかあほすぎでしょ(笑)」とかって思っているんだろう。
もういいさ、僕が鈍い男だっていうのなら鈍いまま合格すればいいんだろうこの試練を!!
「さあ革命の時間だ兵士ども!!いまこそ誰に頼ることなく自分の意思で動くのだ!!」