夢と黄 譲れない戦い?
透と奈々が戦っている同時刻、夢見 悠と黄色は二人そろって校舎の中を走っていた。一階の端に当たれば今度は反対に、全ての部屋を調べれば今度は上に。
そんなふうにしていたら彼女たちはついに屋上へとたどり着いたのだった。
「さてとここが最後みたいだけど何かあるかな?」
「パッと見、何もないですね。しかしあの陰険ドS腹黒大馬鹿ならそんな簡単に目につくようなものは用意しないでしょう」
「つまりここも細かく全部調べるんだね………」
「当然です」
そうして手分けをして屋上を探す2人、しかし結局何も見つけることはできなかった。
「これはつまりはずれだったってことでいいのかな?」
「しかしそうなると私たちはどこを探せばいいのかわかりませんよ。もう他の場所は全部探したんですから」
「そうだよねえ、僕も愛しの先輩を見つけたいんだけどそう簡単にいくものじゃないよね」
黄色がそう言った瞬間その場の気温が何度か下がった気がする。それほどの寒気がする発信源は悠だった。
「黄色、そんな簡単に愛しのなんてつけるものではありませんよ。そんなだから真面目に取り合ってもらえなくなるんですよ」
再び温度が下がる。次の発信源は黄色である。
「そうかい?まあそれでも自分に正直になれないからって好きな人に毒舌を吐く人よりはましだろうよ。ゲームとかならまだしも現実でそんなことをやられてもうざいだけだもんね」
「なんですか」
「なんだい」
突如始まった女の戦い。時と場所を考えろとツッコミを入れる人間もやめなよと言って止める人間もいない今、この2人は止まることなく戦い始めた。
黄色が雷を落とせば悠は見えない壁で防ぐ。悠が黄色を押しつぶそうとすれば黄色は雷となって脱出する。
さすがに聖剣を使うことはなかったが2人の戦いはそれでも周りを壊していった。しかし2人はむしろ校舎を壊すことで競い始めたかのようにより激しく範囲の広い魔法を使っていく。
そうして5分ほどであたり一面、校舎だけにとどまらず敷地内の建物を1つを残して壊しつくした2人は息を切らせ座り込む。
「はあ、はあっ、僕の勝ちだね………」
「っ、何を、言っているのですか、私の勝ちですよ………」
「まだ負けを認めないなら」
「ええ、まだあそこに一つ建物が残っていますね」
「それじゃああそこを制圧したほうの勝ちってことで」
「ええ、いいですよ」
そうして2人はただ1つ残った建物に向かっていく。
ただ一つ残った部室棟に何がいるのかを知らずに希望をもって向かっていった。