茶の戦い 一進一退の攻攻
「北条っ!!蓮!!」
くそっ!!まさかアイツがここまでやるなんて!!
あたしと茜が蓮と話すために戻った時にはもう遅かった。あたしたちが見たのは赤い液体の中に倒れている蓮と北条の姿だった。
それを見た瞬間に飛び出していく茜の後ろを周りを警戒しながらできるだけ早く追いつこうとする。
あたしの活性による回復だと体力を消耗させてしまうので蓮たちは茜に任せておく。しかし問題なのは2人をやった奴がわからないってことだな。
切り裂かれた2人を見ても奈々は冷静だった。今自分が感情のままに動けば2人をこんな風にしたものに自分たちもやられ壊滅してしまうという可能性がその冷静さを保たせていたのだ。
しかし茜はそうではなかった。ただ反射的に2人に近寄り、何も考えずにただ助けようとしただけだった。
そしてその違いが2人を分けたのだった。
「えっ?」
「茜!!」
蓮に近づいた茜の腹を一本の剣が刺し貫いた。そのことを理解することもできずに倒れる茜とすぐさま魔法で作った槍を倒れている蓮に向かって打ち出す奈々。
その槍は蓮に当たることはなかった。いつの間にか茜から抜かれた剣で蓮がはじいたのだ。
「てめえそこまで落ちたのか透!!」
確かに目の前にいるのは、茜に剣を刺したのも蓮だ。しかし奈々には確信があった。蓮の体を操っているわけではなくただ透が蓮の姿に似せているだけだと。
一方透は何も考えていなかった。いや、どうすれば自分のすべきことができるかしか考えていなかったのだ。
もはや彼には自分がだれを攻撃しているのかなどわかっておらず、また奈々の言った言葉にも何の興味も反応も示しはしない。
奈々の腹を狙い聖剣で薙ぎ払うがそれは避けられた。よって『黒札』による死角からの攻撃、それも避けられたのを見た透は今までの3人とは違うと認識しより苛烈な攻撃を仕掛ける。
当然奈々も反撃を行うのだが透は致命傷以外は避けようとせず、むしろ反撃されるのは自分の攻撃が足りないからとでもいうようにより激しい攻撃になっていく。
一進一退というにはあまりに奈々が不利な状況の中、この場に隠れて、というより倒れて戦いの様子を見ている人間が一人いた。
彼女は他の倒れている2人を治療し、何とか一命をとりとめることに成功したのでこの戦いに割り込もうと考えていたのだが今の自分ではどうにもならないと悟り今できることをすることにした。
透と奈々の戦いの傍らで何が起こっているのかはもはやだれにも分からなくなっていた。