幕引きと新たな幕開け
決着
さすがアーベル、『勤勉』の美徳なだけあって僕の即席魔道具で戦うという条件があったのにあっさりと危なげなく勝利したか。
まあ決着した時点で僕の作った魔道具は余っていたので僕たちの勝負は僕の勝ちなわけだけどね。
しかしまあこんな現実逃避そろそろやめようか。どんなに言いつくろっても話をそらしても僕たちが偽物を逃がしたことに変わりはないのだから。
まあ魔道具の緊急避難機能みたいな感じだったし、彼もただ使われただけっぽいし今頃どっかの火山にでも捨てられたんじゃあないかな。
「はあ、結局逃げられてしまったか」
「まあいいんじゃない?確かに彼の使っていた魔道具を解析して作り手の特徴とかを知りたかったけど別にそこまで必要なわけでもないしさ」
「そうか、しかし私もまだまだ勤勉さが足りないのかもしれないな。帰ったら今まで以上の特訓をするとしよう」
はあまったく熱心なことだねえ。まあとりあえずパーティはもう参加しなくてもいいだろうし家に帰ってゆっくり寝るとしようか。
「それじゃあ今度こそ僕は帰るよ。その体はあげるから後はうまくやっておいてね」
「ああ、報酬は上乗せして振り込んでおこう」
「期待しているよ。じゃあね《移せファントム》」
ん?ここはどこだ?僕は家に帰ったはずなのになんでこんな白い場所にいるんだ?
「よく来たね」
「!?」
誰だ!?全く気配を感じなかったぞ!?
「おっと驚かしてしまったかな。まあ今は雪白一族も壊滅状態だしこの状況に慣れていないのも無理はないかな」
「………どういうことだ?」
いったいこいつは何だ。目の前にいるはずなのに、僕はこいつを見ているはずなのになぜ認識できないんだ!?
それに雪白一族の何を知っているというんだ?
「まずは自己紹介をするとしようか。僕は第4の魔道具、昔は魔道具を生み出す魔道具と呼ばれていたものだよ」
「なんだって!?」
『魔道具を生み出す魔道具』、それは『聖剣』、『美徳』、『大罪』と起源を同じにすると言われている魔道具だ。
そんな魔道具がなぜ僕を………魔道具を生み出す!?
まさか雪白一族の力は………
「気づいたみたいだね。それじゃあ僕の用事を済ませるとしようか。いまは滅びた一族と同じ道をたどろうとしている君たちに少し干渉したいのさ」
滅びた一族と同じ道をたどろうとしている?どういうことだ、世界が変わって魔道具が生まれたのはたった100年前の事だろう?
そうして僕と魔道具の世界に迫る会話が始まった。