戦いの始まり 30秒後の未来
side 黒羽 蓮
「さあ、それでは始めるとしようか」
白服の彼がそういうと彼の手に本が現れた。その本はどう見てもただの本ではない、なぜならこれだけ離れていてもあの本からすさまじい威圧感が私に襲い掛かっているからだ。
「はははは、そんな本を出したところでどうなる!!私にはあの方からもらった力があるのだ!!」
「人からもらった力だけを誇るなど『勤勉』を名乗る資格がないと自分で言っていると思わないのだろうか」
まあ確かに『勤勉』なら自分でコツコツと研究したりして強くなっていきそうなイメージがあるもんね。でもこんな簡単にぼろを出す人を紫原さんは『本物』だと思っていたのだろうか?
「まあとりあえず貴様がもらった力とやらを解析させてもらおうか」
「さあ逝くのだ『予言者』、『壊し屋』!!」
偽物の周りに巻物といくつかの大きな石が浮かんで現れたがあれらもまたすさまじいほどの威圧感を感じる。これほどの力を持つ2人の戦いを私は安全なところから見ていられるのだ。こうなったらこの戦いで学べるだけ学ぼう。
「ほう、それが貴様の力か。名前からすると予知の力と一撃必殺のような力の魔道具である可能性が高いな。私の推測があっているならまず私の行動を予知し避けきれないとわかった時点で必殺の一撃を打ち込むつもりかな」
名前からそこまでのことが予想できるの!?私ならいったいどんな力を持った魔道具なのかを気にしてまずは様子見に徹するのに。
様子見に徹するというのは下手をしたら私のほうもいくつか知られることがあるけれど『勤勉』は自分の手を一切教えることなく相手の力を予想した。これで相手の力が予想通りなら一気に有利になるし、外れていても特にデメリットはないというどちらに転んでも問題のない戦い方。
しかし私には少なくとも今はこんな戦い方はできない。なぜなら相手の力を予測できるだけの経験が私にはないのだ。あの人は名前で判断したと言ったがどうにもそれだけではないような気がする。
「さああいつを粉々に砕いてしまえ!!」
「ほう、これだけの数の小石を四方から襲わせてくるとはな。この魔道具は半分自律式なのかな?いやそれだけではなく、この小石は複数で一つの魔道具であるということか」
「何を言ってもどうでもいい!!お前はあと30秒後に死ぬのだからなあ!!」
今の発言はもう一つの魔道具が予知の力であるということの証明だろうか。でも本当に予知の力なら彼はもう逃げられない!?
「『無駄だよ、貴様の予知は通用しない』」