そろそろ本当に帰りたい(もう帰ります)
炎に囲まれ続けておよそ5分、外から僕を見ることができないのをいいことに思いっきりくつろいでいた。
しかしこのレベルの魔法を5分間も続けるなんて相手が弱ければ死んでしまうところだったのに、そこら辺は考えているのだろうか。と思い『真実の聖剣』で魔法の効果を読み取ってみると、どうやらこの魔法は相手が一定のダメージを受けるか気絶するかで自動的に解除されるものらしい。
なるほどだからこれほどの間魔法が続いていたのか。しかもこの魔法が続いているということは神奈君から見れば僕がまだまだ大した傷を負っていないということを教えているようなものなのか。
ならばこの魔法を利用して一芝居うってみようかな。
そうして僕は腕を適当にふるい、炎の渦を終わらせると同時に地面に倒れこんだ。
「や、やったのか?」
ふっふっふ、やはり悩んでいるな。魔法を強制的に終わらせながら自分が倒れたことで彼は僕が気絶して魔法が終わったと考えるのが普通だろう。しかし5分間も耐えていた相手が何もできずに気を失うものなのかとも考えてしまうよね。
さあ悩め、君が悩んでいる間に僕は
ぐっすり寝させてもらうからね!!………おやすみ~
side 京極 春香
はあ、本当に面倒なことになりましたね。………思えば私の母が今の父と再婚したことからこんな状況は続き始めたのでしょう。
父はかなりの資産家だったのでこの学校に通うことになったのですがそのためにおぼえた礼儀作法やらなにやらで最初は母を恨んだものです。まあ今はそんなことを思ってもいませんし母も気にしていませんけれど。
そうして通い始めてから今日までおしとやかなお嬢様を演じてきたというのにまさか透君がこんなところに来るなんて予想していなかった。
しかも紅家の婚約者になっているし、いきなり決闘を始めるし、さらには神奈さんと戦うなんて(最後のは私のせいだけど)何を考えているのだろうか。
今は気絶したふりをして寝ているけど魔法をぶち当ててあげるべきなのかしら。神奈さん、いまなら攻撃し放題ですよー、悩まなくってもいいんですよー。
まあ攻撃したって全部効かないとは思いますけどね。
しかし神奈さんが戦いを求めるのは予想ができていたけど、彼の親友である五十嵐さんが何もしてこないのが不安ね。あの腹黒はいったい何を考えているのやら。
とりあえず透君に貸しを作っておくのも悪くないから五十嵐さんの動向には注意しておきましょう。
ところでさっさと起きなさいよ透君!!