過去の罪
side 黒羽 仁
「それじゃあまずは過去の罪を見てみよう」
「僕に罪なんてない」
だから問題はないんだ。こんなことは早く終わらせて萌たちを助けるんだ。
そして次の瞬間、周りの風景が変わり大きな山と降り積もった雪が現れた。
『やあ坊や、君はもしかして雪白かな?』
『うん、そうだよ。オジサンはだあれ?』
誰もいないと思っていたけど人がいたようだ。そちらに視線を向けてみるとそこには小さい雪白君と父さんがいた。
『おじさんはね、みんなのための正義の味方なんだよ』
『正義の味方?』
『よくわからないのかな?まあ気にしないでいいよ。ところで雪白一族はこの山にいるのかな?』
『そうだよ。みんなに何か用なの?』
『そうなんだ、案内してくれないかな?』
『いいよ!!』
父さんがいることに驚いたがとりあえず山に入って行った2人についていく。そうしてしばらく歩くと頂上までの階段が現れた。
そして僕の目の前で信じられないことが起こった。
父さんと雪白君は頂上まで色々な話をしていたのだが、頂上について村のようなものが現れると父さんは雪白君の両手両足をへし折ったのだった。
「な、なんで」
『オジサンなんで僕の足と腕を折ったの?』
『これからのために必要だからだよ。さあ雪白一族!!ここに1人雪白がいる。この雪白を助けたいのならまずは全員何も持たず私の前に集まれ!!』
父さんがそう言った瞬間に村のあちこちから人が現れた。
『そこの旅人よ、何の用があってその子にそんなことをするのだ』
『お前たちを滅ぼすためだ。私は正義の体現者としてお前たちを滅ぼす』
『ならばその子も助ける気はないということかの?』
『いや、お前たち次第ではこの子は殺さないでおく。その条件はお前たちが1人1人私の目の前で首を切って死ぬことだ』
「父さん何を言っているんだ!!」
僕は父さんを止めようとするが触れることができなかった。
「無駄だよ。これはいま行われたことじゃあなくって、もう行われたことなんだよ。君にできるのは見ているだけだ」
「そんな!!」
「ほら見てごらんよ、人が次々と死ぬ光景をさ」
彼の言う通り次々と人が死んでいた。みんながみんな白い剣で自分の首を斬り、次の人がその剣を拾いまた自分の首を斬っていく。
それを雪白君は泣きながら、父さんは顔色を変えることなく見続けた。
そしてその場で生きている人は2人だけになった。
『これで全員か、それでは目的を果たすとしようか。大いなる神よ、今ここに白き血と肉をもって正義を体現するための力をください《聖剣創造》』
(グチュッ、ギチギチ、ザザザザ)
「な、何が起きているんだ!?」
僕の目の前では死んだ人たちが1つに混ざり合っていた。骨も肉も血の一滴さえもが集まり混ざり合う姿は醜悪という言葉でさえ言い表せないものだった。
「う、うえぇぇぇ!!」
思わず吐いてしまった僕だがなぜか何も吐き出されることはなかった。そんな僕の状態に関係なくそれは続いていき、最終的に2振りの剣となった。
『これが『破滅の聖剣・ワールドエンド』と『愛情の聖剣・マリア』か』
(ザザザザ)
その言葉を最後にまた風景が変わる。ここは黒羽の本家か?
『私はこの聖剣があればいい、この聖剣はお前にあげよう』
そう言って父さんは『愛情の聖剣』を粒子のようにし、僕の体に入れていった。