敗者と勝者
瞬殺、いや殺されてはいないから殺ではないな。なんだろう瞬敗?
まあとにかくあっという間に勇者たちに血まみれにされた僕はこんな状態であるにもかかわらず勇者に質問されていた。
「さあもう抵抗はできないだろう。父さんについて教えてもらうよ」
「いやいや、その前に出血で死にかけている僕を見て何とも思わないのかな?」
「………《ヒール》、これで傷は全部ふさがったから大丈夫だろう。さあ話してもらうよ」
「はあ、しょうがないなあ。一応命を助けてくれたんだし質問に答えてあげようかな」
「それじゃあ話してもらうよ父さんのことを」
「ああ《最低な黒羽の息子に教えてやろう》」
「だから父さんは、っ!?綾香さんいったい何を!?」
勇者の仲間で綾香さんと呼ばれていた女性が勇者に襲い掛かる。それに反応した勇者はさすがというしかないけど仲間相手に本気で戦えない以上無力化するのに時間がかかるだろう。
だからその隙に次の手を仕込む。
「『鏡に映ったのは誰だ?』、『夢を見たら終われない』、『幸せの中で死んでいく』」
赤井の前に鏡、水戸の周りには黒い煙、そして雷の手に燃えているマッチ棒が現れその効果を発揮し3人は意識を失い倒れていく。
さきほど使った3つの魔道具は『収納の聖剣』に入れていたもので、どれも相手の意識に作用するものだ。
勇者も倒れた3人に気付きこっちに来ようとするが綾香さんに邪魔されてくることはできない。
そして残った1人には拘束の魔道具『かごの鳥』で捕まえる。これで逆転終了。
「さあこれで君の仲間は全員僕の手の中だ。抵抗をやめてその聖剣をこっちに渡してもらおうか」
「くっ、こんなことをして卑怯だと思わないのか!!」
「なに言ってるのさ卑怯に決まっているだろう。でも僕は勝つためなら何でもする人間なんでね、そんなことを気にすることはないんだよ」
「雪白君、そこまでにしてもらいたい」
「いいよ」
「えっ!?」
何やら勇者が驚いているが何かおかしいことでもあったのだろうか?
もしかして僕が帰ろうとしていたのを邪魔したことを忘れているのだろうか。
「それじゃあ僕は帰りますね。一応言っておくとそこで意識を失っている3人は運が良ければ助かりますよ。『かごの鳥』に捕まった人は鳥を世話するように接してください。最後に操られていた人は意識を戻しておきました。ではさようなら『移せファントム』」
そうして僕は家に帰ってきた。
しかし勇者が叫んでいた気がするけど何だったのだろうか?