事件の結末 役立たずな白
………目が覚めた。いやそもそも目をつむっていたわけでも寝ていたわけでもないのでこの表現は正しくないだろう。
目をつむってもいなければ寝てもいないなら僕はいったい何をしていたんだろうか?
とりあえず現状を確認するために周りを見渡す、どうやら一高の保健室のようだ。人体模型がY字バランスをしているところなんて他にないだろうから場所はあっているはずだ。
しかしどうしてこんなところにいるのだろうか?
僕が自分の今の状況を確認していると保健室のドアが開けられ校長先生と生徒会、そしてディアと帝先輩と岩田先輩が入ってきた。みんな何やら深刻そうな顔をしているが何かあったのだろうか?
というかディアは何でここにいるんだろうか?
「目が覚めたようだな透。貴様に聞くがいったい何を覚えている?どうしてここにいるのか分かっているのか?」
「いや全然、どうしてディアがここにいるのかもわからないね」
ディアがわざわざ聞いてくれたので僕も今の状況を知るために素直に答える。
「そうかでは簡潔に話すぞ………」
そうして僕は3年と生徒会の模擬戦から始まる今回の事件について教えてもらい僕にかけられていた術式を解除してすべてを思い出したのだった。
ちなみに今日はちょうど模擬戦の日の1週間後らしい。
「はあ、全くもって無駄骨だったなあ。『怠惰』と『強欲』の戦いを見るどころか『怠惰』の力を解析することすらできないなんて情けないなあ」
「そんなことより貴様、我との約束は守れよ。《テリトリー》をきっちりと教えてもらうからな」
「はいはい、それで3年の先輩方はなぜここに来たんですか?」
「なに君の今回の目的を知りたくてね。ついでに君が何者なのかも知りたかったんだがどうやらそれは難しそうだからまた今度にするよ」
いや今度じゃなくて諦めてくれないのかな。まあとりあえず御堂先輩の寿命はすべて戻ったらしいので僕が今回のことで攻められることはないだろう。
「それで透君、どうやって同じ『大罪』同士で争わせたのか教えてくれるかしら?」
「ん?いや会長、別に『大罪』は仲間ってわけじゃあないんですよ。『美徳』とは協力して戦いますけどそうでないなら互いに争ったりしているんですよ」
特に『怠惰』のあの人は家族の寿命を『強欲』に奪われて、そのとき妹だけでも助けるために偶然所持していた『怠惰』の魔道具の所有者となることで寿命を奪われることなく命をつないでいるのだ。
そういうところが僕の『愛情』に好かれる原因なのだが今回は『強欲』から取り戻せたんだろうか?
「そうなの?まあ言われてみれば聖剣の所有者も別に全員が仲間同士ってわけじゃないしそれが普通なのかしら」
まあ『大罪』と『美徳』は互いに7人ずつのオリジナルがいてその人たちが自分の系譜の魔道具を作っているので聖剣とは違うのだが3年の先輩や校長先生がいるところで話すべきではないだろう。
なんで知っているのかと聞かれても困るし。
そういうわけで今回の事件は何も得るものがないまま終わっていったのだった。