巨乳と貧乳と変装生活
そして、次の日の朝。
「んー……」
俺達は寝ぼけながら歯を磨いていた。俺はどうも朝の雰囲気が好きじゃない。
ついでに、何故かまた俺だけ髪が長くなったようで、腰の少し上くらいまで髪がある。
時間が経つに連れて学校生活がハードモードになっていってる気がする。
「お前ここの触角みたいな毛どうにかなんねえの?」
「触角じゃないもん……何をしてもこの髪だけは跳ねちゃうんだよ」
こうやって優希と洗面所で歯を磨いている風景だけなら前にもあった。しかし、俺達が見ている鏡に映っているのは二人の女である。寝呆けながら歯を磨いている小さくて可愛い方が優希。その隣の鏡で自分を見てにやけているスーパー美人な方が俺。
「優希、今日の学校大丈夫だと思うか?」
俺は髪型をセットしながら優希に問い掛けた。しかし、優希は鏡の一点のみを見つめてボーッとしている。
「優希?」
「……えっ、あっ、ごめん。聞いてなかった」
こいつ、まだ寝呆けてるな。呂律がはっきり回ってない。水かけてやる。
「おーい、起きろ!」
俺は水浸しの手を優希の顔に塗りたくった。
「んっ、何するの飛鳥君!」
顔が水滴でいっぱいになった優希が頬を膨らませてこっちを見てくる。
「とっとと起きねえからだよ!」
そんな会話をしながら俺達は歯を磨き終わり、姉さんの所へ行った。
「昨日二人が寝た後、姉さんが校長先生と担任の先生に電話をしておきました。その姿でも不知火高校に通っても良いらしいですけど、通う為の二つの条件があるそうです」
1.絶対に学校関係者に女である事が知られないようにする事。周囲に知れ渡った場合は学校としても問題になるので即退学とする。ただし、入学金は返却。
2.他の男子生徒や先生との過度なスキンシップは控える事。
この二つを守るんならこの二つの条件を守るのなら転校しなくてもいいらしい。
これからの学校生活に不安を覚え深いため息をついていると、姉さんが思い出したように椅子の下から黒い紙袋を取り出した。
「優希君は大丈夫だとして、飛鳥君は変化が激しいですよね。だから学校で暮らしやすくする為に姉さん、色々グッズを買い揃えてきました」
「……何これ。俺どこも怪我してないんだけど」
姉さんが取り出した物は白い包帯のようなものだ。
「これはサラシといってそのそれなりに大きい胸を押さえる為に使います。優希君は……無いですね」
姉さんはたまに天然で人を傷つけることがある。今も、優希に精神的ダメージを与えた。
「なんだろ……元々男なんだから胸が小さくても気にならないはずなのに……」
優希が体育座りをして拗ねた。面倒な事になる前に何とかフォローしなくては。
「ほら、胸が大きかったら女だってバレる可能性が高くなるしさ、小さい方が良いって!
な?」
「そ、そうかな? ……うん、そうだよね!」
なんとかフォローに成功したみたいだ。ちょろい奴め。
「飛鳥君。姉さんがサラシを巻いてあげます。バンザイして下さい」
バンザイって……幼稚園児じゃないんだから。なんて姉さんに言ったら後が怖いからな。ここは素直に従っておこう。
「飛鳥君スタイル良くなりましたね。姉さんも嫉妬しちゃいそうです」
「ど、どこ触ってるんだよ姉さん! 普通に巻いてくれよ!」
姉さんが必要以上に俺の体をベタベタ触りまっている。
「ほら、締めますよー」
「うぐっ⁉︎ つ、強く締めすぎじゃない?」
「これくらいキツく締めとかないと。取れちゃったら大変でしょう? よいしょ……と。これで完璧ですよ飛鳥君。ある程度男の子に見える筈です」
筈って……曖昧だな。なんか、学校行くだけで変装って変な感じだな。
「優希。先に学校行っとくぞ〜」
俺は変装が終わってすぐ先に家を出た。
「あ、飛鳥君!待ってよ!」
優希はすぐ後を追いかけてきた。犬みたいで可愛い奴だ。
こうして、俺の女になってからの学校生活が始まったのであった。