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ピンチとヘタレと救出劇

「お前、今何してた?」


「ぁ……う……」


 すぐに通話を切ったものの、間に合わずあいつに見つかってしまった。男の目を見た俺は恐怖のあまり言葉を発することができなかった。何でこんなタイミングで帰ってくるんだよ。


「や、やってくれたね……そんなことしたら自分がどうなるか、わかるよね?」


 笑顔で俺の方へと少しずつ迫ってくる。情けないことに、恐怖と焦りから自然と涙が目に溜まってきた。


「嫌だ……もう、やめて……」


「僕の詰めが甘かったみたいだ。どうせ時期に逮捕される……僕の人生もめちゃくちゃだ」


 男は台所へ向かい、何かを探し始めた。


「なら、お前を殺して……僕も死ぬ」


 男が振り返った時、手には包丁が握られていた。


「嘘、だろ?」


「嘘なもんか。僕も早く楽になりたいんだ」


 虚ろな目をした男がゆっくり、ゆっくりと手に凶器を持って近づいてくる。逃げようにも両足の痛みに加えて腰が抜けて動けない。


「くっ、最後の最後までヘタレなのかよ……!」


「そう、僕はお前のそういう顔が見たかったんだよ。涙でグシャグシャになったお前の顔を!」


「何でっ、こんな……!」


「僕のために、死んでくれ」


 最後にもう一度だけ、皆に会いたかったな……言いそびれてた事もまだまだあったのに。まだ、まだ17年しか生きてないのに……こんなのあんまりだ。


 男が腕を上げる。これが振り下ろされれば俺の人生は終わる。俺は目を強く瞑り、死を覚悟した。


「誰か……誰か、助けてよ!」


 俺がそう叫んだ時、開くはずのない男の家の玄関扉が勢いよく開いた。



「――飛鳥ぁぁぁ!」



 男が包丁を振り下ろそうとした瞬間、見覚えのある金髪が男に飛びかかる。眼鏡の男は、床に倒れた衝撃で包丁を机の下に落としてしまった。


「な、何だ君は!」


「てめえこそ何なんだよ!」


 金髪の男は眼鏡の男を全力で押さえつけている。警察らしき人達や木刀を持った男もその周りを囲んでいる一瞬の出来事だった。まったく状況を理解できないまま、俺を散々苦しめた男はいとも簡単に警察に拘束された。


「兄ちゃん見つけたで結衣さん!」


「飛鳥君、無事ですか⁉︎」


「姉さん、麗華……優希」


 姉さんは自分の着ていたコートを俺に羽織らせた。さっきまでの寒さが嘘のように消えていく。


「もう大丈夫ですよ。見つけるまで時間がかかって……ごめんなさい」


「うんっ……ぐすっ……怖、かった」


 姉さんに抱きしめられた瞬間、溜まっていた涙が俺の目から溢れ出した。かっこ悪いな、俺。


「五十嵐飛鳥……僕は君を絶対に許さない! 何年かかったって絶対に不幸のどん底に落としてやる!」


 警察に連行されていこうとした時、男は俺の方を睨みつけ、そう叫んだ。姉さんの俺を抱きしめる力が強くなる。


「飛鳥君が無事で……本当に良かった」


 俺はその時姉さんの本当の笑顔を久しぶりに見た気がした。

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