俺と優希と俺の姉
衝撃の体験の後、俺は家に帰って俺の姉さんに事情を説明する事に。
「……では、お友達と銭湯に行ったらそこの優希君と一緒に女になった、と?」
今俺と優希の前で頭を抱えている女は俺の三歳上の姉である五十嵐結衣。いつでもニコニコ笑っているが、怒っている時は目の奥が笑っていない為とても恐ろしい。
「うーん……急にそんな事を言われても困りましたね……もしかすると、飛鳥君を自分の物にするために嘘をついている女狐という可能性もありますし、ね?」
疑いの目で俺を睨みつける姉さん。こうなる事はわかってたけど、なんとしても理解してもらわないと俺の人生が。
「飛鳥君なら、初めてのキスの場所と人物覚えてますよね?」
姉さんは微笑みながらキツい質問を投げかけてきた。横に優希がいるってのに……この人は。
「り、リビングのソファで……ね、ねえさんと」
俺は中学二年生の頃、風呂上りの姉さんに押し倒され無理矢理初めてを奪われたことがあった。今でも軽いトラウマだ。
「姉さんが一番気にしているホクロの位置は?」
「……太ももの付け根」
「正解です……ふふっ、認めざるを得ないようですね。お帰りなさい飛鳥君」
険しい顔からいつもの優しい顔に変わった姉さんを見て、俺は認めてもらえたんだと理解した。
「よっしゃー!」
大喜びする俺から徐々に距離をとる優希。待ってくれ、これは違うんだよ……不可抗力なんだ。
「あ、飛鳥君って……」
優希が白い目で俺を見つめてくる。やめろやめろ、そんな目で人を見るんじゃない。
「姉さんは悲しいです、飛鳥君が女の子になってしまうなんて。昨日も姉さんの服を脱がしてくれたじゃないですか」
姉さん。それ以上誤解を招く事を言わないで。たった一人の理解者を失う羽目になる。
「飛鳥君……大丈夫だよ。僕は飛鳥君にどんな事情があっても友達だよ?」
「ち、ちがっ……あれは姉さんが39度の熱出したからだな……!」
「うん……うん、そうだね。安心して、世間がどれだけ敵に回っても僕は味方だからね」
優希の気遣いが心臓を締め付ける。ああ……絶対誤解された。
「取り敢えず、明日の学校については姉さんが何とかします。二人共、今日は疲れたでしょう。明日も早い事ですし、もう寝なさい。優希君のご両親には連絡をしておきますから、泊まっていったらどうですか?」
姉さんは有名難関高校を成績1位で卒業し、20歳にして会社で重役を任されている。大学には進学しなかったのが惜しいくらいだ。運動神経にしても、容姿にしても一流だが重大な欠点がある。
一つは性格面だ。女の人には優しいが、男には容赦なく、近づかれるのも嫌がるくらい男女差別が酷い。
二つ目は、姉さんは何というか常識に欠けている。俺の前で着替え出すし風呂に入った後は何の躊躇いも無く裸で出てくる。
自分から俺に仕掛けてくるぶんには羞恥心も何もないくせに俺から手を繋げば、顔を赤くして何も喋らなくなる。
昨日だって病人をほっとくわけにはいかなかったから脱がせただけで……そんなつもりは全くない。
「は……はい、それじゃあ泊まらせてもらいます」
優希は姉さんに軽い憧れの目を向けていた。上辺だけなら男の求める理想像に近いかもしれないが、中身はダメダメだ。
「それじゃあ優希、部屋行こうぜ」
「う、うん!」
俺は優希の手を取り部屋に向かった。今でも女になった事については混乱している。
でも、ウジウジ悩んでもしょうがない。二人とも少し身長が低くなっただけなのが不幸中の幸いだ。
しかし、問題は俺の事だ。優希もともとあり得ないぐらいの女顔だったから全然問題無いが、俺は少なくとも女顔でも無く、寧ろ男の中でも男らしい部類の顔に属していた。
それが急に女顔、それもグレイテストな美女になったんだ。怪しまれるに決まってる。
「飛鳥君、早く早く!」
俺が考え事をしてる間に優希はそそくさと人のベッドに入っていた。
「何で二人で同じベッドなんだよ!」
「中学一年生の頃は一緒に寝てたでしょ? 二年生になってから寝てくれなくなったけど」
そういえば中一の頃は一緒に寝てたな。思春期突入してからは優希と一緒になんて恥ずかしくて断ったんだっけ。
「それに……不安なんだ。こんなことになっちゃって、これからどうなるんだろうって」
「……今日だけだからな!」