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涙と休みと作り笑い

「あーもう、カットカット! 一旦休憩挟もう! ……麗華ちゃん、どうかしたの? 表情暗いし、なんだか集中出来てない様に見えるけど」


「……すみません」


「もう今日は帰ってもらっていいよ。体調が悪いのかもしれないし、また後日調子が良くなってから撮影しよう」


「…………ごめんなさい」


 五十嵐さんが行方不明になってから四日が経った。間違いなく麗華さんは五十嵐さんの事を気にしている。普段の笑顔が一切見えないどころか、顔も青白く常に俯いていて、別人のようだ。


「麗華さん、一旦事務所に戻りましょう……僕でよければ話も聞きますから」


「杉本、さんっ、ごめっ……なさ……っ……!」


 麗華さんはスタジオを出て、車に乗ってもまだ泣き止まず、ずっとタオルで顔を隠し謝罪の言葉を小さい震えた声で呟いていた。

さすがに今の状態で帰らせるわけにもいかないので、事務所に着いてすぐに話を聞く事にした。


「少しは落ち着きましたか?」


 まだ完全には泣き止んでないものの、会話ができる程度には落ち着いたようだ。


「ふー…………はい、少しですけど」


 麗華さんは、無理に笑顔を作る。それもいつものドラマやCMで見せるような自然な笑顔でも無い、素人でも一目でわかる作り笑いだ。


「ウチ、兄……姉ちゃんがいなくなってから自分がどうやって笑顔作ってたのかわからなくなって、トークも演技もまったく出来なくなって」


 すぐに作り笑いを崩し、また俯く。


「そうですか……ちょっと待ってて下さい」


「え……は、はい」


 最近、社長は麗華さんを働かせすぎだ。弱音を吐かないのをいい事に、いくらでも働かせようとする。かといって、逆らうとどうなるかもわからない。でも、こんなにも精神的に追い詰められている子を放っておく訳にもいかない。


『杉本か、どうした?』


「……社長、お話があります」




「麗華さん、突然ですが明日からお休みです」


「……そっか、ウチもういらん子なんか」


「ははっ、違いますよ。五十嵐さんが帰ってくるまでの間、休業という形で社長と話をつけてきたんです」


 社長は意外にも自分の非を認め、反省していた。


「……ウチ、いっつも杉本さんに迷惑ばっかりかけてるやんな……ごめんなさい」


「いやいや、そんな! 麗華さんには日頃から無理してもらってますし」


 自分より一回り近く年齢の違う子に頭を下げられるのは何だか気分がよくない。


「僕が何としてでも五十嵐さんを探しますので、麗華さんはゆっくりしていて下さい」


 麗華さんの辛い顔はあまり見たくない。僕の専属マネージャーとしての仕事もしばらく少なくなるため、五十嵐さんを探す事にした。


「――待って。ウチも探しにいく。警察の人だけじゃ時間もかかるやろうし」


「……僕自身としては、しっかりと休んでほしいですけど、ね」


「姉ちゃんが行方不明になってる限りはのんびり休むなんて出来そうにもないです」


 麗華さんは強い口調でそう言った。どれだけ言っても説得出来なさそうだ。


「ふう……五十嵐さんが自宅から七つ先の駅で降りたということはもうわかっています。まずはそこに行きましょう」


「……はいっ!」



 僕はその時、ものすごく久しぶりに麗華さんの笑顔を見た気がした。

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