氷嚢と誠哉と鉢合わせ
西園寺誠哉だ。
自分で言うのもなんだが、俺は滅多なことではうろたえたりはしない。昔から父に西園寺家長男としての自覚を持つように指導されてきたからな。
だが、俺は今これまでに無いレベルの出来事にうろたえ、混乱している。この状況の打開策が何一つ浮かんでこないのだ。ふっ……跡取りがこのような事では、西園寺家の名に傷がつく。乗り越えて見せようじゃないか。この荒波を!
「こ、これは誤解だ。決して故意にした事では無く」
俺は説得を試みた。しかし、相手は聞く耳を持たない。
「くっ……落ち着け! ぐっ⁉︎ 目がぁぁぁ!」
目潰し攻撃を受けた俺は足をすくわれ、後頭部を強打した。
所詮は俺もこの程度の男だということか……不覚っ。
一体誰が運んでくれたのだろうかわからないが、次に俺が目を覚ましたのは保健室のベッドだった。
「ここは保健室……か」
「気がつきましたか?」
声のした方向に目をやると、眼鏡と澄ました顔が特徴の奴がいた。
「……久保翔一か。なぜ俺を助けた」
「一階の廊下で気絶している生徒を助けない人がどこにいるんですか」
一階の廊下だと? 俺が倒れたのは廊下では無かったはずだが。
「氷嚢、後頭部に当てておいてください……で、何をやらかしたんですか?」
「ああ、それなんだが実は――」
俺は体を起こし、久保翔一を見た。不服だがこいつならば相談にのってくれるだろう。
「――五十嵐飛鳥の全裸を目撃してしまったのだ」
「……は?」




