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風呂と性転換とプロローグ

 俺は五十嵐 飛鳥。

不知火高校っていう男子校に通う少し自分が好きな男子高校生。両親とは死別して姉さんと二人暮らし。できればこんな男子校、俺は通いたくなかった。

でも姉さんが"男子校でなければ通わせません"なんて言うから汗臭い男子校に通うことになったんだ。


 共学の高校で青春したかったなぁ……なんて。そして、今日は学校の帰り皆で銭湯に行くことになってたんだ。

そんでもってそこで俺は風呂で倒れたらしい。


「ぅ……」


 そして次に目が覚めた時、短いはずの俺の髪は長く伸び、腰はくびれ、尻は丸くなっていた。


「あ……え?」


 もうその時は動揺しまくりで何が何だかわからなかった。とりあえず周りを見渡すと、横には目を丸くしてこっちを見ている友達がいた。そいつの名前は城戸 優希。


 男の癖に女顔負けの可愛い顔立ちをしたやつだ。中学の頃は男からも女からも大人気だった。俺でもこいつは抱きしめたいぐらい可愛いとおもう。


「優希、他の奴らは?」


「飛鳥君が起きないから先に帰ったよ……それより飛鳥君……そ、それ隠した方が良いと思うな」


 顔を手で隠した優希が指を指した方向は俺の胸だった。優希の顔がトマトのように赤くなっているのを見た俺は、自分が気づいていないだけで、大怪我でもしたのかと思い、視線を優希から自分の胸へと下ろした。


 すると、そこにはたくましい胸筋が見えるはずの自分の肉体に、丸い脂肪が二つついていた。



「な………なんじゃこりゃあああああ!」



――そう、俺は女になっていたんだ。



「あ、飛鳥君……だよね? 僕、間違ってないよね?」


「あ、ああ。多分俺は五十嵐飛鳥だ」


 自分でも本当に五十嵐飛鳥なのかよくわからなくなっている。まさか、これまでの人生は長い夢だったのか……そんなわけないよな。


「だ、だよね」


 こいつもかなり困惑している。が、俺はもっと困惑している。何故急に女になったのか。さっぱりわからない。


「と、取り敢えず、この事は誰にも秘密だ。わかったか?」


 俺は優希の肩を揺らしそう言った。こいつなら誰にも言わないとは思うが、保険はかけておかないと。


「わかってるよ。絶対誰にも言わない……というか、飛鳥君……一度鏡で顔を見て来なよ。今の飛鳥君、凄い美人だよ」


 照れ臭そうに笑う優希。可愛い。


 俺は全身鏡の前に立ち自分の顔や体を満遍なく見た。身長も少し縮んだ程度で、髪は腰まで伸びている。


 鏡に映っているこいつは今まで見た事のないぐらいの美人だ。俺なら一目惚れして求婚するレベルだ。


 ただ、一つ難点を挙げるとすれば……それが自分である事だ。


「あ、飛鳥君」


 複雑な心境ながらも、自分の胸を揉んで感激していた俺にモジモジしながら話しかける優希。


「あ、あのね? 少し相談があって……あの、その……」


「ああっ、もどかしい! 彼氏か⁉  彼氏でも出来たのか⁉」


「違うよ、なんで彼氏なのさ! ぼ、僕も実は、昨日女の子に……なっちゃったんだ!」


「……は?」


 予想外だった。優希からこんな発言が飛んでくるとは思いもしなかった。


「ははっ、嘘つくなって」


「本当だもん! 信じてくれないなら……ほら!」


 ズボンを脱ぎ捨て、真っ赤な顔で目を閉じる優希。


「ぶっ⁉︎ わかった、わかったから早く下隠せ!」


「き、昨日の朝起きたらこんな事になってて……僕、誰に相談したら良いのかわからなくて……」


 取り敢えず今は優希と手を組もう。同じ境遇の仲間がいればとても心強い。


「優希。俺もお前がピンチになったら手伝うからさ、二人で助け合わないか?」


 ふっ……少し優しすぎるかな?  流石、俺。


「い……いいの?」


 優希はどんどん笑顔になっていく。


「折角同じ症状の奴が隣に居るんだ。助け合った方が女だってばれにくいだろ?よろしく」


「う、うん!ありがとう飛鳥君!」


 こうして俺たちは握手を交わし友情を確かめ合ったのであった。


「で、でも飛鳥君……握手の前に服を着てくれると嬉しいな……恥ずかしくて前が見れないよ」


「あ……すっかり忘れてた、悪い悪い」

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