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合流するために、その2。+待ちの兄のがっかりの巻


『ほーちゃん、フレ少ないね』

「ほっとけ…つかお前に言われたくないっつの」

『……。……えっと。……あーでも、流石っていうか…殆どオンラインだね。廃様ばっかなんでしょ、類友ってやつだね』

「うっせーな、いいから早くリヒにコールしろよ」

『うーん…』

「なに」

『なんて話し掛けたらいいかなあ…やだなあ、知らない男の子とか』

「……人見知り発動してる場合か!いーから早くやれ!!」


 と、怒鳴りつけたところで俺とハナのコールは切れた。

 リヒにコールしてるはず…呼んでいるはず。

 昨日、俺とあいつは同じ街で別れて落ちたから、合流するのは楽なはずだ。

 

 ……。

 上手く説明できるかな。

 リヒも面食らうだろうなあー。つーか、信じるのかな。

 普通で考えればちょっと有り得ん話だからな、別人のデータでイン出来るとか。

 だが、信じてくれないと困る。じゃないといきなり、俺がおかしくなったとか思われるだけだし。ハナが上手いとこ俺に繋いでくれるといいんだけどなー。

 

 待ち時間が超長く感じた。

 実際のとこ、まだインしてから二時間かそこらしか経ってないかなと思うんだけど。

 ……周囲の状況とかも気になるけど、そういう情報を手に入れる方法ってのはあんのかね。今のままじゃ公式サイトの閲覧も出来ねえし。つーか、公式のアナウンスはないのかな。

 『このゲームから脱出は不可能です』

 なんて、公式からアナウンスがあるのってお約束なんじゃないの?それもないってどういう事。プレイヤーがそれこそお約束ネタと勝手に結びつけて騒いでるだけでほんとは何かしらの方法でログアウトできますとかまさかねえよなー。

 なんて、つらつら考えてたら、頭の中にチャイムが鳴り響いた。

 一瞬、公式アナウンスか、と思ってびくりと身体が傾いでしまったが、この音は違う。

 開きっぱなしのウインドウを操作し、フレンド欄を開く。目を惹く明滅が一番上に。クリック。

 【フレンド登録】

 【『エーリッヒ』さんが、あなたにフレンド登録を申し込んでいます。許可しますか?】

 きたきたきたきた!ひゃっふう!おりゃー!ぽちっとな!

 全然知らない名前が並ぶフレリストの中、知ってる名前が一つ、混ざった。

 それだけでほっとする。

 すかさず、コール。


 ハナから一応説明はされたみたいだが、パニックの尾を引き摺ってる&知らない男子が苦手、のハナの説明の所為で、いまいち要領得ないっつか判るようなわかんないような、なんだそれ?って状態らしいエーリッヒ、リヒに、俺からガツガツと改めて状況を伝えていった。

 入れ替わってるというのは、俺が、俺しか知らないあいつの恥ずかしエピソードを言い掛けた瞬間、本気で納得したらしく絶叫で遮られた。ははは。

 ハナ…女の声で、言われて絶望しかけたらしいが。はーははは。おもろ。

 しかし、あれだ。

 友達と、こうして話すとやっぱ一気に落ち着く。

 俺、狼狽えてたんだな、自覚してなかったけど。


「そんなわけで、兎に角妹と合流したいんだよ。元に戻るとかはこの状況じゃやりようねーだろうけど、だったらせめて一緒に居た方がよさげだろ。…で、妹ってTSO歴は長いんだけど、職人だから戦闘苦手らしくてさ。……ワリイんだけど、そいつ護衛して、俺の居るとこまで連れてきてくんないかな」

『あー、そういうことか。判った、まあ、移動程度は問題ないだろう。…つか、今のお前の格好笑えるぞ。やりすぎで』

「やりすぎ…あ、装備か?怖がるんだもん、仕方ねーじゃん」

『にしたって、タンカーでもあそこまでやんないぞ。金属だるまだな…多分、お前のステでも重量オーバーしてる。あれじゃあ速度が十分の一になってるぞ』

「マジか。アホかうちのボケは。テキトーにじゃあ剥いちゃって。装備、任せるからお前整えてやってくれ、ほどほどに堅くで」

『うーい。』


 それから、何だかんだと打ち合わせを重ねて、コールは切った。

 後はもう、俺の出来ることは待つだけだ。

 どれくらい掛かるかな…転移ゲートに辿り着けたら後は早いと思うけど。

 ……。

 待ってる間、暇だな…。

 狩りとかしてたいっす。

 自分で言うのもアレだけど、俺、ジミーなレベ上げ好きなんだよね。

 もくもくと雑魚狩りで、自分の中でのその一挙手一投足に拘って、今の動きは良かった、とか今のコンボはもっと上手く繋げたとか、自己満足したり反省したりすんのが好きなの。

 あー、やりてーなー。

 折角インしてるのに、なんで俺フィールド出れないのよ。

 ……。

 や、ここの街の外なら、そんな死ぬとかないんじゃね?

 弱い敵選べばさ。


 そういえば、ハナのステータス、まだちゃんと確認してなかったな。

 装備変えたりすれば、そこそこどーにかなるんじゃないだろうか。いっても、ゲーム歴は俺と同じくらいあるし、レベルもそんな低くないし。

 あいつも多分、コツコツタイプだと思う、うん。






 ……。……。






 DEX(器用さ)とAGI(敏捷性)とLUK(幸運度)にしかほぼ振ってなかった。






 レベル64なのに。

 お前、どうやって生きてきた。つーか、この偏った数値の異常な高さ…意味あるのか。

 こんなに上げるんなら多少ふっとけ、せめてVIT(防御力)に!!


 ダメだ、これじゃ流石の俺でもおっかなくって出られん。

 装備固めようにもこんなSTR値じゃ軽装備しかできねえよ!


 INT(知性)にはけっこう振ってるか…魔法使うって言ってたしな。まあ、戦闘時じゃなくて炊事に使うって話だが。…炊事に使うなよう……。

 魔法か…何覚えてんのかな。

 と、覚えている攻撃魔法を調べたら。

 火、水、氷、風、と一通り覚えていた。が、オールレベル1のよわよわいやつだけだった。あとで聞いたら、下手に強力なのを覚えてしまうと使い勝手が悪いらしい。…そりゃ、コンロの火代わりとかそーゆーのに敵を焼き尽くすレベルの魔法は要らんわな。

 で、何でか知らんが地魔法だけレベル20だった。ちょっとほっとした。…けど、地魔法っていまいち使い勝手悪いとかいう噂じゃなかったかな。俺は魔法使わんからその辺あまり詳しくないんだけど…。これも、あとで聞いたら、覚えたい魔法がそこまでレベル上げないと覚えられなかった、ということらしい。覚えたかったのは、ピンポイントに精度が高い掘削魔法。…壊さず、綺麗に長芋を収穫出来るんだってよ。アホだ。妹もアホだが運営がアホだ。なんだそのわけのワカラン拘りは!



 どーすっかなー。

 課金アイテムで、ステの振り直しが出来ます(1アイテムにつき1ポイントのみ)ってのは、ある。が、俺たちは課金アイテムとかは買わないことにしてる。

 つか、現状、公式のショップで買い物って出来るのか?

 まあ、それくらい、ステの振り直しって言うのは基本的に「できないこと」なわけだ。ゲーム内通貨じゃどうしようもない。

 だから、当面俺はこのすっとぼけたステータスでやってかなきゃなんないわけだけども。 …こいつ、ほんとにただの職人なんだな。敏捷が高いのって、作業速度に影響してるからなんだろうし。幸運度はレアアイテムの作成成功率が上がるからとかだろうし。

 でも俺、職人とかやりたくないんですけど!

 こいつの場合、調理人だしなー。ジョブスキル欄を開いたら、目が滑るくらい各種スキルが並んでて思わずろくに見ないで閉じてしまった。多すぎ。細かすぎ。

 【練り】っていうジョブスキルがあるんだが、これを育てていくとうどんが打てるようになり、パン生地が作れて、蕎麦も打てるようになって、ピザとかパイとか作れるようになって、カンストすると終いには、なんと陶芸が出来るようになる、という馬鹿馬鹿しさとかさ。嫌いじゃないんだけどさ。

 運営の異様な拘りはこっち方面にも発揮されてたんだ、と改めて戦慄したぞ。

 いや、それは兎も角。

 今はそれは置いておいてだな…外にちょっと息抜きしに出掛けられる程度の装備と、スキルの組み立てを…うーん、武器をどうにか出来ないかな…。中遠距離か。魔法中心でいくにはMPの数値が心許ない。今、装備してるのは杖だが。……あいつ、装備も拘りないのかよ。なんでこんな初期に手に入るやつ持ってんだよ。

 うーんうーん…。

 

次回は妹視点でいきます。



何かミスとかありましたらご指摘いただけると有難いです。

読んでくださって有難うございます。

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