こんな感じで。
びっくりした。
何がびっくりしたって、TSOにインしてみたらほーちゃんになっちゃってたってことなんだけどね。
なんでほーちゃんとしてインできちゃったのかな。双子だから同一人物だって認識しちゃったってことなんだよね…なんかちょっとむかつく。ヘッドセットに喧嘩売りたい気持ち。
……。
おんなのこなんだでっすよぅわたくしわっこんちくしょー!
どーせ胸足りないし!男の胸筋レベルだし!
そーゆーことじゃないって?はいはいはーい、へんへんへんだ。
双子レベルなら誤認するとかその程度の精度ならない方がましじゃね?ぷんだ。
多分。
私が時間前にアップデートのデータを入れた方を、ほーちゃんは部屋に持っていっちゃってたんだ。
私も私で、ギリギリになってから、入ろうとして「あれ、何でもっかいインストールし直すのかなあ、追加分でもあったのかな」なんて暢気に思っちゃっただけで、ほーちゃんの個人データが登録されてるヘッドセットで何にも考えずインしちゃった。
まさか入れるとか思わないから、入っちゃうまで気がつかなかったんだよ。
てことは、私より多分ほーちゃんの方が先にインしたはず。部屋に入ったきり出てこなかったし、気がつかずにほーちゃんも…ほーちゃんも。ほーちゃんも!?
待って、ほーちゃんも!!??私の身体に!?私のキャラでここに!?
「ぎゃ────」
街の広場の真ん中で、野太い男の雄叫びが凛々しく響いた。
うええん。
自分の声が自分で変。
てゆーか、少し落ち着いてみると身体の感覚がもう明らかに全部変。落ち着かないよーむずむずするよー。
周囲の視線も気になる。自分が思うほど注目なんて集めてないだろう、とは思うんだけど。別に、ほーちゃんなんてイケメンとかじゃないし、背も高くないしフツーだし。いきなり悲鳴上げたからって、いつまでも見られてたりなんて、ない。って判ってるんだけど。
この服変だったかなーとか、今日はブロウが上手く出来なかった、なんて時に矢鱈と他人の視線が気になるのと一緒な感じ。誰も見ないでーって思ってるから気になるのよ。
あーやだ。
……と。独りでぐるぐるしてたら、頭の中で軽やかなチャイムが一つ、鳴った。
これってフレからのコール音。馴染みの音だけど…えーこれ出ても良いのかな。ほーちゃんのフレさんからのチャットコールだよね…あっ。
思い当たって、慌てて躊躇っていたウインドウを開く。と、やっぱりそれは、「私」からのコールだった。そうだそうだ、ほーちゃんとはちゃんとフレ登録してたんだった、忘れてた。これってじゃあ、やっぱりほーちゃんなんだ…。
「も、もしもし?」
『……お前、もしもしとか言うなよ、電話かよ』
「ほーちゃ…!!」
私の声だった。しゃべり方はほーちゃんだった。私がほーちゃんの真似をするときっとこんな感じ。つーか、私の声ってこんなんか…変な声。
『わりー、まさかこんな間違いやるとは思わんかった。つーか、入れるとか思わんよな。まー、うん、ごめん』
「マジでほーちゃんなんだ…ううん、多分最初に間違えたの私だから。リビングに2個あったじゃん?あれがさ」
『あー…いや、置きっぱしてたのも俺だし。まあ、取り敢えずさ、ちゃっちゃと落ちてヘッドセット交換しようぜ。イベント出遅れたらやだし』
「あ、そうか。…どんなイベだったか確認とかした?」
『や、まだ。…あ、したらそれだけチェックしてもいいか?そしたらすぐログアウトすっから』
「いいよー。私も気になるし」
一分一秒でも早く、みたいな気持ちは判らなくもない。なんなら私のキャラだとか気にせずもうイベント参加しようとしてた、なんてことしてなくて良かったとまで思う。そこまでじゃねーよとか怒りそう?
ええと。イベントのお知らせってどれだろ…ん?
あれ、それっぽいのがないなあ…。
『……なあ』
あ、切るの忘れてた。
「あ、ごめんごめん、イベントページ見付からなくて。なんだった?」
『……』
「ほーちゃん?あれ?」
落ちちゃったとかじゃないよね。コールは繋がったままなのが判る。何となく、気配は感じるし。黙ってるけど。なんで黙ってんのだろーか。おい。
『……。…………イチカ』
「ここじゃハナだってば、いっけど。何?ねえ、そーゆーのやだよ、何勿体つけてんの?ねー、もーいいや、いっぺん落ちるから。ほーちゃんもそうしてよ」
『……────イチカ』
ほーちゃん?
『ログアウト、できねえ』
コピペミスってたのに気付いたのでアップし直し。
読んでくださって有難うございます。
引き続きぽちぽちと続けていきますので良かったら今後ともよろしくお願いします。
何かありましたらご指摘下さい。