82 真実を見抜いてみようか
今回は「あれ、そういえばこんな事もあったんだよね」と言う話の説明回。
て言うか、こんな所でそんな使われ方するなんて聞いてない。聞いてないよ!(誰も言ってないから当然ですね)
これだから自分自身で書いてるのに僕自身が毎度困ってます(現在進行形)
ため息をついたけれど、秋水は「それはそれで一つの生き方だよね」と一言を漏らした。
カーラの昔と今では違いが凄すぎるし、これからも逆転する可能性は捨てきれないとは思うが。それでも、その時はその時だろう。
精霊爆発による聖性。
いまいち秋水には判らないが、聖性と言うものがある。らしい。
色々と使い分けられているらしく、聖製だったり聖制だったりと色々な言い方があるそうだ。
精霊爆発とは、一定の箇所に集まった精霊または人工精霊と呼ばれる存在が一定以上の密度になっている状態で、人が切れると生じる爆発。と言えば大雑把過ぎるが、あながち間違いではない。
その場合、トリガーハッピーと呼ばれる当事者次第ではあるが魂を純化させる替わりに物凄い被害が生じる事があると言う。文字通り、一人の人物の心や魂と呼ばれる箇所が火種となって爆発を起こす。物理的に。
爆発が起きた際に同程度の力を瞬間に合わせて爆発させれば相殺される事もあるらしいが、それを実行に移すのは無理だろうといわれている。
魂が起こす火種は、その人物が抱えてきた感情だから。
それを共有、または吸い込む事など、普通の人には出来るわけがない。
物理的な効果をもたらす精神的な重圧を、誰かが代わる事など出来ない。
やり方は不明だが、その出来ない事をドーンはカーラに行ったそうだ。
ただし、聖性は成されてしまった。魂は純化してしまった。
白痴にでもなれば良かったのではないかと、人の心の醜さに触れると感じないと言えば嘘になる。
商売とは人と人が行う駆け引きに過ぎないのだから、それは仕方ないのだといわれてしまえばそうだし。実際の話として、元の世界では引きこもり街道まっしぐらだった秋水には人の心の機微については何かを言う権利などないだろうと思っているのも、また事実。
純粋な魂の持ち主となったカーラに付随された特典が「新たなる知覚」らしいと判明したのは、割と直ぐ。
精霊爆発が起こった直後、ドーンの提案でカーラを仲間へと引きずり込んだ時に発覚したらしいが。秋水は割りと「もしかして、ドーンは最初から知ってたから引きずり込もうと思ったんじゃないかな?」と画策していたりする。
元々、レン・ブランドンは己の周りに集まる女の子達……どんな立場でも年齢の人でも等しく同じ態度を取っていたというのだから、そこまで嫌っているのか。それとも、そこまでドーン以外に興味がないかのいずれかだろうと思っていたら、きっちり両方だったらしい事もこの場で判明した。
レン・ブランドン曰く「ドーンを僕から排除しようとするなんて有り得ない。そんな事をする様な奴ら相手になんだって僕が気にかけてやらないといけないのさ?」と良い笑顔で言うのだから心が狭いと言うか腹が黒いと言うか……。
「ちなみに、そのチカクって何?」
「知覚……新しい感覚とでも言えば良いのですかね? 中々説明のしづらいものなのですが……」
確かに、自分自身の中に新しい感覚があって説明しろと言われても普通ならば困ったり戸惑ったりするだろう。的確に表現出来る単語が見当たらないと言う現実の前に。
「とりあえず、精霊や動物の言語を習得しました。姿も認識できるようになりました」
「いや、それは十分すごいんじゃないかな?」
得意気に言って貰えたらともかく、何気にさらりと言われてしまうのだから男装の麗人は恐ろしい。
確かに、これならば女性らしい色気と男性らしい逞しさの両方を兼ね備えていると言いたくもなると言うものだ。
「あとは……何を言えば良いのか……恐らく、肉眼で見えているもの以外の認識が出来るようになった。と言えば、想像しやすでしょうか?」
しかも、それなりに身長がある上にかかとのあるブーツを着用しているのだから。そこまでチビだとは思って居なかった秋水にしてみれば通常の身長にブーツ、ついでに駄々漏れかと言いたくなるオーラの様な気配も合わさって己が小さい存在なのではないかと言う気がしてならない。
いっそ、舞台俳優でもやれば物凄い事になるのではないかと言う気がしないでもない。
「肉眼で見えないもの……って、何?」
「こっちに聞かれてもねえ……どうだろう?」
「僕に聞かないでくれる? キャシー、君ならどう答える?」
「ふう……御三方とも、少々情けのうございます」
秋水からアインス、レンへと質問は移ったが最終的にはキャシーに話が振られる。
カーラはにこにことしているし、ドーンの彫像具合は今日も絶好調だ。
「って言われても……目で見えないって言っても、ガラスとかくらいしか思い浮かばないし?」
学園都市は、近代科学と中世と未来都市が混じっている様な感じがすると言うのが秋水の意見だ。
都市は未来的に永続的に向上させるための都市計画を持って作られているし、デザインは懐古的なものではあるが、かと言って都市内部を走る乗り物や意外と薄く強度性も高く透明度も高いガラスを作る技術があると言うのは、高度な技術を持っているからだと言えるだろう。
「ガラス? 見えてるじゃないか?」
「アインス、あれはガラスそのものが見えてるんじゃなくてガラスに付着した埃とか断面を見ているからであって。実際にはガラスは色をつけない限り無色透明なんだから見えないのは当然だと思うよ?」
「その通りでございます、秋水様」
ガラスに色をつけたものを重ねてつなげるというステンドガラスの技術がないのは不思議だと秋水は思った……何しろ、ガラスに色をつけて窓ガラスや食器としてのグラスもガラスのボウルなどもあるのだ。けれど、その色を重ねてつなげて絵画を作ると言う概念はこちらの世界にはないらしい。
だから、食器などもシンプルなものが多くてデザイン性の高いものと言うものを秋水は学園都市で見た事がなかった。職人都市でも今のところは武器や防具の装飾品に使う程度以外で装飾過多と言えばレンに迫ってくる女性達の着飾り具合だろう。
狭い世界しか知らないのだから当然とは言え、キャシーの与えたピンポイントの情報は別の意味で全てを見るよりも効率的だ。
「無色透明なガラスでは人がぶつかって割れる危険性もある為に、世の中の大多数のガラスには色が着いていると言う事は常識であるかと思いましたが……」
町並みの壁や屋根の色に合わせた配色になっている事が多いので、あまり奇抜な色は見た事がない。
実際、秋水に与えられていた保養所のガラスは薄いブラウン系の色だった。
「俺、ガラスの窓なんて学園都市に来るまで見たことないんだけど……」
ぼそりと落とされたアインスの爆弾に、誰もが沈黙を覚えた。
ドーンを撫でる手を一瞬止めたレンと、確実に何か思い当たる事があったらしいカーラの反応は顕著だ。
秋水は「ふうん」と思ったし、キャシーとドーンは相変わらずの通常運行だ。
「そんなにアインスの出身地って天候が安定しない所なんだ?」
「……は?」
はて? とばかりに会話がかみ合っていないと言う事だけは理解した男の子二人はお互いの脳みそを考える。
「天候が安定しない地域とかだと、割れるから窓ガラス入れないとかあるんじゃないの?」
「……ええと?」
アインスが思わず、キャシーに「SOS」と目で訴えたとしても仕方がないだろう。
何故なら、アインスは貴族にも関わらず貧乏なために窓ガラスが買えないと言う事を認識しない様な気がしたからだ。秋水には偏った知識しか与えられていないのだから当然だが、アインスにしてみてもどこまで中途半端な知識しか与えられていないのか判らないのだから、状況に心の底から困ると言うのも当然だ。
これでも、アインスがキャシー経由でギルドからかけられた情報規制は結構厳しいものだ。レンがどういう扱いにされているかは気にしなくて良いと言うよりギルド関係者でも何でもないのだからどうしようもないとして、アインスにしてみれば下手な事を言って上層部の不興を買いたいとは間違っても思わない。
「秋水様、アインス様のご実家では窓ガラスを買わないのではなく買えないのでございます」
「ふうん……でも、別に無くても生活できるんだからラッキーだよな。節約大事だし」
アインスは更に「助けて!」と目で訴えていたが、今度は無視された。結構きついのは心情的にだ。
「シュースイ殿の世界では、窓ガラスなどの細工はあまり見受けられないのですか?」
「ああ、名前呼び捨てでいいですよ。カーラさん。
俺の居た世界は……そうだなあ、100? 200年くらい? 前からガラスが入ってきたのかな? もう少し前の時代だと結構貴重だった。でも鎖国していた時代の頃でも僅かにはあったみたいだから、全くガラスに対しての技術がないってわけじゃなかったんだろうな。
一般家庭に普及するようになったのは……確か、150年くらい? あんまり詳しくなくて申し訳ないんだけど。それまでは木の板とか障子とか襖とかが出入り口の全部だったかな?」
カーラは、流石に跪いたままでは安定性が悪いとは思うけれど微動だにしなかったのは見目が良いからともかくとして、目障りだからと言う理由で椅子に座らされていたりする……なかなかに口が悪いのが誰かなどは内緒だ。
「では、割と最近の出来事なのですね……木の板や紙? 障子や襖というのはどういったものですか?」
商人としての目をのぞかせたせいか、カーラの瞳が知的好奇心できらりと輝いた気がしたのを秋水が気が付かなかったのは……本人のうっかりだろう。
これは、程度の差こそあれラーカイル医師が見せたのと同じ輝きであり、実の所を言えばアインスも視界の隅で。キャシーは見えない位置で、ドーンが眼鏡の奥で同じ輝きを放っていたのを見る事が無かったのは……同情できる部分もあるのかも知れない。秋水が能力的に察しが悪いかと言えば、少ない情報の中では頑張っている方であるとキャシーならば言うかも知れないが、それだけキャシーの情報制御が上手く行っている自信の表れだろう。
「雨戸って言うんだけど、木の板を引き戸……スライドさせて雨風をしのぐんだ。こっちだと開き戸? だから狭い所では有効かもしれない。障子や襖は形状と材質が違うだけで木で作った骨組みに紙を張ったもの。襖は木で作った枠を紙で覆ったもの……かな?」
「ですが、そんな羊皮紙を大量に使うのは……」
「いやいや、俺の居た世界には逆に羊皮紙は無かったな。植物の繊維とノリで作った、のかな? 分厚くて水にも強い丈夫な紙があるんだ。確か、科学の実験で作った記憶があるな。はがきで……そういえば……」
「いかがなされましたか?」
「……いや、昔。子供の頃に学校の授業の科学と美術の実験で牛乳パックで作る紙って言うのがあって。はがきを作ったんだ。で、そのはがきってどうしたかなって……」
「はがきとは、なんですか?」
「あれ、こっちの世界には郵便ってないの?」
目に見えて頭の中と眼球がぐるぐるしている様に見える秋水を、カーラとアインスは興味深そうに見つめている。
どうやら、カーラにしてみれば「新素材の紙」とやらにとても興味深いらしい。こちらの紙は植物から作ると言うのも研究はされているが、まだまだ実用化には目処が立っていない。ある程度の実験的なものならばともかく、紙が水にも強いなどと言うのは新発見だ。羊皮紙みたいに元々が生物の皮でできているのならばともかく。
「ぎゅうにゅうぱっくとは、何物でしょうか?」
「牛乳が入っている紙の入れ物……ええと……」
今現在、秋水の頭の中で回っているのは「郵便事業及び貯金について」と「牛乳パックの作り方」と「紙の使用方法」の三通りに分類されていた。
もし、今ここで転がっても大丈夫な環境が整っていたら転がっていたかも知れない……職人都市の親方みたいに。
「牛乳を紙に入れるのですか?」
「またそれは挑戦者だなあ……」
「どうやら、秋水様のおいでになった世界の常識とは私共では計り知れぬ高度な文化があるのですね」
最初に申し上げておきますが、秋水の知識は基本僕の知識であって何かを調べて書いているわけではありません。なので、諸般の関係者の皆様は「ここ違う!」と思ったら忌憚無き突っ込みの嵐をお願い致します。
え、先に調べろ?
だって僕の指は書いてるけど僕の自意識制御下の脳みその部分で書いてるわけじゃないから~~~(と逃げ口上)
と言う訳で、次回予告。
「暗いよ狭いよ怖くないよ、どっちかって言えばここどこさ?もしかして騙された?閉じ込められた?誰が敵?」
と言う事には中途半端になりますかね?




