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74 同調率…って番組違う

とある人物の独り言が二つ、と言うのが今回のコンセプト。

いや、そこまできちんとしたものではなくて結果的なんですが。

9割は独り言でお送りしております。


だから、実際にはかみ合ってないんですよ。この人達。

何やってるんですかね?(お前が言うな)


「あまり無茶をなされませんよう」


 目覚めて最初に聞こえたのは、意識を確率するより前に聞こえた一言だった。

 出来れば、それは心臓に優しい言葉と温度であるほうが嬉しい。

 そう思った秋水は、果たして贅沢なのだろうか?


「結果論として、それで死なれてしまったとしても解剖する必要もないと判っているので。あまり死なれても嬉しくないんですよねえ……」


 何気にと言うより、相手に聞こえていることを前提としてしゃべっているのであれば鬼と叫ぶだろうし。逆に、相手が意識を取り戻していないと前提してしゃべっているのならば悪魔と叫んだかも知れない。

 と言うより、必要がないと言う事はラーカイル医師の元には秋水のカルテなどがあるのだろう。だからこそ、今回の依頼についてきたと言う見方もある。


「ラーカイル先生、もう少し心配している台詞はけないんですか? キャシーももう少し表情に出すとかしたらどうですか。レン・ブランドン、君はもう少しドーンを相手にするの止めたらどうなんだい? そんなんだから……いや、なんでもないです。て言うか、ドーンも少しは抵抗しろよ。嫌な……て、ななななななにいっ!」


 何故だろうか?

 果てしなく心が安らいだ次の瞬間に、なんだか雄たけびのような悲鳴のようなものが引きずられた後に庁舎内を響いた様な感じだ。

 大丈夫だ、アインス・ツヴァイン。と言う台詞がこだまの合間に聞こえてきたとしたら聞き間違いだろう。

 実際、人の走り回る音が幾つもした後はしんと静まり返っていた。


 最初に述べておけば、別に秋水は狸寝入りをしていたわけでも無ければ彼らを相手にしたくなかったわけではない。ただ、酷くだるくて疲れて目が開かなくて……要するに、金縛りみたいな状態だと言っても良いだろう。ただ、金縛りと異なるのは幽霊に縛り付けられていると言うわけではない事だろうか?

 体は泥の様に動かないけれど、だからと言って意識まで同じかと言えばそうでもないと言う。

 不思議な感覚。


「あんまり眠りすぎると、起きた時に辛いよ」


 だから、その声を聞いて「あれ?」と思ったのは確かだ。

 何故なら、聞いた事が無かったのだから。


「先に言っておくけれど……もう、以前の貴方と同じだとは思わないほうがいいと思う。

 勿論、この世界に落とされた瞬間から以前の貴方とは同じでは無かったけれど。更に捻じ曲がった存在になったと思っておいたほうが良い。それが、どんな風に貴方の意識に左右されるのかは目覚めてみないと判らないし、もしかしたら体が眠り続けているのは調整の為なのかも知れない。

 だけど一つだけ、忘れないで。

 貴方が、例えどんな事になったとしても。忘れない限り、手放さない限り、他の誰のものにもならない」


 何を言っているのかは判らないけれど、判っている事が秋水には一つだけあった。


 誰だろう、この人? て言うか、人?


「貴方がどんな原因とか理由で、こんな所でこんな形になって現れてしまったのか。存在する事になってしまったのか。そして、元の世界の貴方がどんな状態で居るのか、残念ながら我々には誰一人判らない。

 判っているのは、貴方がここに居ると言う事だけだもの」


 先ほどから、秋水には言われている言葉の意味が欠片も理解出来ない。

 ただ、それでも少なくとも考えてみれば当てはまる事がないわけではない。秋水が知らないだけで、もしかしたらキャシーの他にも秋水を監視的に見守ってくれている人達が居るのかも知れない。それとも、知らないだけで別口の襲ってくる人やそことも違う人たちが居るのかどうか。


 元の世界。


 秋水の心の中で波打つものがないとは言わない、そして周囲にはあまり個人的な生活については言わなかったのは言及されなかったからだが。あまり人付き合いが得意だとは決して言えなかった自分自身が、今とは生活習慣的に全く異なる生活を行ってきただなんて、そんなのを言いたいとも思わなかったのも確かで。


「我々はね、君の事を『被害者』だと認識している。それは間違いではないだろうと思う。

 だけど、同時に思うの……貴方はもしかして『そこに居たくなかった』んじゃないかなって」


 居たくなかったと言う言葉を聴いて、認識して、考えてみる。

 言葉の意味から考えると、複雑だ。

 居たい場所から引きずり出されたのであれば、完全なる「被害者」だし。

 その場所が居たい場所ではなかったのだとすれば、「渡りに船」だったと言うわけだ。

 困ったことに、その認識は秋水にしか出来ない。客観的な意見は、幸か不幸か無意味だと言う結論があったりする。

 では、どちらかと尋ねられたら指一本動かす事も苦痛に近い億劫な状態な秋水にしてみれば「時間を下さい」と言うしかない。


「別に、それがどちらであっても構わないとも思う。こうなってしまった事は、我々にとっては「仕方がない」で済む話だから。個性的な人達がやりたいことをやった結果に伴って起きた現象については、彼らの『存在』そのものと引き換えにされたのだから、当事者に責任の追及が出来ない事だけが残念ではあるけど……それは、今ここに居る我々の責任でもない。貴方にとっては災難だろうけど?」


 他人事の様に……まさしく他人事な台詞だ、この人にとって秋水の置かれた現状など他人事以外の何物でもないのは……まあ、判らなくはない。

 これで、当事者の一人でも生きていれば話は違うのだろうが。やはり、幸か不幸か秋水は事態を呼び起こした現状関係をつまびらかに聞かされていた。それはもう、細かい所まで重箱の隅を突くかのような想像力を欠きたてられる説明であったのは、キャシーがその現場に行った事があるからだろう。

 聞いているだけで気分が悪くなった秋水の場合、キャシーの再現率が表彰ものだったからなのか。それとも、単に秋水が根性なしだったからなのかは判らない。


「でも、もしもそうでは無かったら?」


 耳に入ってくる言葉に対して、ピクリとも反応が出来ないのは良いのか悪いのか。

 正直な所を言えば、秋水には想像がつかない。

 はっきり言って、それは良い事ではないだろうと言うのはぼんやりと思う。けれど、ならば悪い事かと問われても「体動かないしなあ」としか言い様がないのだ。


「もし、貴方が元の世界で存在を嘆くほどの目にあっていたとしたら?」


 存在が、失われるほどの嘆き。


「もし、貴方が元の世界を憎むほどに想いを募らせていたとしたら?」


 世界の全てを、破壊しても足りない衝動。


「もし、貴方の望みが元の世界にないとしたら?」


 それが、世界を超えるほどの「声」であったのだとすれば。


「訪れた貴方が……いえ、そうじゃない。そんな事は起きない。

 例え、それがきっかけになる事があるとしても、そんな事は一言も口にする事はなかったのだから……」


 何かを考え、何かを口にし、けれど否定する。

 相手が聞こえていないからと思っていっているからなのか、それとも相手が聞いている事を前提としているのか、それは判らない。


「判っているのは、我々に言えるのは唯一つだけ。

 貴方は今、ここに居ると言う事だけ……」


 例え、その肉体を構築しているのがこの世界の組成成分から生み出されたもので。その繋いでいる役割が魔力による流体であるとしても。とても、人と言うには疑問符が浮かぶほどの成分だとしても。

 でも、それならばいっその事。

 元の世界から、肉体ごと世界を飛び越えれば良かったのだろうかと言えば正直。判らない。


「貴方にとっては……どうなのだろう?

 この世界は、果たして苦痛なのだろうか? それとも、安堵の一つくらいは出来ているのだろうか?」


 苦痛かと言われれば、生活の半分以上を眠って過ごしている赤ん坊か猫の様な生活について。実の所を言えば、秋水にだって思う所もあれば言いたい事もあるのだ、老人介護さながらの生活をしている事実を前にショックを受けたあまり半日たっていたとか言うのも洒落にならない事実だってある。

 とか思っていたら、何の因果か目的か。どう見ても秋水を実験動物よろしく拉致る為に現れているらしい、昼夜を問わない人達が視界の隅でキャシーや他の人達によって袋叩きにされている姿を見て頭を抱えない方がおかしいだろう。


「少しは、眠れているのだろうか?」


 客観的な意見としてみると、どうやら声の人物は秋水の近いんだか遠いんだか判らない距離から話しかけているのか。それとも、独り言なのかいまいち判らない言葉を発しているらしい。

 と言うより、秋水にはこの声の人物に全く心当たりがない。とは言っても、この世界に現れてまともに会話をした事のある人物が極端に少ないのだから、思い当たる人物は自動的に「ほとんどいない」と言い切る事だって出来る。でも、判らない。

 この人物は、一体秋水の寝かされている場所で何をしているのだろう?

 と言うよりも、ここでいきなりにょきっと起き出して「お気遣い無く、一日の半分以上は眠ってますから」とかドヤ顔で言いたいような、しょうもない様なと言う謎のジレンマに秋水が襲われているのは言った所で意味がないだろう。

 何しろ、秋水は真面目に呼吸する以外は瞼すら動かすのが困難な状態なのだ。

 とは言うものの、目覚めてしまうと話は変わるのかも知れないが。

 例えて言うのならば、十時間以上のまず食わずなのに空腹感も喉の渇きも一切感じて居なかったのに。一口食べて飲み込んだ後に無性に空腹感を覚えるのに似ている。


「少しは、心安らいでいるのだろうか?」


 気分的には、シリアスであろうとギャグであろうと秋水の読んでいたジャンルは問わない。

 物語りは決して多くはなく、どちらかと言えば専門書や。物語を構築する為の部品的な意味合いとして理論書を読む事が多かった。別にリアリティを追求するためではなく、単に自分自身での情景を想像する事が出来なかったからだ。

 確かに、例えば建築家ならば青焼きと呼ばれる設計図を見ただけで脳裏に完成した建物を思い描く事が普通に出来ると言い、逆に絵や模型だと想像が追いつけない所があると言うが。秋水は一般の人に多い絵や模型になっていた方が理解出来るタイプだ。そして、見たまま知ったままを文字や絵に起こす系統だ。

 だから、想像の範囲だけで文章や絵を構築するのは非常に苦痛だ。見たことも聞いたこともない事を文字や絵にしろと言われて「出来るか!」と叫んだ事がある記憶は一度や二度では無かった。

 しかし、不思議なもので苦手だと思っていたものの方が世間にはウケが良かったと言うのが皮肉な現実だ。逆に、沢山の現実や実験を繰り返して作り上げたものがツマラナイと言われてしまった時は本気で落ち込んだ。

 そう言う意味からすれば、今の秋水は色々な事から解放されている自由だと感じているとしても不思議はないだろう。勿論、介護老人よろしく食事から着替えから善意的な好意のないストーカーに義務とは言え世話をしてもらっている以上は不満など言うべきではないだろう……そう、羞恥心さえ無視する事が出来れば何十時間と眠っていても誰からも苦情が来ない、生活の為に働かなくて良いなんて。

 でも、どちらが良いかと問われたら。


「もしも」


 人としての義務とか責任とか、別に捨てようと思えば捨てられた。

 生活の基盤の全てを放置して行方不明になる事も、出来た。しなかったのは、秋水のワガママだ。

 世界に対して思う事も、世間に対して思う事も、その全てに対して抱いた不満を抱えたままで放出しなかったのは偏に、秋水の選択に過ぎない。


「もしも、君が……」


秋水の中ではすっかりギャグキャラとしての地位を安定させてしまったアインス君、毎度不憫だとは思ってます。

でも、どこかで落とし所が欲しくなる。そんな君は作者の一服の清涼剤の様なものなんですよ。

だから、そのままの君で居てください。

ちなみに、アインス君のお仕置きは基本的に精神的なものが多いらしいですよ?


では、次回予告。

「やっと帰ってきた通常モード。現実と虚構の間で色々あると疲れてたまらないよね、と言うよりお味噌汁が恋しくなってきた涼しい季節ですが風邪など引かぬようにしてください。関係ないけど、酔っ払ってないイル=スは基本凶暴なんですが……どこに行った、凶暴!」

な感じでお送りします。

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