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72 貪り喰らう為に生まれた

※ 今回は暴力的及び一部戦闘シーンがございます。気分が悪くなる可能性があると「ちみっと」でも想像がついてしまった方につきましては、悪い事は言いません(書きません?)ので次回更新までお待ちくださいますようお願い申し上げます。



 びちびちと蠢いている触手と言うよりヒルに見える生物が居て、でもレンは兵器だと言う。

 けれど秋水には生物しか見えなくて、それ故に湧き起こる疑問があり。

「ああ、そうか……」

「秋水様、いかがなされましたか?」

「コレは自然に発生した生物じゃないって、事? だよな?」

 秋水がこの世界に現れて、実の所を言えばそこまで時間はたっていない。

 納得はいかないかも知れないが現実で、そのうちできちんと起きて生活をしていられたのは実の所を言えばここ1日2日がせいぜい。半日も起きていられれば良い方で、それでも目覚めている間はほとんどに本を読む事へ時間を費やしていた。

「……そうだな?」

 実際、何が出来るかと問われても寝台から動けないのだ。やるべき事は幾らでもあるだろうが、出来る事となると皆無に等しい。ならば、出来る事は知識を詰め込むことだけ。


 だった。


「サンプルとしては、こんなもんでいいのか? そういえば、レン・ブランドンの体は?」

「心配されるほど弱くない」

「確かに、弱くはないな」

 それでも、この世界に辞書や辞典と言ったものも滅多になく雑誌やチラシなどと言ったものは更に少ない。

 事情があって、そもそも活版印刷の技術が研究中と言う有様。流石に手書き写本となると金額的にも手間的にも馬鹿みたいにかかるし、そもそも論として秋水が居た世界の様な上質紙やコピー紙と言ったものも無く、今のところは何とか羊皮紙や木簡や竹簡的なものが主流で、何とか最近になって植物性紙が出てきた様な形だ。

「何か言いたい事でも?」

「いや、正統派だとは思うだけだぞ」

「正統派?」

 印刷技術とは、印刷そのものもそうであるが紙の技術が発展しなければ出来ないわけではないが面倒な話だ。

 そうなれば、どうするかと言えば魔法に頼るのが一番の近道だ。

 特定の品物に映像魔法を仕込んでおいて知識のある誰かに解説をして貰うと言う手段は、近年になって開発された。近年と言っても、ここ10年以内の事ではあるが。

 可能な限りの情報を集めてもらい、秋水は勉強したのだ。偏ってはいたが。

「ドーンは金属の糸を使ってただろう? キャシーはハタキ。で、レン・ブランドンは剣。正統派じゃないか」

「言ってる意味がわからん」

「って言われても、俺だって武器とか魔法に関しては勉強してないから何ともいえないが……俺の居た世界じゃ、ハタキや糸で戦う奴って基本いないからなあ……って言うより、少なくても手の届く範囲で戦う事はまずないし」

 動植物や自然、物語、算数と言った理論ならばともかく。

 秋水が読む本には、政治、魔法、武道、経済に関する知識は与えられていない。個人的には家政関係の知識や情報も欲しかったところだが、そもそも論として家事関係は親から子へ伝えられるものであって書物で読むものではないらしい。

 言われれば納得だが、釈然としないのも事実だ。

「聞けば聞くほど、シュースイの居た所は不思議だな」

「そういわれてもな……とは言っても、俺の居た国が特殊だってのは否定できん」

「意味が判らんな……?」

 とは言っても、秋水の生まれた世界の生まれた民族が「あらゆる可能性と想像力を費やして世界で最も想像力から作る事が出来る技術の基礎を作り上げたといっても過言ではない、国土も狭いが先進国の中の一つとして名を連ねた誘拐魔と駄々っ子ジジイと金で動く若者国家の間に挟まれた」と言う存在などと言う事は何か大切なものがぼっきりと音を立てて壊れて行きそうな気がして怖くて言えない。

「大丈夫だって、俺から見たらこの世界そのものが意味が判らんし」


 そもそも、出身だからって己の世界や民族の事なんて詳細にわかるわけじゃないし。


「そういう言い方ならば、納得も出来るな……ドーン、サンプルの回収はそれだけで済まないか?」

 流石に、剣についた触手の体液をアンプルの様なものに少し入れてからは紙か布の様なものでふき取ってから鞘に収める。

 レンの持っている剣は「持ち主の意思と魔力によって切れ味を鋭くさせる」と言う魔剣なのだそうだが、驚かなかった秋水をレンは盛大に。恐らくキャシーは控えめに驚いただろうと言う会話をしたのは、そう遠い話ではない。

 内心、これを「民族性の違い」で押し通すのは無理だと思って「驚きすぎてよく理解出来ない」と言って乗り切ったものだが、後でキャシーに「僭越ながら、先ほどは驚いておられませんでしたね」と断定された事の方が怖かったなどと言うのは軽くホラー展開のフラグが立ちそうで笑って誤魔化すしか手が無かったのは秋水のヘタレ根性が全面降伏しただけと言う話だったりする。

「やれやれ……ラーカイル……先生も、いい加減に生徒使いが荒いって自覚を持って欲しいものだね」

「致し方がございません、ラーカイル様は現在。研究者モードでございますので」

 決して気を抜いているわけではないのだろう、油断が許される状況ではないのは判る。理解出来る。

 ぴんと、張り詰めた糸の様な空気が周囲に漂っている。

 キャシーが調べた所、まだまだこの水路が自分達を溺れさせる為であるかの様にすさまじい奔流を呼び起こすには時間が掛かるはずだ。

 敵は決して、倒されたわけではない。ただ、切り落とされただけだ。

 炎は、全く効かない訳ではなかったが切れ味と言う点では風に劣るのは確かな様だ。どちらかと言えば、香ばしい匂いが周囲に漂ってしまうので醤油をつけて焼いて食べてしまいたいという気になった秋水はどこか余裕だ。

「それにしても……ほどよくこちらの作戦に引っかかったところを見ると、あちらの方には知能と言うものがおありなのでしょうか?」

「さあ、それはどうだろうね……考えた上での結果ならこれほど厄介な事はないが。無謀にも考えなしの結果だと言うのならば、僕ら的には万々歳だ」

「ええと……話が見えないんですけど?」

 警戒心を断ち切っていない二人の態度は、通常モードである様に見せかけてそうではないだろう。

 剣を鞘に収めてしまったレンは、きっと魔力の関係もあるからだろう。キャシーに至ってはハタキでそこいらじゅうをパタパタをかけている姿は「どこに家具が?」と聞きたくなるほど性急だ。

 ちなみに、ドーンはやはり通常運行なのでツッコミどころすらみつからない。

「お応えいたします、秋水様。

 敵はこの場に置いて水位が変わる時間帯について無頓着である様です、つまり水中で生きていられる機能を備えていると見てほぼ間違いがないでしょう。

 仮に『彼』と呼称しますが、『彼』に知能があるのであれば水中での生命活動が制限どころか不可能である私共を足止めして置いて水が流れるのを待てば勝つ事は無くても『彼』に敗北はございません。

 つまり、私共は現在最大の敵である「時間」と戦わなくてはなりません。ですが『彼』は姿を隠し、じっと息を潜めて私共を見つめている事でしょう」

「つまり、知能があるなら時間まで待つだろうし。ないのなら、我慢出来なくて出てくる?」

「はい、その様な推測が可能でございます」

 その当たりも、どうやらラーカイル医師とドーンが打ち合わせた結果らしい。

 レンがくどくどとドーンになにやらお説教めいた事を告げながら、気が付けばドーンを称える甘ったるい言葉のオンパレードになっている事に気が付いて己を戒め、再び称えまくっていえると言う悪循環を繰り広げているので「帰っていいですか?」と内心は言いたくてたまらない。

 空気が読める民族なので、秋水は決して言わないが。

「疑問があるんだけど」

「はい、なんでしょうか?」

「結局の所、アレってナンなの? 自然に発生したものじゃない、だからレン・ブランドンは「兵器」だって言った。これで合ってる? 間違ってる?」

 少しだけ間があったのは、それが何故なのか秋水には判らない。

 理解出来るかも知れないし、予測は出来るかも知れないけれど。

 ただ、その手の事が理解出来るようになるとろくな事にはならないかも知れないとか。何か色々と基本的な事をすっ飛ばしてあさっての所から始めてしまう様な……例えて言うのならば、レベルさえきっちり上げておけば一本道のシナリオに行く筈だったのにゲームのバグでバッドエンド専門のマルチエンディングを迎えるロール・プレイング・ゲームでもなったかの様な頭痛さえ覚える。


 フラグ回避!


 秋水が心の底から決めたとしても、民族性の違い故に他の誰かに理解される日は永久に来ない。

 ならば、いっそ秋水が持てる力を振り絞って全世界の存在に意識改革を植えつけると言うのも裏から表から歴史に干渉出来て面白いかも知れないが……そんな事をしたら、それはそれで別のフラグが間違いなく立つと言うを理解出来ている以上は決してやらないだろう。

 もっとも、この世界の人達に言ったら「フラグ? フラッグ? 旗?」と首をひねられる事は間違いないが。

「はい、的を得てございます。

 私共が把握していないと言うだけで、万が一にでも自然界にこの様な存在や種族が発生している可能性はございます。魔物や魔族に至っては研究が全く進んでいない状態ですので、尚の事と言う所でしょうか?」

「旨みがないから?」

 魔物研究で利益が出るのは、恐らくは退治をするとは限らないがほとんどが戦っている冒険者ギルドご一行様だろう。弱点などを知っていると知らないとでは状況は全く違う。

「それもございますが、うっかり研究をさせてくださる魔物や魔族と言った方々がほとんど存在しないと言うのも理由の一つではないかと言われております」

「使役士とか言う人は?」

「彼らは魔族ではございませんし、使役する事が出来るのは魔物の場合もございますが異なる場合もございます。研究者の研究対象が移行する可能性もございます。その様な危険な事を推奨するパトロンは、そうは多くございません」

「なるほど」

 ミイラ取りがミイラとか、元の木阿弥とか言う事だろう。

 もしくは、目的と手段が入れ替わるとか……この場合、入れ替わるのは目的だけだろうが。

「何より、今の世の中で一般の方がに必要なのは部位の使用用途や食用になるか。弱点などの利益がからむ事だけですので、やはり旨みがないと言うのは正しいご意見であるかと」

「あ、やっぱりそうなんだ……」

「情報ギルドとしては嘆かわしい事ではございますが、やはり人一人で可能な範囲は限られますので」

「そりゃそうだね」

 出来る事があって、出来ない事がある。

 だから、人は一人では生きていけないのだと思えば上手く世の中は出来ていると言っても良いだろう。

「秋水様?」

「ん、何?」

「少々お疲れのご様子でございますが……」

「ああ、うん、そうだね。こんなに動いたの久しぶりだし、あの肉すごい……」


 ざく


「秋水様!」


 どうして、聞かなかったのだろう。聞こえていたのに。

 どうして、見なかったのだろう。見えていたのに。

 どうして、言わなかったのだろう。言う事は出来たのに。

 どうして、理解出来なかったのだろう。見たまま聞いたままを言えばよかったのに。


 どうして。


「シュースイっ?」


 どうして、体の中から力が抜けるのだろう。


「迂闊でございました、申し訳ございません!」


 どうして、腹が痛いのだろう。


「侘びは後だ、こいつらを何とかするぞ!」

「はい、レン・ブランドン様。ドーン様!」


 どうして、俺は食われている……?


と言うわけで、展開的には皆様の予測を裏切らないものでしたでしょうか?それとも、逆に裏切ったものでしょうか?

と言うよりも「え、こっちの展開になんでなるの!?」と一番書いてる本人が目を向いてみました。あれえ?


と言うわけで、次回予告。

「ネタバレ的にうっかりやられた主要脇役が一人、果たしてどんな展開が待っているのか書いてる本人は知ってる筈なのに自信がまるでないのはどんな理由!?新しい機械をいじくってないで早く続き書けや現在進行形!」

次回は書き方を完全一人称でお送りしておりますので、少々更新にお時間が掛かる予定です。

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