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69 善意的なストーカー兼ストーリーテラー

日本は、腰が重いと言われながらも時代と共に法律を替えていきました。

かつて、日本には色々な法律がありませんでした。誰も想像すらしていなかったからです。

でも、今の日本にはある法律だって存在している。


何故だろう?


それは、人によっては下らない法律かも知れない。

だけど、人によっては必要な法律なのだと言う場合があるのだ。


「現在位置、わかる?」

「そうですね……大体の想像と言う事でしたら」

「現在位置がわからなくて、どうやってここまで来たの?」

「秋水様に仕込まれた発信機能着きの道具がございますので、秋水様の所に馳せ参じるのに問題はございません。

 ですが……イル=ス様と共におられた筈のレン・ブランドン様がどの様な手段でドーン様のお側に発生されたのか、少々興味深い現象でございます」

 一緒に来たわけでは無いらしいキャシーは、心底レンの事が不思議そうだ。

 似たような手段で現れたのではないかと言う気がするし、レンほどの金と権力のおうちの子ならば独自の技術を開発させることも出来るだろう。

 と言うより、なんで発生なのか聞いたら……なんだか精神的に良くない事が起きそうな気がする。

「発信機……仕込んでるんだあ……」

「はい、いついかなる時にも秋水様のお世話をさせていただくための必須道具でございます」

 どこまでも真剣な顔で言うが、どこまで本気で言っているのか秋水には判らない。

 おそらくは、どこまでもキャシー的には本気なのだろうが。

 キャシーの周りに居る人の思惑は、どうあれ。

「ちなみに、帰るときはどうするの?」

「何とかなります、少なくともレイニアス・シティは地下迷宮などではございませんので。

 以前などは……いえ、大した事ではございませんが」


 すごく気になる一言がぁぁぁぁぁぁぁっ!


 ここで空気が読めない輩がいたら素直に聞いたかも知れないが、秋水は空気が読めるので聞かない。

 出来る事ならば、もの凄く聞いてみたいのは山々だけれど聞かない。

「ちなみに、他の人達の位置はわかったりとか?」

「いえ、残念でございますが……」

「そっかあ」

「せいぜい、アインス様程度でしょうか? あと、ラーカイル様は庁舎内に残っているのは確定しておりますので把握しておくと言う意味では追尾する事も可能です」

「え……」

 一体どういうことなのか、聞いても良いのか悪い事なのか秋水には判断がつかない。

「簡単な事……とは申しましても、それは経験によるものでございます。

 まず、私はギルドに所属しております。そのうちの一つ、情報ギルドはアインス様との繋がりが浅いとは言い切れない程度の深さを持ち、ドーン様と私はともに上位ランク保持者でございます。上位ランク保持者には幾つかの特典がございまして、上位ランク保持者同士が連絡をつける事や情報ギルドの所属者の中にはアインス様の様にギルド関係者へ私的な連絡を直接つける事が出来る場合がございます。

 レン・ブランドン様は、ドーン様の居場所が判っていれば放っておいてもおのずといずれから発生されるので問題は少ないですし、ラーカイル様もほぼ似たような状況になります。ただし、ラーカイル様とドーン様がもし私からの接触を拒まれた場合、私はお二人を捜し当てるのがとつてもなく困難となる事は否めません」

「そうか、ギルドねえ……キャシーがラーカイル先生やドーンに逃げられたら探せないって言うのは、もしかして上位ランクでも幾つか階級があったりするとか?」

 揶揄する様なものでもなく、言葉の内容を吟味していれば出てくる質問だった事もあってキャシーは特に不快感を示すことはない。内心はどうあれ。

「厳密には上位と下位以外のランクと言うのはない、と言うのが表向きとなっております。ただし、それぞれ個性と言うものがございますので取得技術によっては一概にランク通りにいかないと言う場合もございます。それでも、一般の方々にはギルド登録者を雇うにあたり判断材料の一部としていただく為に7段階に分けて認識されているというのも、また事実でございます」

 ちなみに、ランクの上下に関しては一定の仕事をこなしたり評価だったり結果だったりする所によるのが大きい。ただし、もしも受けた依頼以外の仕事を同時にこなせば評価が上がるかと言えばそうでもなく、あくまでもその場合は付随する程度と言う受け方になる。

「その中で、上位者のうちでも冒険者ギルドの所属者と情報ギルドに関しては隠密活動が行われる場合がございます。盗賊ギルド系にも系統こそ異なりますが似たような技術がございます。

 つまり、隠密活動や諜報活動を主立って活動されている方に関しては連絡を取る事が困難である為に、逆にギルドへ伝言を頼んだほうが反応が早いと言う事になるので、結果としてわざわざ個人的に居場所を突き止める努力や連絡を取る必要と言うものが少ないという結果になるわけです」

 ちなみに、キャシーはあくまでも主だった活動がメイドなので隠れる必要はないと言う。

 そう言う風に連絡を取る事を秘匿していない人物からすれば、わざわざ表立って動くことはない相手を探す必要はないと言う事にもなる。

「でも、アレだろう? そこいら中にギルドってあるわけじゃないだろう?」

「その点に関しては幾つかございますが……まず、大きな町には複数の。小さな町や村にも必ずギルドや関連施設がひとつは存在します。諸国に届出を出さずに勝手に構築される組織であろうと、最低の情報は必ず必要となる為にギルドに繋がる糸を人は必ず残す傾向にございます」

 しかしながら、秋水は思う。

 強さと言うのは、意外と腕っ節で決まるものではない。そうでなければ稀代の悪女と呼ばれる者が男をそそのかし国を動かし世界を揺るがす事など出来る筈もないと言うのが、秋水のいた世界での歴史の一部だ。そして、おそらくは知らないだけで表に出ていないその手の事というのは必ず存在している筈だ。

「とは申しましても、流石に盗賊などが構築するコミュニティなどになりますと限りではございませんが」

 情報ギルドに属している、しかも上位者のランクにあると言うのであれば情報が秘匿されていない限りはキャシーだとて知らない筈はないと思うのだが……可能性としては、確かに「ある」とも「ない」とも言えるし言えないのだ。その当たりをつついても良いのかどうか、秋水には判らない。

 あまりにも判らない事が多すぎる秋水にしてみれば、聞いた所で理解出来ないと言うのもあるけれど聞いてしまうと後で面倒な事になりそうな気がすると言うのもあったりするのは本音の一部だ。

「つまり……ギルドが関わっていない地域は基本的に危険な人って見方もあり?」

「全てではございませんし、必ずしもそうだとは限らないのは確かですが確率が高くなる場合は否定致しかねます。それでも、ギルドは保安部などもあるのは確かでございますが依頼がない限りは単なる人でございますので盗賊や悪党だからと言って危惧する必要がないと言うのもまた、事実となります」

「あれ、そうなの?」

「秋水様の印象では、ギルドと言うのはいかがなものであるのでしょうか……」

 イメージと言われても、秋水の中にあるのは元の世界で有象無象に流れていたオンライン上の情報に過ぎない。

 別に静謐とか精錬なイメージは大きくはないが、かと言ってゼロでもない。

 弱者に優しく強者に屈しないと言えば持ち上げすぎだろうが、それでも困っている人がいるのならば手を差し伸べて欲しいと思うのは秋水が平和な世界に生きてきた証拠だ。

「基本的に、ギルドは金によって雇われる日雇い労働者の集団であるとお考え下さい。

 つまり、もしAのギルドに秋水様の保護が依頼されれば秋水様は保護をされます。ただし、Bのギルドへ人体実験の為に秋水様を拉致する依頼があれば、当然のことながらABのギルド間では表から裏から秋水様への扱いを検討する話の場が設けられる事になります」

「ああ……まあ、そうだよね……」

 職人都市に来てまだ二日目程度だが、それでも秋水を見る目が好意的に限られるかと言えばそうでもない。背後にキャシーやラーカイル医師、レンにドーンと言った人材が居ると言うのも知られているからなのか手を出してくるものはないし、声をかけてくるのも比較的好意的なものに限られる。

「キャシーには苦労かけて申し訳ないね」

「いえ、それが私の仕事ですから」

「せっかく毎日を護衛してくれてるんだから、お礼くらいは言わせて欲しいんだけどな」

「遠慮申し上げます、仕事で十分に礼は頂戴しておりますから」

 徹底しているのだから清々しいが、これでは埒が明かない部分もあるのは事実なわけで。

「こういう場合、『お礼ならば報酬の値上げを持ってお応えいただきたいものでございます』とかキャシーのキャラ的には言いそうだけどな? せっかく朝も夜も働いてもらっているんだし?」

 言って、ふとキャシーは僅かに反応していた。様に秋水には見えた。

「一体どんなキャラですか、私は……」

 ここで「少しばかり金に関して厳しい感覚を持っている、仕事はきっちりやっているけれど遊び心を忘れないと言うには少しばかり性格に難があるんじゃないかな」と言うのを言ったら、秋水はどんな目に合うのだろうか。

「秋水様には私への報酬の権限があるわけではございませんので。申し上げるだけ無駄な言動であると判断したまでの事ではございますが……秋水様の言動は逐一報告もさせていただいておりますし。

 ある意味において、これはこれで私の好奇心を刺激するには十分な日々であると言う事で、返答に変えさせていただきます」

 どうやら、馬鹿正直に言わなくて良かった様である。

 言ったらどう言う事になっていたかと思うと……少なくとも、今すぐはともかく今後は不明で判らない。

「え……好奇心って?」

「秋水様の組織構造は人体に限りなく近いものでありながら、人と認定するには些か問題点があると言うのも事実でございます。その意味から研究に値する存在と言う見方をするのであれば、秋水様を拉致しようと画策する者達の感情も想像出来なくはございません。専門ではありませんので何とも言えぬ所ではございますが」

「ああ……そういえば、そんな設定あったよな……」

 トイレにも行けば睡眠もとるのだ、これで「貴方は人間ではありません」と言われてもぴんとこないのは言うまでもない。特別な運動能力があるわけでもない、魔法が使えるわけでもない、あえて言うのならば謎の物体を生で丸齧りをしたと言うのが特殊な事象ではあるが、それだとて実行している真っ只中は特別に記憶が残っているわけでもない。

 もう一度くらい食べる事があれば、もしかしたら違うかも知れないが……それが適うかどうかは。

「秋水様、そう言う意味から申し上げれば現在の状況と言うのも十分な観察対象と言う状況になります」

「……え?」

「お忘れかも知れませんので申し上げますが……こちらの地下水路は現在、謎の物体。私どもは正体不明の存在に対して主に『怪異』と呼んでおります。何者が関与しているのか、それとも種族が関与しちえる可能性もございます。その為、便宜上で呼んでいるのが『怪異』と言う言葉になります」

 この場合の「種族」と言うのは、どうやら秋水の頭の中で言えば「人間」と言う翻訳をしているらしい。つまり、人種族もしくは獣人などの人以外の種族と言うくくりになる。

 たまに、どんな翻訳をされているかと思うと悩みたくなるが比較対象があるわけではないので無視するしかない。

「ええと……つまり?」

「現在、このレイニアス・シティには怪異が発生しております。夜中になると何者かが現れ浮浪者や夜を生きる方々をむさぼっております」

「それって……食べてるって、事?」

 秋水が聞いたのは、怪異が起きている事と行方不明者が出ている事だけであって行方不明になった者がどうなっているのかまでは知らない。それに、どんな人が行方不明になっているかも聞いたわけではないので、系統が判らないと言う見方もある。

「秋水様、私どもが学園都市を出る前までは確かに大した情報はございませんでしたが……こちらに入ってからは幾つかの情報を得る事が出来ました」


 あの愚か者達も、役に立つ要素はあるのですよ。


 なんか恐ろしい事を言っているが、キャシーがあの場でメイドや執事を一思いにやらなかったのは欲しい情報を聞き出すためでもあったらしい。ただし、やはりキャシーが言っていたようにレイニアス・シティの司法の断罪が下された後は周囲を巻き込んで可哀想な目に事になるのだ。


キャシーは疑問が好きです。疑問を解明するのはもっと好きです。そして解決した疑問を人に教える事はすごく好きです。

もしかしたら、メイドじゃなくて先生になった方が良かったのか悪かったのか…はてさて?


では、次回予告。

「まだまだ続くよ、キャシーの色々講座。主役と相方は相変わらずの世界に居るけど、そろそろ次の展開が待ってるって知ってる!?」

普通は知らないんじゃないかな?期待はしていても。

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