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29 状況説明をお願いします

ご存知の方はご存知かもしれませんが、この回に関しては少々骨が折れました。

でも、今書いてる回のほうが骨が折れます。

もうばっきばきです。

今朝から飲まず食わずです、って単に作業していただけですが。

 とりあえず、と項垂れた。

 と言うよりは、何故に項垂れなければならないのだろうか言う気がしないでもない。否、実際にそう思っていたのはどうしようもない。

「ええとですね……」

 だが、しかし。

 そうなのだ、それでもだ。

 何がどうしたとかは、一切関係ない。ないったらない。

 そうやって自己暗示をかけまくり、かけまくり、かけまくって漸く意識を立ち直らせた。

 傍目には、欠片もそう思っている様に見えないとしても。

「なんでしょう」

 そう言うのは、クラシカルなメイドスタイルに身を包んだ女性だ。

 頭を布で包み、目には小ぶりな眼鏡。手には箒を持ち、ワンピースの上にエプロンをしている女性。

 表情は完全に感情を消しており、初めて見た人は人形かなにかと間違えそうだ。

「そこで何を?」

「どういう意味でしょうか?」

 女性にしてみれば、訝しげな目で見られる覚えはなかった。

 逆を言えば「何故そんな当たり前の事を疑問を目一杯顔中に張り付かせて聞いてくるのだろうか」と言う疑問ならばあった。

 メイドの格好をしている者が室内に控えている。

 おかしい事は何かがあるのだろうか? いや、ない。

「……何故、そこにいるんですか?」

 目前の人物は、寝台の上で上半身を起こしながら問いかけてきた。

 たった今、目が覚めたばかりだからだろう。少し、眠そうな顔をしている。

「仕事ですから」

「はあ……そうですか……」

 困った顔を隠さない、それでいて愛嬌がある顔をしている。

 年齢としては二十歳そこそこか、もう少し行っているだろうか? 少なくとも、10歳前後の子供に見ようとするには無理があるだろう。

「お仕事は、何を?」

「ああ……はい、家政婦をしております」

「家政婦……俺が頼んだ、んですかね?」

「いえ、ギルドからの要請がございましてお世話をさせていただいております」

「へえ……」

 寝起きが悪いのか「彼」はぽりぽりと頭をかいている。

 痒いのかも知れない、とは思う。

 これだけ日の光が燦々と降り注いでいると言うのに、よくも眠り続けることが出来るものだと感心すら出来ていたものだが、あれはあれで様々な要因があったからだとは思う。ついでに言えば、放っておけば今にも再びベッドへ倒れこむのではないかと言う気が思い切りしている。

 個人的にはそれでも構いはしないが、報告義務があるので面倒は減ってくれるといいと思うのは何も非道な事ではない筈だ。

「おやすみになられますか?」

「あ……ええと……」

 すでに、上半身はゆらゆらと揺れてきていて通常ならば危険だと判断もするだろうが。幸いな事に、今は寝台の上だ。このまま前後左右に倒れたとしても柔らかい布地が体を受け止めてくれるだけであって寝相さえ悪くなければ怪我の一つも負うことはないだろう。

 確かに面倒ではあるが、このままもう一度眠ってしまった所で誰が困ると言うものでも……。

「申し訳ございません。誠に恐れ入りますが、どうやらそれは許されざる事の様でございます」

 ふと認識してしまった事について、これは良かったのか悪かったのか少し悩むとメイド姿の女性は考えた。

 良かったのは自分自身の面倒が長引かずに済んだ事で、悪かったのは夢の世界へ旅立とうとしている目の前の人物が旅立ち損ねたと言う所だろうか?

「あえ……?」

「お客様がお見えになります」

「……へ?」

 素晴らしい角度でぴたりと止まった男性は、少しずつ脳みそが動いていたのだろうか。

 さあ、あともう一息で夢の世界へ旅立てるぞ! となった所でようやく違和感を感じたらしい。

「正確には、もう少ししたらお客様が参られると言う事になりますが……」

「え……ええと、客……?」

「はい、お客様でございます」

 ある意味、よくその角度でぴたりと止まっていられるものだと思っていたら。本人も流石に辛かったのか、見ているだけでプルプルと上半身が震えて、手をついて、そして項垂れた。

「え……ええぇっ!」

 ついでとばかりに、女性にとっては訳の判らない叫び声をあげた。

 女性には聞き取れなかったのだが、その後で何やら理解出来ない単語の幾つかの叫び声を上げたようではあったが……それについては言及しない。

 あくまでも、これは仕事。

 仕事相手に対して個人的な感情を持たず、必要以上に踏み込まない事は出来る仕事人としては最低限の限度だと思っている。

「え、と……あの……?」

 必要以上に踏み込まないのは、必要とあらば踏み込むと言う事だ。

 だが、女性は恐らく相手が望んでいる事や疑問に思っている事を承知の上で何も語ろうとはしない。

 別に意地悪とか言うのではなく、単に距離を測りかねている所だからだと言うのが事実だが。

「はい」

 与えられた仕事を完璧にこなすとまで言われたことはあるが、だからと言って必ずしも完璧だったかと言えばそうでもない事は本人が一番よく知っている。

 感情だって表情に出るし、出来ない事は出来ないときっちり相手に言う。

 昔に比べて出来る事は増えたとは思うが、だからと言って常に先んじて行う事が必ずしも良い結果を生むとは限らない。

 だから、覚えた。

 相手との「距離」間をはかると言う事を。

「あの……」

 必要以上に焦ることはない、大抵の事は焦ったところでどうにかなるものではない。

 急ぐ事が必要な場合も、確かに世の中にはあるけれど。必ずしもそうだとは限らない。場合によっては、逆にゆっくり行う事の方が良い場合だってあるのだと言う事を知っている。

 時間に追われているのであれば、それをショートカット出来る事を模索するべきだ。

 無論、家事には時間が必要な事もある。けれど、大抵の場合は「とんでもない事」などそうそう起きるものではないのだから。

「はい、なんでしょう」

 必要以上に焦らず、逆に早くなる口調をゆっくりと。

 自己暗示を必死にしているのは、理由はただ一つ。


 それは、彼女がこの「彼を知らない」からだ。


 焦ってはいけない。

 戸惑ってはいけない。

 常に静かに、一定の速度で。


「あの……俺……」

「何かございますか?」

 戸惑って見えるのは、恐らく疑問符があるからだろう。

 逆を言えば、疑問符以外に何一つ存在しないからだ。

 この様子から見ると、どうやら色々と確かめなければならない事は数多い様だと思われる。

 また一つ報告義務が増えてしまったと頭の片隅で考えながら、半分くらいはこの状況に戸惑っていたりするのが……その事を目の前の男性は気が付くことはないだろう。気分的には、その方が気楽だから良いのだが。

 何より、こちらもそうだが相手の方が目に見えて戸惑ったり混乱したりされていれば自分自身が表面だけでも落ち着くことが出来るのだから有利だ。別に勝ち負けではないが。

「ええと……その……」

 常ならば、必要以上にはっきりとしない人物など色々な意味で評価を下げるものではあるのだが。

 今回ばかりは、相手が年端も行かない子供ではないが似た様な状況なので評価を下げるのを止めておいた。

 こういう事は珍しいのだがこればかりは致し方ないだろう、何しろこの状況になった経緯が経緯なのだから。珍しく同情したとしても許容できる範囲だ。

「はい」

 それに、考え方を変えれば相手は図体がでかいだけの子供に過ぎない。

 頭痛を覚える状況だと言えばそうではあるが、だからと言って目の前の人物が……こういっては何だが、自分自身を力づくで押さえつけたり嗜虐趣味や被虐趣味を持っている様には見えない。人は見かけによらないと言うし、この見た目でいきなり熊を投げ飛ばす様な力の持ち主だったらギャップのあまり好感度は上がるかも知れないとは思うけれど。

「起きたほうがいいかな?」

「お好みで宜しいのではないかと思われます」

 聞かれたことには、常識の範囲内で答える。

 これは、仕事に携わる身としては十分だ。

 通常ならば、きちんと起き上がった上で服を着替える。時間があるとか、相手によっては身を清めると言った事も必要ではあるが、この場合は特例が認められる事を知っていた。

「流石に、断るとかは……」

「申し訳ございませんが、それはお止めになられた方が宜しいかと」

 そこに「先様も、すでにお目覚めになられている事は承知の上で参られるわけですし」と言うのは、聞かれてもいないのに言うのは憚られた。そうしたら「なんで知ってるのっ?」と聞かれたときにあっさり答えるべきかどうかの判断がつかないからだ。

 別に、隠すべき事ではない。ある意味、普通と言えば普通の事ではある。

 少なくとも、この学園都市に籍を置くような人材であるならば当然と言っても良いし。使えないと言うのも想像はしにくいけれど使えない人材だって学園都市には幾らでも居る。正確には、別の手段を用いて使っている人が居ると言うのが正しいのだけれど。

「けどさ、この格好のままだと人に会う時って失礼じゃないかなって思うんだけど……」

 彼の言っている事は、基本的には正しい。

 寝台の上で、つい今しがたまで再び夢の世界に旅立とうとしていた。

 短く刈り込まれた髪はあちこちが飛び跳ねており、眠っていたせいか顔色はさほどよくない。寝不足なのではなく、単純な話として空腹のあまり死に掛けていると言うのが正しいだろう。

 単なる勘ではあるが、今すぐ食事をしてもう一度眠った方が良いだろうと言うのは素人考えだけど外れているとまではいかないだろう。湯船に浸かったら貧血でぶっ倒れたとしても驚きはしない自信がある。

「此度に関して申し上げますと、先様は気になさらないものと思われます」

「え……どうして?」

 理由が判らないと言う顔をしているのは、当然と言うべきことだろう。

 普通ならば即効で聞いたとしてもおかしくない様な事を聞かず、恐らくは目の前に展開されている疑問を手前から片付けていると言った感じだからだ。これは、質問している当事者が未だに混乱の極みにあるからだろうと言う事が簡単に想像出来た。

 ついでに言えば、その混乱を判っていて紐ほぐそうとは考えない自分自身だとて十分に混乱していると言う事なのだから、ある意味において言えば何も言わなかった事に関しては勘弁して貰いたい。

 何より、必殺の武器「聞かれませんでしたので」があるから文句を言われる筋合いは欠片もない。と、理論武装は完璧だ。

 卑怯などと言うなかれ、これは労働者としての基本的な処世術である。

 誰だってやっている、などとは言わないがやらないで居られる必要があるのならば、恐らくはやらないのだから。

「と言うより……俺はどれだけ寝てたの?」

 正しくは気絶していたと言うのが正しいが、いつから眠ったに移行されたのかは判らない。

「とか言うのもあるけど! あるんだけど!

 てか、君は誰!」

 表情がころころ変わってきた姿を見て、ようやく脳みそにまで血液が回ってきたのだろう。

 彼は明らかに顔色を悪くして、頭を抱えて、周囲を見回して、半ば怒鳴りつけるように叫んで。

「私の事は、そうですね……キャシーとお呼び下さい」

 ついで、冷静に質問に答えるキャシーと名乗った女を見て。

「よろしくお願いいたします、ご主人様」

 驚愕に震えていた。


 それが、彼と彼女の出会いと言えた。


今回の手法は珍しいタイプです。

いや、書いてる途中で「あれ、これってアレじゃね?」と思ったので。

とりあえず、がむばって最後まで突っ走ってみました。

努力は実りました。無駄に。

いや、だって話が全く進んでない。。。


というわけで、今回の一言はレディ・リリアント・マイソロジー侯爵令嬢から。

「私の出番が異常に少ない気がしましてよ!」

あー、すみません。


2012-10-14:単語の一部を改定しました。

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