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 2020年代。

 スクラムジェットを搭載した完全再利用可能な宇宙船の開発と低コスト省スペースのニトロロケットの実用化により、世界は米ソ冷戦時代に行われ宇宙開発競争に次ぐ、第2次宇宙開発競争の時代に入った。


 軌道上に巨大なステーションが開発され、大規模な月面基地などが建設され、運用され始めると、大きな問題が発生し、経済活動が制限されるようになった。

 水不足である。

 人間に必要な水は、尿などの排泄物から回収可能であるが、推進剤として使われる水素などに関しては回収される見込みはなく、地球から輸送や月面からの採取にはコスト的な限界もあり、宇宙は慢性的な水不足状態に陥った。


 そんな時、人々が目に付けたのが、外惑星系の木星の衛星エウロパである。

 衛星全体が、厚さ数キロの氷に覆われ、その下には液体の海を持つエウロパから水を持ってくれば、宇宙の水不足は解消される。

 人々は、外惑星開発のため、計画を練り始めた。

 そこで問題になったのが、木星までの時間である。

 最新のイオンエンジンを用いても、往復6年。

 6年分の食糧を備蓄することは、それ程問題ではなかった。

 最大の問題は、乗組員の精神面での健康だった。

 6年もの間、地球を離れることは、誰も経験したことがない出来事である。


 2032年、中国連邦共和国は他国に先駆け、有人木星探査船を出航させた。

 しかし、2年後、火星と木星の間の小惑星帯で乗員が次々と発狂し、失敗した。


 社会的な生き物である人間にとり、長期にわたり、地球から離れ孤立であることに耐えることは非常に困難であった。

 そこで、次世代外惑星系探査船に、採用されたのが人工冬眠システムである。

 人工冬眠システムを用いることにより、長期にわたり地球から離れ孤立であることに耐える負担は大幅に削減されることが期待された。

 2020年後半において、クマやリスなどの冬眠する哺乳類の研究から開発された人工冬眠システムは実用段階に入っていた。

 しかし、今まで、採用されなかったのには、深刻な欠点があったためだ。

 医学的・技術的な制約から未成年以外、まともに使用できなかったのだ。

 成人が用いた場合、生存確率が50%を切っていた。

 それに対して、未成年の生存確率は99.5%と実用に耐えられる水準であった。

 21世紀初頭よりも、運用が容易になったとはいえ、知識、技能共に未熟な未成年に、宇宙飛行士をさせることは大きな反発があった。

 しかしながら、国家間の熾烈な宇宙開発競争は、未成年の宇宙飛行士を後押しし、実現させた。

 当初、否定的だった世論も、中国による人工冬眠搭載の宇宙船計画が、スクープされると僅か1週間で賛成の割合が7割を占めるようになった。


 2036年。

 17歳ばかりを乗せた宇宙船ディスカバリー号が、2週間後、地球を出発しようとしていた。


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