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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.58 魔法の杖

   [Ⅰ]



 ラミナス組の部屋に入ると、3人は既に出発できる格好をしており、準備万端といった感じであった。

 そんな3人の姿を見て頼もしく思いながらも、俺は念の為、昨晩のおさらいをする事にした。


「では皆、準備の方は粗方出来てるみたいなんで、もう一度、昨日の確認をさせて頂こうと思います。それではイメリア様からいきましょう」

「あ、あの、コタローさん……イメリアではなく、イアと呼んで下さって構いませんよ。コタローさんの呼びやすい名前で結構ですから。それと、今まで通りの話し方でお願いします。私もその方が話しやすいので」

「そうですか。では、そうさせてもらいます」


 お言葉に甘えるとしよう。


「ではまず、イアちゃんからいこうか。昨日も言ったと思うけど、今のイアちゃんの姿は、もう既に魔物達には知られていると思った方がいい。そこで、変装をこれからするわけだけど、さっきロランさんの道具屋に行ってきたら、良い装飾品があったんだよ。なので、朝食を食べたらすぐに、ロランさんの店に向かってもらいたいんだ」

「朝食の後ですね。わかりました。コタローさんの指示に従います」


 俺は続いて、他の2人に視線を向けた。


「それから、レイスさんとシェーラさんも、イアちゃんと共にロランさんの店に向かってもらえますか。貴方がたの装飾品も、用意してあるので」

「了解した」

「コタローさんの言うとおりにするわ」

「ロランさんには既に話を通してありますんで、よろしくお願いしますね」


 するとそこで、アーシャさんが手を挙げた。


「コタローさん、ちょっといいですか」

「なんでしょう?」

「昨日手に入れた馬と馬車ですが、全て売り払うのですか?」

「そのつもりですけど……何か問題がありますか?」

「馬車はともかくですが、馬2頭は私達が使ったらどうですか?」

「馬を……ですか?」


 アーシャさんなりに、何か思うことがあるんだろう。


「そうです。お兄様は以前言ってました。馬は馬車よりも小回りが利くから、馬車移動する際は周囲の偵察と護衛の為に、必ず騎馬隊を何名か同行させると」

「なるほど、確かにそうですね」


 アーシャさんの言う事も一理ある。

 馬だけは俺達が貰っておいた方がいいかもしれない。

 でもそうなると餌の問題も出てくるが。


「アーシャちゃんの言う通りよ。確かに偵察や護衛もそうだけど、馬単体としての機動性は馬車よりもはるかに上よ。対応出来る事の幅が広がるわ。だから、一緒に連れて行った方が良いかもしれないわね」


 シェーラさんもそれに賛同した。


「コタローさん、私もシェーラと同じ考えだ。しかも、あの馬は良い身体つきをしていた。恐らく、馬自体も旅慣れている気がする。なので、乗る乗らないに関わらず、連れて行った方がいいかもしれない」


 レイスさんも同じ意見のようだ。

 旅慣れたこの2人の意見を聞き、俺も決心が固まった。


「そうですね。確かに皆の言うとおりです。では、馬車だけ売って、残った馬2頭は俺達がそのまま使用しましょう」


 俺の言葉に4人は頷いた。

 だがこの時、俺は奇妙な気分になった。

 なぜか知らないが、責任者っぽい感じになってるからだ。


(あれ……俺って、いつの間にかリーダーみたいになってね? そこまで考えてはいないんだが……)


 あまり頼られても困るので、俺的には嬉しくない事であった。

 俺はリーダーシップをとるような人間ではないからだ。


(このままいくと、ガチのリーダー的存在になりそうだから、少し自重をした方がいいのかもな……ン?)


 するとそこで、シェーラさんが何かを思い出したのか、ポンと手を打った。


「あ! そういえばコタローさん、言い忘れてたんだけど、奴等の乗ってきた馬車の中に、奇妙な杖が1つ転がっていたのよ」

「奇妙な杖?」

「そう、アレなんだけど」


 シェーラさんはそう言って、部屋の片隅を指さした。

 そこには、茶色い棒のような物が立てかけられていた。


「あの杖だけが、奴等の馬車の中にあったのですか?」

「ええ、そうよ。ちょっと気になったから、一応、部屋に持ってきたの」

「触っても大丈夫そうでした?」

「私も恐る恐る触ったんだけど、なんともなかったわよ」

「……そうですか。ではちょっと拝見させてもらいますね」


 俺は杖を手に取り、確認した。

 杖の両端には、美しい2つの石が付いていた。

 2つの石は、アメジストのような美しい紫色の水晶球とトルコ石のような水色の丸い石で、大きさは両方ともテニスボール程度であった。

 それらの石からは微妙に魔力の流れが感じられるので、どうやら、普通の杖ではなさそうである。

 長さは1.5m程度。物干し竿くらいの太さの茶色い棒で、奇妙な模様が幾つも彫りこまれていた。

 とりあえず、見た目は大体こんな感じだ。

 どことなく美術品のようであり、魔物が持つには似つかわしくない美しい杖であった。


「あの悍ましい魔物達が所有してたという割には、やけに美しい杖ですね……」


 アーシャさんも俺と同じことを思ったようだ。


「そうですよね。でも何の杖だろう……。馬車の中に置いてあったという事は、戦闘で使う物じゃないのかもしれない……」

「ロランさん達はあの時、馬車を透明にしたと言ってました。もしかすると、その為の道具なんでしょうか?」


 と、イアちゃん。


「う~ん、どうだろうね……。そうなると、透明になった馬車の中にあるというのも妙な話だし」

「それもそうですね」


 さて、どうしたもんか……この杖は恐らく、魔導師の杖のように、微量の魔力を籠めることで効果が得られるものだと思うが、試してみるべきかどうかが悩みどころであった。

 とはいうものの、この杖から感じる魔力の流れからは、危険な雰囲気というものは感じられない。

 だが、万が一という事もあるからだ。


(どうするかな……まぁ危険な気配は感じないから、とりあえず、試してみるのも手か……)


 俺は4人に訊いてみた。


「杖の力を試してみてもいいですかね? この杖には何らかの魔法が込められているのかもしれないので、何が起きるかはわかりませんが……」


 アーシャさんは眉根を寄せる。


「え、試すって……ここで、ですか?」

「ええ、ここで、です。この杖からは攻撃魔法特有の荒々しい魔力の流れや、パサートやカニトのような嫌な魔力の流れが感じられないですしね。だから、多分、それほどの危険はないと思うんですよ。まぁこれは俺の勘ですが……」


 4人は不安そうに顔を見合わせた。


「少し怖いですが、コタローさんの判断にお任せします」

「私もコタローさんの判断にお任せします」

「やってみてくれ」

「いいわよ、試しても」


 全員が了承してくれたので試すことにした。


「では試しますね。でも、万が一という事もありますんで、少し離れてもらえますか」


 4人は頷くと少し後退する。

 俺はそこで紫色の水晶部分に手を添え、微量の魔力を籠めた。

 するとその直後、なんと水晶球から、紫色の煙のようなモノが、一斉に噴き出したのである。


「うぉ! 何じゃこりゃ!」


 煙はみるみる室内に広がってゆき、何も見えないくらいに視界が悪くなった。

 そこで皆の声が聞こえてくる。


「な、何ですの、この煙は!」

「何これ!?」

「こ、これは!?」

「この煙は一体……」


 だがそれも束の間の事であった。

 暫くすると、紫色の煙は消えたからだ。

 だがしかし……煙が完全に消え去ったところで、俺達は互いの姿に驚愕したのであった。


「な、何よ、皆一体どうしたの!」

「そんな馬鹿な!」

「ど、どうなってるんですの」

「これは、ま、幻?」


 俺達の姿はどうなったのかというと……。

 なんと! 俺達は全員、魔物になっていたのである。

 しかも、ガーゴイルのような姿に変化していたのだ。

 この突然の変化に俺は焦った。

 だがそれと同時に、あるアイテムの事が俺の脳裏に過ぎる。


「これは……もしや……ルキの杖か」


 ゲームでは自分の姿を魔物や動物、そして人間に変身である魔法の杖だ。

 悪戯好きの妖精が作った杖とかなんとか。


「ルキの杖? な、何ですのそれは?」


 と、アーシャさん。

 とりあえず、適当に言っておこう。


「実は俺も以前、噂で聞いた事があるんですよ。自分の姿を変身させられる魔法の杖があるという事を」

「え? そんな杖があるのですか? 初耳です」


 これは多分、イアちゃんの声だ。

 全員、魔物姿だから誰が誰やら、サッパリである。


「まぁ俺も詳しくは知らないんだけど、そういう杖があるという事だけは、聞いた事があるんだよ」

「コタローさん、それは分かりましたが、これは元に戻れるんですか? 私、ずっとこんな姿なんて嫌ですよ!」

「私もよ!」

「私もだ!」

「えっと……私も」


 4人の抗議の声が聞こえてくる。

 まぁこうなるのも無理はない。

 だが、この杖がゲームと同じという確証はないので、俺も曖昧な返事になってしまったのである。


「た、多分、一時的な変化だと思うんで、元に戻れるとは思うんですけど……」


 とはいえ、俺も不安なのだ。

 皆にはこう言ったが、本当に元の姿へ戻れるのだろうか? と、考えてしまうのである。

 確かにゲームだと、ある程度の時間が経過すると元に戻った。

 しかし、この杖がゲームと同じルキの杖だという確証はどこにもないのだ。


(ゲームだと歩いている内に効果が切れたから、歩くといいんだろうか……ン?)


 ふとそんな事を考えていると、反対側についている水色の石が視界に入ってきた。

 これはもう試すしかないだろう。


「あ、ちょっと待ってもらえますか。次は反対側の石を試してみますね」

 俺はそこで、杖を回転させて上下逆にする。

 それから先程の要領で、水色の石に微量の魔力を籠めた。

 その直後、今度は水色の煙が一斉に噴き出し、室内に充満していった。

 暫くすると、先程と同じように煙も晴れてゆく。

 そして、俺達は互いの姿を見て、安堵の表情を浮かべたのであった。


「も、元の姿に戻りました。よかったです。一時はどうなる事かと思いました」

「アーシャちゃんの言うとおりよ。……ずっと魔物だったらどうしようと思ったわ」


 ここは謝っておこう。


「すいませんでした。試すなんて軽率すぎましたね。申し訳ありませんでした」


 レイスさんは頭を振る。


「いや、それは構わない。コタローさんのお陰で、我々のような姿に奴等が化けれるという事がわかったのだからな」

「ええ、レイスさんの言うとおりです。これからは例え魔物ではなくても、十分注意しなければいけません。ですから、さっき言った変装の件は、よろしくお願いしますね」


 レイスさん達は真顔になり、無言で頷いた。


「それとこの杖は、いざという時の為に持って行きましょう。考えてみれば、これは素晴らしい変装道具かもしれませんから」――

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