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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.57 アーシャの意思

   [Ⅰ]



 俺が修行から戻ると、落ち着かないアーシャさんの姿があった。

 何やら様子が変だったので、俺は訊いてみることにした。


「おはようございます、アーシャさん。何かあったのですか?」

「コ、コタローさん」


 するとアーシャさんは、俺を見るなり、ホッと安堵の息を吐いた。

 だがその直後、アーシャさんは頬を膨らませ、俺を睨みつけてきたのである。

 明らかにアーシャさんは怒っている感じであった。

 アーシャさんは腕を組んで仁王立ちになる。


「どこに言ってたんです? 私に何も言わないで、どこにも行かないで下さい!」


 どうやら、無断外出した事を怒っているようだ。

 今はあまり刺激するような事は言わない方が良さそうである。

 俺は後頭部をポリポリかきながら謝罪した。


「すいません……アーシャさんが幸せそうに寝てたものですから、起こすのも悪いと思いまして……」

「そ、そうですか……まぁ良いでしょう。今回は【特別に】許して差し上げます。……で、どこに行ってたんですか?」

「ああ、それなんですが……実はヴァロムさんから、毎日やるように言われていた修行があったので、少しの間、外へ出かけてたのですよ」


 アーシャさんは罰の悪い表情になった。


「え、修行? そ、そうだったのですか。それは知りませんでした。ところで何の修行をしていたのです? もしかして……また、魔物と戦っていたとか?」

「違いますよ。魔法の基礎訓練みたいなもんです。ヴァロムさんは基礎が大事だと繰り返し言ってましたんで」


 本当はレイシェントの門を開く為の修行だが、これについてはヴァロムさんから口止めされているので、例えアーシャさんといえども今は言えないのだ。

 ちなみにこの修行の様子は、アーシャさんも何回か目にしている。

 とはいえ、ただ瞑想しているだけとしか思っていないだろう。

 ヴァロムさんもアーシャさんには、俺専用の魔力訓練法としか説明してなかったし。

 つまり、まぁそういうわけだ。


「そうだったのですか。でも、これからどこかに行くときは、必ず私に一言言ってくださいね。起きた時に……貴方がいなかったので、どれだけ私が不安だったか……。昨晩……私を守ってくれるって言ってくれたから……嬉しかったのに……コタローさんは……私の……」


 最後の方はボソボソとした言い方だったので、ハッキリと聞き取れなかった。

 だが特定の単語は聞き取れたので、俺は思わず、それを口にしていた。


「へ? 不安? 嬉しかった?」


 するとアーシャさんは、なぜか知らないが、頬を赤く染めた。


「な、何でもありません。こちらの話ですッ。それよりも、今言ったこと忘れないでくださいね!」

「確かに無断は良くないですね。わかりました。これからは気を付けます。アーシャさんにはちゃんと報告するようにしますよ」

「約束ですからね」


 アーシャさんはそう言って、ニコリと微笑んだ。


(よかった……とりあえず、機嫌は良くなったみたいだ)


 俺はホッと胸を撫で下ろした。

 だがそこで、昨晩のアーシャさんの様子が脳裏に蘇ってきた。

 その為、俺は忠告の意味を込め、アーシャさんに言っておくことにした。


「あの、アーシャさん……お話があるのですが」

「話? 何ですか?」

「……昨晩、アーシャさんはザルマンに対して怯えておられましたが、これから先、ああいった事が起きる可能性が十分にあり得ます。なので、アーシャさんはマルディラント城にて待機してた方がいいんじゃないでしょうか? まぁこれは、俺個人の意見ではありますが……」


 だが俺の忠告もむなしく、アーシャさんは即座に首を横に振った。


「いいえ、私は貴方に付いていきます。それに私は、このイシュマリアで今、何が起ころうとしているのか……それを見届けたいのです。これは私の勘ですが、オルドラン様は何か重大な秘密を知った為、投獄されるような事になったのではないかと思っています。ですから、コタローさんに何を言われようと、私は貴方と一緒に行きますよ。それに、私だってオルドラン様の弟子です。この結末を見届ける必要があります」


 この表情を見る限り、意志は固いようだ。

 もう説得は無理だろう。


「……わかりました。でも、あまり無茶はしないでくださいよ。俺もアーシャさんを守る為に精一杯努力しますが、それでもやはり限界というものがありますからね」

「ありがとうございます、コタローさん。私、貴方を信頼してます。だから、貴方の言う通りにしますから。それに私……貴方と一緒にいると、不思議と安心できるのです」


 俺を信頼している上に、一緒にいると安心できる……か。

 まさか、アーシャさんにそんな風に思われていたとは。

 初めて会った頃の刺々しさから考えると、俺は凄い評価されてるようだ。

 もしかすると俺に気があるのかも……なんて事を考えてしまうくらいである。


「はは……そ、そうっすか。そこまで言われると、いやぁ、なんか照れるなぁ……」


 俺は側頭部をポリポリかいた。

 これは仕方がない事であった。

 異性にここまで頼られた事なんて、俺の人生で今までなかった事だからだ。


(それにしても、初期の頃と比べると、凄い変わりようだな。もしかすると、アーシャさんてツンデレキャラなのか……って、あ!?)


 俺はそこで、ある事を思い出した。


「そういえばアーシャさん、マルディラントに戻らないといけないんじゃないですか? 母君であるサブリナ様も、そろそろ起床する頃だと思いますよ」


 それを聞き、アーシャさんもハッとした表情になる。


「そ、そうでした。ではコタローさん、またあの丘まで一緒に来てください」

「わかりました」


 というわけで、俺はまた、あの丘へと向かう事になったのである。



   [Ⅱ]



 墓地の片隅でぼんやりとしていると、マルディラントからアーシャさんが戻ってきた。


「お帰り、アーシャさん。どうでした? サブリナ様やティレス様は何か言ってませんでしたか?」

「何もありませんわ。お母様も、何も気づいてないようでしたから」

「それはよかったですね。では宿に戻りましょう」

「ええ」――


   *


 その後、俺達は町の中を少し散歩しながら、宿へと帰ってきた。

 そして、宿の玄関を潜ろうとしたまさにその時、隣の道具屋の扉が開き、ロランさんが姿を現したのだ。

 突然でビックリしたが、俺達はとりあえず、ロランさんに朝の挨拶をした。


「おはようございます、ロランさん」

「おはようございます」


 ロランさんはニコニコと微笑んだ。


「おお、これはコタローさんにアーシャさん。おはようございます。皆さん、さぞやお疲れだったと思いますが、昨夜はよく眠れましたかな」

「ええ、ロランさんが良い宿を紹介してくれたお陰で、ぐっすり眠ることが出来ましたよ。ありがとうございました」


 俺はとりあえず、お礼を言った。


「それはよかったです。ところで、コタローさん達は、朝の散歩の帰りですか?」

「まぁそんなところです。ロランさんは何を?」

「私は今から開店前の準備を始めるところです。町の人が動き始める前には、店を開けておきたいものですから」

「ああ、なるほど。開店の準備ですか……あ!」


 俺はそこで、ある事を思い出した。

 実は昨晩の打ち合わせで、変装に使えそうな道具がないか、ロランさんの店で探すことになったからだ。

 ついでなので、今、確認するとしよう。


「ロランさん、ちょっとお訊きしたい事があるんです。今、お時間よろしいですかね?」

「はい、構いませんよ。何でしょうか?」

「実はですね……ロランさんの扱っている商品について、少しお聞きしたい事があるのです」

「ああ、それでしたら、立ち話もなんですので、店の中に入ってもらえますか。そこでお話ししましょう」


 ロランさんはそう言うと、店の中を指差した。


「それもそうですね」――


   *


 ロランさんと暫く話をした俺達は、その後、ラミリアン組の部屋へと向かった。

 部屋の前に来たところで、俺は扉をノックし、呼びかけた。


「コタローです、朝早くからすいませんが、ちょっといいですか?」


 その直後、扉は開かれた。

 扉を開いたのはレイスさんであった。


「おはよう、コタローさんにアーシャさん。で、なんであろうか?」

「昨日の件でお話があるので、中に入らせてもらっても良いですか?」

「どうぞ、お入りください」


 と、イアちゃん。


「では失礼します」


 そして、俺とアーシャさんは中へと入った。

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