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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.56 旅でも修行

   [Ⅰ]



 翌日の早朝……夜が明け始める頃に、俺は目を覚ました。

 日本にいた時は、こんな薄暗い時間帯に目を覚ます事なんて殆どなかったが、この夜明けの時間帯は普段、魔物と実戦訓練をする事になっている。

 それもあってか、俺の中の体内時計はこの時間帯に目が覚めるようセットされているのだ。

 まぁ要するに習慣というやつである。


(ふわぁぁ……朝か……少し眠いけど、起きるとするか)


 俺はそこで大きく欠伸をした。

 だがその直後、左脇腹の辺りに違和感を覚えたのである。


(ン? ……なんだ……何かあるぞ……)


 俺はそこに視線を向ける。

 するとそこには、スヤスヤと寝息を立てるアーシャさんの可愛い寝顔があった。

 一瞬、何でここにアーシャさんがいるんだ? とも思ったが、頭の中が徐々に覚醒してゆくに従い、昨晩、アーシャさんがこの部屋にやってきた事を俺は思い出したのである。


(そういや……一緒に寝ることになったんだっけ……)


 アーシャさんは俺の胸に顔を半分うずめ、両手で抱き着くという寝姿であった。

 早い話が、俺は今、アーシャさんの抱き枕となっているわけである。

 とはいえ、可愛い子なので、抱き着かれている俺も悪い気はしなかった。

 寧ろ、ラッキーと思っていた。

 だが今の俺は、恒例の朝モッコリの最中であり、エロい事を考えていないにも関わらず股間はビンビンであった。

 なので、当然、変な気分にもなってくる。

 そして次第に『やっちゃえ、やっちゃえ』という危険な幻聴まで聞こえてくるようになったのだ。

 だがしかし……流石に、それは恐ろしくてできなかった。

 やったら最後、ソレス殿下の刺客に俺は狙われることになりかねない。

 その為、俺はブンブンと頭を振って、今の雑念をなんとか振り払った。


(アカンアカン……それはアカン。落ち着け……素数を数えよう。2、3、5、7……ふぅ)


 煩悩をコントロールできたところで、俺はアーシャさんの寝顔に視線を向けた。

 その表情はすっかり安心しきった感じで、昨晩の様な怯えた雰囲気は微塵も感じられない。

 というか完全に安眠状態である。

 昨晩の俺はセクハラまがいの行動をしていたが、この表情を見る限り、アーシャさんを安心させる効果があったようだ。


(しかし……今考えると、かなりのスキンシップしたよな、俺。行動力ついたわ。俺があんな事をする奴だったとは……驚きだ。さて、それはともかく……起きるとするか。修行もあるし……)


 俺はアーシャさんを起こさないよう、そっと上半身を起こした。

 そして、両手を大きく広げ、まずは背伸びをする。

 それからベッドを降り、この部屋に1つだけある窓をそっと開いたのである。

 窓の向こうには、薄っすら靄がかかるフィンドの街並みが広がっていた。

 それはまるで水墨画の世界のようであった。


(靄ってるねぇ……なんか夢にでてきそうな景色だな。とはいえ、この状況が夢だったら醒めて欲しいんだがね。まぁそれはさておき……顔を洗って、賢者のローブに着替えたら、門を開く修行でも始めるか……)


 そう、修行だ。

 とはいえ、別に無理してやるものではない。

 こんな状況だと、寧ろ、やらない方がいいくらいだろう。

 だが、昨日のような事があると、やはり不安なのである。

 しかもアムト・レイシェントは、無詠唱で複数の魔法を同時行使できるというチートっぷりだ。

 修得すれば、物凄いアドバンテージになるのは間違いない。

 その為、いつやるのかと言われたら、「今でしょ」という事になってしまうのである。

 というわけで、俺は早速、準備に取り掛かるのだった。



   [Ⅱ]



 叡智の衣に着替え、武具の類を装備した俺は、静かに宿屋を出た。

 目的地は、昨日の墓地である。

 ちなみに墓地は、宿屋の裏手を少し進んだ丘の上にある。

 だが、今は墓地に用はない。俺が向かっているのは、その手前にある見晴らしのよい開けた場所であった。

 理由は勿論、そこが修行をするのに適していると思ったからだ。

 それから程なくして丘にやって来た俺は、墓地の手前にある見晴らしの良い場所で立ち止まった。


(ここにしよう。人もいないから静かだし……)


 俺はそこで、魔法陣が描かれたシートをフォカールで取り出した。

 これはヴァロムさんから貰ったもので、レイシェントの門を開く修行で使うアムトの魔法陣である。

 ちなみに大きさは、縦横2mくらいある正方形のシートで、丈夫な生地で作られた分厚い絨毯のような代物であった。

 で、俺は今から何をするのかというとだが……このシートに描かれた魔法陣の中心で、禅を組み、瞑想をするのである。

 修行内容はただそれだけであった。

 だがしかし、ただ瞑想すればよいというモノではない。

 この魔法陣は、あくまで入口であるという事だ。

 そう……俺はこのアムトの魔法陣から、自身の中にあるというレイシェントの門を見つける旅に出なければならないのである。

 言うなれば、精神世界の旅といった感じだろうか。

 要するに、このレイシェントの門というやつは、俺自身が自分の中にある門を探し、そして開かねばならないのだ。

 雲を掴むような漠然とした感じのモノなのである。

 だが、この修行をするにあたり、ヴァロムさんは以前こんな事を言っていた。


「コタローよ。レイシェントの門を見つけるには、普段魔法を使うような感覚だと、まず無理じゃ。じゃが、かといって儂にはお主のレイシェントの門を見つけることは出来ぬ。これはお主自身が見つけねばならぬモノじゃからの。とはいえ、道標となるものがなければ、門を見つけるのは難しかろう。そこでじゃ、お主に1つ助言をしてやろう。修行をする際は……風の声や木々の声に水の声、そして生命の声……この世の中にある全ての声に耳を傾けてみよ。さすれば道が開ける筈じゃ。まぁそう簡単にはいかぬであろうが、それを頭の中に入れて修行に励むがよい」


 はっきり言って、イマイチ要領を得ない助言であった。

 世の中の全ての声と言われても、ピンとこないのである。

 修行を始めてから結構経つが、そこだけは未だによく分からない。

 しかし、ヴァロムさんはいい加減な事を言う人ではないので、必ず、何らかの意図がある筈なのである。

 俺は魔法陣の上に立ち、禅を組んだ。


(さて、では始めよう……スピリチュアルの世界へ……)


 そして俺は、レイシェントの門を探す旅へと出掛けたのである。

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