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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.55 旅の決断

   [Ⅰ]



 イアちゃん達3人が息を飲む中、俺は暫し考えた。

 このまま、イアちゃん達と行動を共にする事による、メリットとデメリットを……。

 まず、この3人を仲間にするメリットは勿論、俺達2人には無いモノを持っているという事だ。

 旅の経験、物理的な力や守備力、それと、これは俺と被る能力ではあるが、回復と戦闘のサポートを行える魔法技能等である。

 そしてデメリットだが、それは……イアちゃんを狙う強大な魔物と遭遇するかもしれない、という1点だけであった。

 ザルマンのような魔物が刺客として送り込まれている事を考えると、今後も同様の展開が予想できる。

 場合によっては、ザルマン以上の強力な魔物が、刺客として現れる事も十分に考えられるのだ。

 以上の事から、同行する俺達の命も、常に危険に晒される事になるのである。

 これは非常に不味い状況だ。が……とは言うものの、彼等の持っている能力や旅のノウハウは、俺達にとって喉から手が出るほど欲しいモノでもある。

 それだけではない。

 旅の仲間となると、技能的な部分の他にも重要な部分があるからだ。

 それは何かというと……人間性である。

 確かに魔物に狙われているのかもしれないが、この3人は話しやすい上に信頼できる者達だと、俺は思っている。

 素行が悪いわけでもなく、高貴な身分だったのに高慢な態度をとる事もない。

 身の上を黙っていたというのはあるが、俺が同じ立場ならそうしていただろう。

 そう……彼らは悪い人達ではないのだ。

 不幸な境遇が、そう言う決断をさせているのである。

 長旅をする仲間という事を考えると、これは非常に重要である。

 悪人と長旅するのは、下手すると、魔物と遭遇する事よりも性質が悪いかもしれなからだ。

 それと俺はこうも考えた。

 3人と仲間を解消したところで、また同じような者達と出会えるなどという保証はどこにもないと……。

 まぁそんなわけで、実はもう俺の中では、粗方の答えは決まっているようなモノなのである。

 問題は、そのデメリットをどうやって改善していくのか、という事だ。


(どうすっかな……何か手を打たないと……)


 俺がそんな事を考えていると、イアちゃんの寂しい声が聞こえてきた。


「あ、あの、コタローさん……やはり、仲間として旅をするのは難しいのでしょうか」


 俺はイアちゃんに視線を向けた。

 するとイアちゃんは、今にも泣きだしそうな、悲しい表情を浮かべていた。


「いや、もう答えは出ているんです。ですが、それによって出てくる問題点をどうしようか迷っているんですよ」


 イアちゃんの頬に一筋の涙が伝う。


「という事は、やはり、駄目なのですね……」


 誤解してるみたいなので、ちゃんと言っておこう。


「へ? ああ、違う違う。そうじゃないですよ。俺も貴方達と、このまま旅を続けるつもりなんですが、解決しなきゃならない問題があるので、それを今考えていたんです」

「エッ、そ、それじゃあ、仲間でいてくれるのですか?」


 俺は頷いた。


「今から新しい仲間を見つけるといっても難しいし、それに、俺もそれほど時間に余裕があるわけではないしね」


 と、その直後、イアちゃんは俺に抱き着いてきた。


「ヒィェェン、ヒグッ……あ、ありがとうございます、コタローさん。嬉しいです」

「泣くほど喜ばなくても……」


 俺はこの突然の行動に少し驚いた。

 イアちゃんは、俺の決断に相当ビクビクしていたのだろう。

 そこで、アーシャさんの声が聞こえてきた。


「オホン……ところでコタローさん、解決しなければならない問題点とは何なのですか?」


 それを聞き、イアちゃんも俺から離れる。


「そ、そうでした。すいません……まだそれを聞いておりませんでした」 


 俺は4人の顔を見た。


「まぁ皆もわかっているとは思いますが、早急に改善しなければならない点が1つあるんです。それは貴方達と行動を共にする以上、俺達の身にも危険が迫るという事です」


 アーシャさんは頷く。


「……ですね。何か良い案は浮かんだのですか?」


 俺は頭を振る。


「いいえ、まだです。これを改善するには、魔物達がどうやってイメリア様の居場所を突きとめるのかを考えなければなりませんからね。というわけで、俺も少し知りたい事があるんで、今から皆に幾つか質問させてもらおうと思います。いいですかね?」


 3人は無言で頷いた。

 というわけで、俺は質問を始めた。


「では、まずですが、このイシュマリアにラミリアンがどれだけいるのかわかる方はいますか?」

「正確な数は分からないが、マルディラントに来る途中、幾つかの町でラミリアンの姿を見かける事があった。それにラミナスとイシュマリアは交易の盛んな友好国だったので、この地に根を下ろしたラミリアンや、イシュマリアの民と婚姻関係を結んだラミリアンもいたと聞く。だから、ある程度の数はいる筈だ」


 レイスさんが答えてくれた。

 婚姻関係を結ぶという事は、ラミリアンと人間は、それほど身体的な違いはないのかもしれない。

 まぁそれはさておき、今の話を聞いた感じだと、それなりにラミリアンというのは見掛ける種族のようだ。

 物珍しさから特定されるという懸念はなさそうである。


「そうですか。では次にですが、顔以外で、イメリア様と他のラミリアンを見分ける、大きな外見上の違いというモノはあるのでしょうか?」

「実はそれがあるので……今の私は青く髪を染めているのです。ラミナス王家の者は生まれつき透き通るような水色の髪が特徴ですので……」


 と、イアちゃん。


「既にそういう対策はしてたんですか、なるほど。他には何もされてないのですか?」

「これだけです。あとはローブのフードを被って顔を隠すだけでした」

「そうですか……。でも、ザルマンのように街の中に入り込む可能性も考えられるんで、その辺は今まで以上に何らかの手を打たないと不味いかもね。これからは街の中にも魔物がいると考えて行動しないと」

「はい……私もそう思います」


 俺はそこで皆の表情を見た。

 4人共、かなり固い表情をしていた。

 これを見る限り、とりあえず、俺の言葉を重く受け止めてくれたようだ。

 と、その時であった。


【グゥゥゥ】


 俺の腹が空気を読まずに鳴ったのである。

 少し恥ずかしかったが、俺はそこで夕食を食べてない事に思い出した。


「み、皆はもう、夕食は食べたのですか?」


 レイスさんは頭を振る。


「いや、まだだが……」

「じゃあ、ここの一階で食事をしてから、その辺の事を皆で考えましょうか。張りつめた状況下では、あまり良い案も出てこないでしょうしね」――



   [Ⅱ]



 レイスさん達との打ち合わせを終え、自分の部屋に戻った俺は、旅の疲れを癒す為に早めに寝る事にした。

 明日もまた長い旅になるので、あまり夜更かしはしたくないからだ。

 ちなみに、他の皆も俺と同じで、もう寝ると言っていた。

 やはり、強大な魔物との戦闘があったので、肉体的にも精神的にも、皆、相当疲れたのだろう。

 特に、レイスさんやシェーラさんは魔法で傷を癒したとはいえ、身体を張った戦いをしていたので、相当疲れたに違いない。

 早く休んで、体力の回復をしてもらいたいところである。

 俺は叡智の衣を脱ぎ、寝巻として用意した布の服に着替えると、グローの明かりを消した。

 その瞬間、室内は薄暗くなる。

 一応、外の明かりが少し入ってくるので、この部屋は完全な暗闇にはならない。

 俺はその薄明かりを頼りに、ベッドへと向かった。

 靴を脱いでベッドに横になると、全身の力を抜いて瞼を閉じる。

 すると、階下から賑やかな笑い声や話し声が小さく聞こえてきた。

 この宿の一階は、大衆酒場みたいになっているので、恐らくそこから聞こえてくる声だろう。

 眠るのには邪魔な声であったが、その内、気にならなくなると思い、俺は枕に頬をうずめた。

 と、その時である。


 ――コン、コン……ガチャガチャ――


 この部屋の扉をノックする音と、扉を開けようとする音が聞こえてきたのだ。


(こんな夜遅くに、誰だ一体……レイスさん達かな)


 俺はそこで半身を起こし、扉に向かって呼びかけた。


「誰ですか?」

「わ、私です……アーシャです。と、扉の鍵を開けてください」


 どうやらアーシャさんのようだ。


「わかりました。ちょっと待ってください」


 俺はロックを外し、扉を開けた。

 すると向こうには、枕を両手で抱きかかえ、不安そうな表情を浮かべるアーシャさんの姿があった。


(どうしたんだ一体……怯えた表情をしているけど……)


 とりあえず、訊いてみた。


「どうしました。何かあったのですか?」

「と、とりあえず、中に入らせてもらいます」


 アーシャさんはそう言うなり、そそくさと部屋の中に入ってきた。


「コタローさん、扉を閉めて貰えますか」

「はい……」


 俺は言われた通り、扉を閉めた。


「一体、何があったんです? ただ事じゃない雰囲気ですけど……」

「あの、コタローさん……こ、ここ、今夜は、私と……一緒に寝て貰えますか?」 


 アーシャさんは、モジモジとしながら、恥ずかしそうにお願いをしてきた。


「え? 突然何を……」


 俺を誘っているのだろうか? 

 いや、それだと、さっきの怯えたような仕草の説明がつかない。

 とりあえず、もう一度、訊いてみよう。


「アーシャさん、どういう事ですか? 向こうの部屋で何かあったのですか?」

「い、いいえ、何もありません。ですが……慣れない部屋で1人というのは……少し不安だったのです。なので……護衛者であるコタローさんに一緒にいてもらえると……私も安心できるものですから」


 要するに、勝手の知らない部屋で1人寝るのが怖いという事だろう。


「ああ、そういう事ですか。それなら、って……ベッドは1つだけだな。仕方ない、俺は床で寝るか」

「か、構いませんよ……私と一緒に……ベッドで寝て下さっても」

「でも、嫁入り前である太守のお姫様と、俺のような奴が一緒のベッドで寝るのは、イシュマリア的にも不味いんじゃないですか?」

「わ……私は、コタローさんを信用してますから」

「そうですか……。まぁアーシャさんがそれで構わないのら、俺はそれでもいいですよ」


 どうやら俺は安心と思われてるようだ。

 男と思われてないのだろうか。

 ちょっとショックである。

 とはいえ、俺も後が怖いから、襲うなんてことはできないけど……。


「それじゃあ、もうそろそろ寝ましょうか。また明日も、長い距離を移動しないといけませんし」

「え、ええ」


 というわけで、俺の寝床に予想外のお客さんが来る事になったのである。


   *


 これはベッドインした後の話である。

 俺とアーシャさんはシングルベッドで横になると、互いに背中を向けて寝る事にした。

 これは勿論、俺の配慮だ。

 やはり年頃の可愛い女の子と一緒に寝るのは、俺も流石に悶々としてくるからである。

 こんなシチュエーションになったら、本能の赴くままに生殖活動に入ってしまう可能性も否定できないからだ。

 というか、もう既に俺の中では、理性VS本能の戦いが勃発している最中であった。

 またその影響もあって、頭の中は恐ろしく覚醒しているのである。

 これが今一番の懸念事項であった。 


(ああ、今夜……俺は寝れるのだろうか……なんか明日は、睡眠不足で目の下にクマが出来ていそうな気がする……ン?)

 

 だがその時、ベッドに小さな振動が伝わってきたのだ。

 俺はそこで震源地に目を向ける。

 すると、震源はアーシャさんであった。

 アーシャさんは身体を小さく丸め、プルプルと小刻みに震えていた。

 もしかすると、俺と寝ている今の状況が、ここにきて怖くなってきたのかもしれない。


「アーシャさん……どうしました? 俺と寝るのが不安でしたら、無理しなくていいんですよ。俺は床で寝ますから」


 すると、アーシャさんのか細く震える声が聞こえてきた。


「ち、違うんです……あのザルマンとかいう魔物の恐ろしい姿が、頭に焼き付いて離れないんです。あの時……コタローさんが助けてくれなかったら……私は今頃……そう思うと……」


 俺はようやく理解した。


(だから俺の所に来たのか……)


 考えてみれば、アーシャさんは魔物との戦闘なんて殆どやった事がない。

 おまけに弟子入りする前は、大貴族の箱入り娘として育ってきたのである。

 そんなアーシャさんが、あんな恐ろしい化け物と出くわしたのだから、こうなるのも無理はないのだ。


(戦闘経験のある俺だって恐ろしかったんだから……無理もない)


 今までそんな素振りを見せなかったのは、ラミリアンの3人がいる手前もあり、無理して気丈に振る舞ってきたのだろう。

 俺はそこで、アーシャさんの方へと身体を向けた。

 小さくなって震えるアーシャさんの華奢な背中が、俺の目に飛び込んできた。

 それはか弱い女性が見せる、細く小さな背中であった。

 俺はそんなアーシャさんを見ている内に、この子を守ってあげなければいけないという感情が芽生えてきた。

 その直後、俺は自分でも予想外の行動にでたのである。

 なんと俺は、後ろから優しく包み込むように、アーシャさんを抱きしめていたのだ。

 抱きしめた瞬間、アーシャさんの震えが直に伝わってきた。

 でもさすがにびっくりしたのか、そこでアーシャさんは俺に振り向いた。


「コ、コタローさん……何を」

「アーシャさん……俺がいるから大丈夫……とは言えないけど、俺なりに精一杯、貴方を守ります。だから、怖がらないでください。そして今はもう休みましょう。何かあったら自分を犠牲にしてでも、俺が貴方を守りますから」

「コタローさん……ありがとう」


 アーシャさんはそう言うと、抱きしめる俺の腕に、そっと手を添えた。

 震えも次第に治まってゆく。

 そして、このまま俺達は、深い眠りへと落ちていったのである。


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