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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.50 旅の再開

   [Ⅰ]



 俺は地面に腰を下ろし、先程のザルマンとレイスさん達のやり取りを思い返していた。

 彼等はあの時、イアちゃんの事をイメリア様と呼んでいた。

 またそれに加え、ザルマンはこんな事を言っていたのである。

 ラトゥーナの末裔を殺すことが任務と……。

 何の末裔なのかは知らないが、彼らの言動から察するに、イアちゃんはラミナスという国において、かなり高貴な存在だったに違いない。

 俺の予想では国の要人か、もしくはその子女といったところだろうか。

 そして、レイスさんとシェーラさんは、イアちゃんを護衛する従者だと考えるとシックリくるのである。

 思い返せばこの2日間、イアちゃんは、いつも2人に守られるように行動していた気がする。

 必ずイアちゃんの両脇には、レイスさんとシェーラさんの姿があったからだ。

 今朝、マルディラントの広場で会った時もそうであった。

 それらを考えると、今の推察は当たらずとも遠からずだと、俺は思っているのである。

 まぁいずれにせよ、その辺りの事はレイスさん達に確認するつもりだ。

 いや、旅の安全の為にも、絶対に確認しなければならない事である。

 レイスさん達は、魔物の呼び水になる可能性があるからだ。


(それにしても……前途多難だな。旅の初日から、いきなりこれかよ……。それはともかく、魔力を少し回復しておこう。祈念の指輪を使って……)


 俺は祈るように手を組み、青い水晶で作られた指輪の力を使った。

 祈念の指輪はソーンのオッサン曰く、古代魔法王国カーぺディオンで作られた物らしい。

 別名、ロシュフォレント・ヴェイン・レア・へーネスと言うそうだ。

 長ったらしいので、当時の人々は祈念の指輪と呼んでいたようである。


(とりあえず、少しは回復したか……この辺にしておこう。ゲームだと、使い過ぎて消滅する事あったし……)


 するとそこで、服の内側にいるソーンのオッサンが、小声で話しかけてきた。


「おい……コタローよ。空を見ろ」

「ん、何かいるのか?」


 俺は空を見上げた。


「違う……。かなり日も傾いてきた。早くこの森を抜けた方がいい。夜は魔の瘴気が地上に現れやすくなる。昼と違い、魔物も活発になるぞ。今のところ周囲に魔物の気配は感じないが、これから先、どうなるかわからんからな」


 今の内容に少し引っ掛かる部分があったが、確かにその通りである。

 日がある内にとっとと森を抜けて、その先にあるフィンドへと向かわねばならないのだ。

 俺はそこで治療中のレイスさん達に視線を向けた。

 するともう治療も終わったのか、4人共、俺の方へと向かっているところであった。

 レイスさんとシェーラさんの歩く姿を見る限り、かなり傷は回復したようである。

 この様子ならもう出発しても問題はなさそうだ。

 4人は俺の前に来ると、まずアーシャさんが口を開いた。


「コタローさん、治療は終わりました。それと……レイスさんから話があるそうです」


 俺はレイスさんに視線を向ける。

 すると、レイスさんは突然、両膝と両掌を地面に付き、土下座の一歩手前のような姿勢になったのである。


「コタローさん……本当に申し訳ないことをした! 今回の魔物の襲撃は、私達が原因なのだ。そして……私は貴方に黙っていた事がある。実は……」


 話している途中だが、俺は構わずに言った。


「レイスさん、話は後です」

「え?」


 レイスさんは顔を上げる。

 俺は空を指さした。


「日も傾いてきました。馬に食料と水を与え次第、すぐにこの森を抜けましょう。話は、その先にあるフィンドで訊かせてもらいます」

「……わかった。君の言うとおりにしよう」

「では馬の世話は、レイスさん達にお任せしますね」


 レイスさんは静かに頷いた。

 そして、俺はアーシャさんと共に、馬車の方へと移動を始めたのである。



   [Ⅱ]



 馬車の前に来ると、気まずそうな表情で俯き加減になったロランさんの姿があった。

 その隣には奥さんや娘さんがおり、ロランさんと同様、少し俯き加減であった。

 この様子を見る限り、ロランさん達も罪悪感は感じているのだろう。

 悪い人達ではないのかもしれない。

 とはいえ、あまりそういう先入観を持つのも良くないが……。

 ちなみに奥さんと娘さんは、ロランさんと違い細身の体型で、服装は2人共、旅人の服を着るという出で立ちであった。

 奥さんの方はロランさんと同じくらいの年齢で、ごく普通のおばさんという感じだ。

 それから娘さんだが、恐らく、アーシャさんくらいの年齢だろう。

 赤い髪をポニーテールにしており、中々に可愛い子である。


「ロランさん……貴方が俺達を騙した事については、もうとやかくは言いません。家族を人質をとられていた事を考えれば、致し方ない部分もありますしね。ですが、1つ訊きたい事があるんです」

「は、はい、なんでしょうか?」

「貴方はあの魔物達と、一体どこで接触したのですか? それをお聞かせ願いたい」


 するとロランさんは肩を落とし、ションボリとした。


「それなんですが……実は、マルディラントでなんです」

「え、マルディラントで!?」

「マルディラントですって!?」


 俺は隣にいるアーシャさんと顔を見合わせた。

 アーシャさんも驚きを隠せないのか、目を大きくしている。


「一体、どういう事なんです。詳しく話してください」

「奴等と会ったのは、昨日、エレンディアの酒場で旅の護衛を依頼していた時でした。近くのカウンター席にいたあのラミリアンの男が、『私達も早朝にフィンドへ向かうんだが、ついでですし、一緒に行きませんか? お金はいいですから』と私に言ってきたのです。それで私は願ってもない事だと思い、すぐに了承しました。そして、その方達に同行させてもらう事になったのです。冒険者達は大人数でしたので、私はすっかり安心してました。それで、途中まではなんとも無かったのですが……この森の中に入ってから冒険者達は正体を現しまして……」


 経緯は大体わかったが、気になる点が幾つかあったので、俺は質問を続けた。


「マルディラントを出発したのはイシュラナの鐘が鳴る前ですか?」

「はい、仰る通りです。出発したのは朝日が昇り始めた頃なので、イシュラナの鐘が鳴るだいぶ前です」


 俺達が出発する頃には、かなり先を進んでいたようだ。……辻褄は合う。


「それと今、護衛を依頼したと仰いましたが、この森に入るまで奴等に不審な点はなかったのですね?」

「はい、その時点では普通の冒険者でした。魔物などとは、とてもではありませんが思えませんでした」

「そうですか……。では魔物達についてお訊きします。魔物達とはエレンディアの酒場で会ったと言ってましたが、そこでは他の客達と同様、普通に振る舞っていたのですか?」


 ロランさんは空を見上げ、思案顔になる。


「いえ……酒場にいたのは、ザルマンというあのラミリアンの男だけでした。他の者達とは街の外で落ち合ったのです。まぁこれもザルマンという男の受け売りですから、どこまで信用できるかわかりませんが……」

「酒場で会ったのはザルマンだけで、他は街の外でですか……なるほど。では次に、移動手段についてお訊きします。ここに来るまでの移動方法は何でしたか?」

「馬車と馬です。冒険者達が馬車1台と馬2頭で、私達が荷馬車1台という組み合わせです」

「その馬車と馬は今、どこにあるのですか?」


 ロランさんはそこで奥さんに視線を向けた。

 すると奥さんは、溜息を吐き、項垂れたのである。


「それが実は……魔物達が奇妙な魔法を使って、馬車と馬を一瞬で消してしまったのです」

「一瞬で消した?」


 そんな魔法、ゲームにあっただろうか……。

 レスフォンとかいう、姿を見えなくする魔法なら俺も知ってるが……。

 まぁそれはともかく、話を聞こう。


「で、消したという場所は、どの辺りなんですか?」

「フィンドに向かって森の街道をまっすぐ進みますと、途中で広場になったところがあるのですが、魔物達はそこで馬と馬車を消したのです」


 話を聞く限りだと、フィンドに向かう途中のようだ。

 少し時間は取られるが、そこを通る時に、一度確認はしておいた方が良いかもしれない。


「では最後に、もう1つお訊きします。マルディラントから同行してきたという魔物達の中で、途中、別行動をする魔物はいましたか?」


 ロランさんは頭を振る。


「いいえ、別行動をした者はおりません」

「そうですか。訊きたい事は以上です。ありがとうございました」


 俺はとりあえず、今得た情報を暫し頭の中で整理する事にした。

 と、そこで、背後から俺を呼ぶ声が聞こえてきたのである。


「あ、あの……コ、コタローさん……」


 俺は後ろを振り返る。

 するとそこには、気まずそうな表情を浮かべたイアちゃんが、シュンとしながら立っていた。


「ん、何だい、イアちゃん」


 イアちゃんは懐から、紺色の液体が入った小瓶を取り出し、俺へと差し出した。


「あの……コタローさんは先程、魔力が尽きたと言っておりました。ですから……このロシュの秘薬をお使いください」


 ロシュの秘薬は、ゲームだと魔力回復のアイテムだ。

 市販されてないので、貴重なアイテムであった。


「イアちゃん、気にしなくていいよ。さっき、魔力回復させる道具を使ったから」

「で、でも……私、助けてもらっておいて、今はこんな事くらいしか出来る事がないんです。だから、どうか使ってください。お願いします」


 イアちゃんは深々と頭を下げてきた。

 この子なりに気を使っているのだろう。


「とりあえず、気持ちは受け取っておくよ。それは貴重な魔法回復薬だから、イアちゃんが使った方がいい」

「でも……」

「気にしない、気にしない」


 俺はそう言って、イアちゃんの頭に手をやり、軽くポンポンした。

 すると恥ずかしかったのか、イアちゃんは赤面しつつ顔を俯かせたのである。

 こういう部分は見た目の影響か、すごく子供っぽい仕草であった。


(可愛い、エルフの少女って感じだな……ン?)


 と、そこで、レイスさんの声が聞こえてきた。


「コタローさん、馬はだいぶ調子を取り戻した。いつでも出発は出来るが、どうしようか?」 

「ではすぐに出発しましょう。この先で、少し調べたい事もあるので」


 するとロランさんが、慌てて俺の前に来た。


「あ、あの、私達も一緒に連れて行ってもらえないでしょうか? 厚かましい事だとは私も承知しています。ですが、どうかお願いします。また魔物達に襲われるのかと思うと、私はもう……」


 ロランさんは身体を震わせながら頭を下げた。

 奥さんと娘さんもロランさんに続く。


「私からも、どうかお願いします」

「お願いします」


 さすがに、今のロランさん一家を置いていくような鬼にはなれないので、ここは俺の独断で返事をしておいた。


「いいですよ。じゃあ、乗ってください」

「あ、ありがとうございます」


 ロランさんは少し涙目になっていた。

 あんな魔物を見た後だから、無理もないだろう。

 まぁそれはさておき、俺達は早速、馬車へと乗り込んだ。

 全員が乗ったところで、俺は御者席にいるレイスさんに告げた。


「ではレイスさん、出発してください」

「了解した。ハイヤッ」


 レイスさんの鞭を打つ掛け声の後、馬車はカラカラと軽快に動き出した。

 予想外の展開があった為、やや長い休憩になってしまったが、なんとか旅を再開する事ができたので、とりあえずは良しとしよう。

 まぁそんなわけで、また周囲を警戒しながらの移動が始まるのである。

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