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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.47 仲間の因縁

   [Ⅰ]



 目の前に現れた10体の凶悪な魔物達……。

 その姿はゲームの様なアニメ風ではなく、非常にリアルな質感を持つ、野獣といっても差支えない化け物達であった。

 手足の鋭利な爪に、口が開く度に見える大きな白い牙。そして人間よりも一回り大きい体躯と、俺達を威嚇する唸り声や射抜くような眼つき。これらの外見からは、某有名漫画家が描くキャラデザインのような可愛らしさは微塵も感じられない。

 感じるのは、肉食獣が狩りをする時に見せる獰猛な雰囲気だけなのである。

 その為、俺の中に『死』という文字が、否が応にも浮かび上がってくる。

 そう……死である。

 これがもしゲームならば、例え死んだとしても仲間が生き延びさえすれば、教会やイグドラジルの葉芽といったアイテム、または蘇生魔法で復活できることもあるだろう。

 だがしかし……この世界における死は、文字通りの死だ。

 理由は簡単で、現状、蘇生できる施設や魔法がないからである。

 一応、この国にある施設でゲームの教会に当たる役目をするのはイシュラナ神殿だが、ここの神官はそんな魔法や道具は使えない。

 つまり、死んだ場合は、現実世界と同じく、埋葬や火葬を行って故人を偲ぶのである。

 ゲームのようなわけにはいかないのだ。 

 とはいうものの、俺は一応、イグドラジルの葉芽を持ってはいる。

 だが、あれはあまり人に知られたくはないアイテムな上、魔法で保管している状態なので、俺が死んだ場合はどうにもならない。

 前もってアーシャさんに渡しておけばよかったのかもしれないが、今となってはもう遅いのである。

 だからだろうか……。

 この時の俺は戦いに勝つ事よりも、どうやって生きる伸びるかを模索し始めていた。

 そう、生きる為の道を……。

 こんな魔物達を前にしても俺は冷静であった。

 恐らく、毎日繰り返してきた魔物との戦闘のお陰だろう。

 そこで経験した死の恐怖、そして、戦いの思考というものが、今の俺を冷静にしてくれるのだ。


(なんとかして、生きる道を探さなければ……)


 俺はザルマンとロランさん達のやり取りを注視しながらも、現状を把握する為に思考を巡らせていた。

 魔物の構成とその能力、魔物と俺達の出来る事と出来ない事、敵の指揮系統、俺達との位置関係、周囲の地形の確認等を。

 特に、旅が始まる前に教えてもらったイアちゃんの使える魔法や、過去にプレイしたゲームの知識などは必死になって思い返した。

 そして、それらを元に、俺は生き延びる為の策を考え始めたのである。

 そんな中、ザルマンは不気味な黒い水晶球を掲げ、声高に告げた。


「イメリア様……私は素晴らしい力を得られたのですよ。その力を使って、貴方がたを八つ裂きにして差し上げましょう。クククククッ」


 その直後、なんと水晶球から黒い霧が一斉に吹き出し、ザルマンの全身を覆い始めた。

 この突然の変化に俺達は身構える。


「では、準備が整うまで間、暫しお待ちください。どうせ逃げられはしないんです。僅かばかりの時ですが、最後のお祈りでも捧げていて下さい。私からのささやかな贈り物です。ククククッ」


 だがそれを聞いた瞬間、俺の脳裏にある考えが過ぎった。

 それは……やるなら今しかないという事だ。

 今の奴は、完全に勝った気でおり、尚且つ、これ以上ないほどに油断している。

 ここを突く以外、俺達が生き残る道はないと思ったのである。

 俺は短い時間の中で必死に考えてみたが、どう考えても俺達の方が分が悪い。

 もしこれらの魔物がゲームと同様の強さだった場合、物理的な攻撃力と機動力、そして体力と手数の多さは、向こうが1枚も2枚も上なのは間違いないからだ。

 勿論、ゲームと同じなどという証拠は何もない。

 だが、今まで出遭った魔物達が概ねそんな感じだった。

 恐らく、コイツ等もそれ程の違いというものは無いに違いない。

 そうなると、魔物達の数が大きな問題だ。

 2、3体ならまだしも、このレベルの魔物が10体となると、こちらも相当の被害を覚悟しなければならない。

 その為、今の俺達がまともにやりあえば、下手をすると全滅か、もしくは大打撃を受ける可能性が十分にあるのである。

 おまけに、ザルマンがこれから何をするのか未知数なのもある。

 いや、奴の自信とこの屈強な魔物達を統率している事実を考えれば、かなりの力を持っていると見て間違いないだろう。

 だからこそだ。今の内に、他の魔物達の脅威を取り除かなければならないのである。

 そして、その為の手段を一刻も早く講じなければならないのだ。


(やだなぁもう……旅の初日からこれかよ。なんとかして、隙を作るしかない……)


 俺はザルマン達に聞こえないよう注意しながら、仲間の4人に話しかけた。


「皆、そのままの体勢で、俺の話を聞いてもらえますか?」


 そこで4人は俺をチラッと見た。


「何だ、言ってくれ」


 と、レイスさん。


「皆もわかってるとは思いますが、ハッキリ言って、俺達はあまりにも不利な状況です。下手を打つと全滅の可能性もあります。そこでお聞きしたいのですが、4人の中で、この魔物達について多少なりとも知っている方はおられますか?」

「数年前……ラミナスが魔物の大群に襲撃された時、何回か見た事はあるが……どんな魔物かまではわからない。逃げるので精一杯だったのでな」

「私もだわ」

「……私もです」

「私も初めて見ますわ。恐らく……近頃噂に聞く、新種の魔物だと思いますの」


 どうやら誰も知らないみたいだ。

 予想してた事だが、皆が知らない以上、ここは俺の判断で切り抜けるしかない。

 あまりこんな事はしたくないが、ゲームのコマンド入力を俺が直接指示してやるしかない。

 しかし、目の前の魔物がゲームと同じという確証はないので、これは俺もある意味賭けなのである。

 だが、やらなければ非常に不味い事態になるのは明白だ。

 おまけに俺が持つゲーム知識を使うので、4人はそこに突っ込んでくる可能性も大いにある。

 だが、今は生きるか死ぬかの選択に近い状況なので、この際、止むを得ない。

 今はこの状況を打破する事が先なのだから。


「どうやら、知っているのは俺だけのようですね。では、皆にお願いがあります。今から俺の指示通りに動いて頂きたいのですが、いいですか?」

「え!?」


 すると驚いたのか、4人は一斉に俺へ視線を向けた。


「コタローさん、コイツ等を知ってるの?」


 と、シェーラさん。


「はい、どんな魔物かは多少知ってますよ。でも、俺に振り向かないでください。皆の視線は魔物へ向けたままでお願いします。それと、ここからは対応を間違えると、大変な目に遭うと覚悟してください。場合によっては、全滅する可能性も十分ありますので」

「とは言っても……」

「シェーラよ……私の見る限り、コタローさんは信用できる方だ。だから、この場は彼に従おう」

「レイスがそこまで言うのなら……」


 と言って、シェーラさんはそこでイマちゃんに視線を向けた。

 イアちゃんはそれに頷く。


「シェーラ、ここはコタローさんに従いましょう。どうぞ続けてください、コタローさん」


 俺はそこでアーシャさんを見る。

 アーシャさんは何か言いたそうに、ジトッとした流し目を送ってきた。


「……訊きたい事が幾つかありますが、この戦闘が終わった後にします。どうぞ、続けてください」


 とりあえず、後で言い訳を考えておこう。

 俺は話を続けた。


「では時間がないので簡単に説明します。少々卑怯ではありますが、今から不意打ちをします。魔物達を叩くには、力に酔った馬鹿な指揮官の指示を待っている今が狙い目だからです。それで、ですが……俺とアーシャさんがこれから攻撃魔法を使いますので、その後、レイスさんとシェーラさんは、右端にいる赤い魔物2体を剣で攻撃して、止めを刺してください」

「え、あんな弱そうなのを先に攻撃するの?」


 シェーラさんはべリスレア・スライムに視線を向け、微妙な反応を示した。

 仕方ない、簡単に説明しておこう。


「あの魔物はべリスレア・スライムといって、どんなに深い傷も完全に回復させるべリスレアという魔法を使います。ちなみに言っておきますが、べリスレアはベルレアよりも更に上の高位魔法ですから強力ですよ。だから、あれを真っ先に倒さないと後々面倒な事になるんです。というわけなので、お願いしますね」

「わ、わかったわ」

「先程のロランさんの事もある。君の言うとおりにしよう」


 と、レイスさん。


「ではお願いします」


 俺はそこでチラッとザルマンの様子を確認した。

 ザルマンは黒い霧に覆われたままだったが、中から不気味な赤い光を発しているところであった。

 嫌な予感がした俺は、急いでイアちゃんに指示をした。


「それからイアちゃんは、ペルミラで俺達の素早さを上げてほしい」

「はい、わかりました」

「それとアーシャさんは、俺がオライアを使うのと同時に、ブレズナンをあの赤いべリスレア・スライム2体に放ってください」

「ブレズナンですね。わかりました」


 俺は次に、怯えるロランさん一家に忠告をしておいた。


「ロランさん……貴方には言いたい事もありますが、後にしましょう。それはともかく、今から戦闘を始めますので、俺達の後に下がってもらえますか? でないと巻き込まれますよ」

「わ、わ、分かった。行くぞ、お前達」


 ロランさんは妻子共々、慌てて後ろの岩壁に移動する。

 それから付近にある馬車の裏に身を隠した。

 俺はそれを確認したところで、アーシャさんに攻撃開始の合図を送ったのである。


「行きますよ、アーシャさん」


 アーシャさんは無言で頷く。

 そして、俺とアーシャさんは杖を魔物達に向け、それぞれが同時に呪文を唱えたのだった。


「オライア!」

「ブレズナン!」

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