表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/52

Lv.46 陰謀

   [Ⅰ]



 ロランさんを乗せて移動を再開してから、1時間以上は経過しただろうか。

 俺達は今、広葉樹で形成された森の中を進んでいるところだ。

 張り出した木々の枝葉が道の上を覆っている為、森の中はやはり薄暗い。

 とはいえ、少々の木漏れ日が射し込むので、進むのには影響はないレベルであった。

 しかし、不気味なほど静かな森だ。

 馬車の車輪が回る音や馬の蹄の音が、物凄く大きな音に感じられるくらいに……。

 その為、森に潜む魔物達に気付かれるのではないかと、俺達は不安に駆られてしまうのである。


(なんとなく、嫌な森だな……)


 俺達は今まで以上に警戒しながら、慎重に森の中を進んで行く。

 すると、暫く進んだ所で、ロランさんが不安気に話を始めた。


「あの……馬が大分弱ってきているような気がするので、そろそろ馬の休憩をした方が良いんじゃないでしょうか?」


 俺は前方の馬に目を向けた。

 確かに、動きが鈍くなってきているような気がする。

 よく考えると、森の中に入ってからは魔物を警戒するあまり、馬の休憩をしていないからだ。

 確かに、そろそろ休憩を入れた方が良いのかもしれない。

 だが、俺は馬に関しては素人。

 プロに訊くとしよう。


「レイスさん、ロランさんはこう言ってますけど、馬の調子はどんなもんでしょう。そろそろ休憩が必要ですかね?」

「確かに休憩が必要だが……今は森の中だ。むやみに立ち止まるような事は、しない方がいいだろう。それになるべくなら、水のある開けた場所で休憩させてやりたい。だから、少し速度を落としてでも、今はこのまま進んだ方がいい気がするがな」


 それを聞き、ロランさんは微笑んだ。


「でしたら、良い所がありますよ。この森をもう暫く進むと、右手に道が伸びている筈です。そこを右折して進んで頂ければ、一時的に森の外に出ます。そこは馬の休憩に最適な、湖のある開けた場所ですので」


 レイスさんはロランさんをチラッと見た。


「本当か、それは? 間違いないのだな?」

「ええ、間違いありません。私も時折、利用する事がございますので」

「コータローさん。この方はこう言っているが、どうする?」


 妙な引っ掛かりを感じたが、俺は馬なんぞ飼った事もないので、さっぱりであった。

 というわけで、レイスさんの判断に任せることにした。


「馬の事は私にはわかりませんので、レイスさんの判断にお任せしますよ」

「そうか……ならば、一息入れようと思う。無理を回避できるのなら、した方がいいのでな」


 それから暫く進んで行くと、ロランさんの言った通り、右側に道が伸びているT字の交差点があった。

 俺達はそこを右折する。

 そして、その先にあるであろう休憩場所を目指したのだ。


(なんだろう……奇妙な引っ掛かりを感じる。なぜか嫌なフラグが立ってる気がするんだが……)


 右折してから10分程度進むと、ロランさんが言ってた開けた場所へ、俺達は到着した。

 奥は切り立った岩壁なので行き止まりだったが、向かって左側に小さな湖もある為、馬の休憩をするには確かに良い場所であった。

 それに日の光を遮る枝葉も頭上にはない為、森の中と比較すると、ここは非常に明るく、爽快な場所なのである。

 だが、俺は何とも言えない気分になっていた。

 釈然としないからである。


(ロランさんの言う通り、確かに開けた良い場所だが……行き止まりでもある。ある意味、袋小路だ。って……考えすぎか)


 レイスさんは奥の岩壁付近へ移動すると、そこで馬車を停めた。


「では、ここで暫し休憩をしよう。馬に食料と水を与えたら出発するつもりだ」


 その言葉を合図に、俺達は馬車から降り、長旅で疲れた身体を休める事にした。


「長い間、座っていたので身体が固くなりましたわ」


 アーシャさんはそう言うと、両手を大きく広げて背伸びをした。


「これだけ長いと流石にそうなりますよね。俺も少し屈伸運動でもしておこう」

「私も」


 と、イアちゃんも。

 だがその時、今やってきた方角から、奇妙な笑い声が聞こえてきたのだ。


「クククククッ」


 俺は声の出所に視線を向けた。

 するとそこには、フードで顔を覆った黒いローブを纏う者が1人佇んでいた。

 俺は一瞬、精霊王の試練で出てきた影かと思ったが、そうではなさそうだ。

 レイスさんはそいつに向かい、大きな声を上げた。


「何者だッ!」


 黒いローブを纏う者は、そこでフードを捲り、素顔を晒した。

 フードの下から出てきたのは、銀髪の長い髪と、尖った耳をした人相の悪い男の顔であった。

 だがそれを見た瞬間、レイスさん達は叫ぶように声を荒げたのである。


「き、貴様は、ザルマン! 何故、貴様がここにいる!」

「何でザルマンがッ」

「貴方は!」


 レイスさん達は憎しみを籠めた目で、この男を睨み付けていた。

 どうやらレイスさん達の知り合いのようだ。

 しかも、何かしらの深い因縁があるに違いない。

 俺はそこで、ザルマンと呼ばれた男を見た。

 ザルマンと呼ばれたこの男は、レイスさん達と同じラミリアンであった。

 人間で言うなら歳は中年といったところだろう。

 銀色の長い髪をしており、身長もレイスさんと同じくらいであった。

 鋭い目で嫌らしい笑みを浮かべているので、人相も悪く、友好的な雰囲気は感じられない。

 それどころか、明らかに敵意……いや、殺意を持っているようにさえ見えるのであった。

 ザルマンは不敵に微笑む。


「久しぶりですな、イメリア様。お元気そうで何よりだ。ククク……貴方がたがマルディラントを出るのを、長い間、今か今かと待ったかいがありましたよ」


 この男の視線を見る限り、イメリアというのはイアちゃんの事のようだ。

 俺とアーシャさんは、どうやら、レイスさん達の因縁に巻き込まれたみたいである。

 もしかすると俺達は、仲間探しでとんでもないジョーカーを引いてしまったのかもしれない。最悪だ。

 そこで、意外なところから声が上がった。


「お、おい、アンタッ! 言われた通り、この人達を連れてきたんだ。妻と娘を早く返してくれ!」


 声の主はロランさんであった。


「おお、そうでしたね。ご苦労様でした。お約束通り、妻子を解放しましょう」


 ザルマンはそう言うと、指をパチンと鳴らした。

 前方の森の中から、10匹の魔物がゾロゾロと姿を現した。


(チッ……これは罠だったのか……ロランさんの事を不審に思ってはいたが、周囲の警戒に気を取られて思考が停滞してたようだ……クソッ)


 俺達は武器を手に取り、身構える。

 だが、俺は現れた魔物を見て、戦慄を覚えたのである。


「こいつらは……クッ」


 そこにいた魔物……それは、4本の腕をもつライオンの魔獣デッドライオネスが2体に、紫色の大猿アサルトエイプが2体、豚の獣人オークが4体……そして鳥の翼がある赤いスライム……ベリスレア・スライムが2体であった。

 非常に不味い展開である。

 どいつもこいつも、中盤から後半にかけて現れる、それなりに力のある魔獣だからだ。

 挙句の果てに、後ろは行き止まりで逃げ場はない。

 これは将棋でいう詰みに近い状況なのである。

 アーシャさんの震える声が聞こえてくる。


「な、なんですか、この魔物達は……。こんな醜悪な魔物は、図鑑でも見た事ないです」


 どうやらアーシャさんのこの反応を見る限り、ここでは新種の魔物なのかもしれない。

 俺はそこで、デッドライオネスの1体に目を向けた。

 視線の先にいるデッドライオネスの4本腕には、ロランさんと同年齢と思われる女性と、若い女性が捕らわれていた。

 これら一連の流れを見るに、ロランさんは家族を人質にされていたので、やむにやまれず、俺達をここに招いたのだろう。


(汚い真似をしやがる……)


 ザルマンはそこで、デッドライオネスに指示した。


「さて、ではこの男に、妻子を返してやりなさい」


 デッドライオネスは奥さんと子供を離した。

 2人はその直後、泣きながら、ロランさんの元に駆け寄り、抱きついた。


「あなた!」

「お父さん!」

「無事だったか、2人共!」


 ロランさんは2人を優しく抱擁する。

 するとそれを見たザルマンは、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべたのである。


「クククッ……涙ぐましい家族の再会というやつですか。中々良い物を見せて頂きました。さて、それでは全員揃った事ですし、まとめて死んでもらうとしましょうか」


 それを聞くや否や、ロランさんは叫んだ。


「な! 話が違うじゃないか! 役目が済んだら解放してくれるって……」

「だから解放しましたよ。ですが、誰も生かして返すなどとは言っておりません。クククク」


 イアちゃんはザルマンを睨み付ける。


「あなたは国だけでなく、魔物に自分の魂まで売り渡したのですね。ラミリアンの恥ですわ」

「……イメリア様。貴方は相変わらず、口だけは達者な小娘だ。まぁいい。上からは、お前達を殺せとの御命令なので、まずは、それを実行する事にしましょうか」


 ザルマンはそこで、黒い煙のようなものが渦巻く、ソフトボール大の水晶球を懐から取り出した。

 そして、それを自身の前に両手で掲げ、声高に告げたのである。


「イメリア様……私は素晴らしい力を得られたのですよ。その力を使って、貴方がたを八つ裂きにして差し上げましょう。クククククッ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ