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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.43 出発

   [Ⅰ]



 朝の穏やかな日差しが降り注ぐ、雲一つない青空の元、マルディラントの1等区域内にあるイシュラナ神殿から、重厚な女神の鐘が鳴り響いた。

 神官達の朝の礼拝を告げる鐘の音である。

 ここに住まう者ならば、毎朝聞えてくる日常の音だ。


(外だと結構大きな音だな。さぞや、良い職人の手によって、鐘は作られているんだろう。さて……この広場だったな)


 俺は今、アーシャさんと共に、2等区域の北側にある広場に着いたところだ。

 どうやらここは憩いの広場のようで、石で作られたベンチや、馬に跨る騎士の石像、そして、花壇といったモノが視界に入ってくる。

 また、それらのベンチには、のんびりと腰を下ろす住民達の姿もチラホラと確認できた。

 なぜか分からないが、この光景を眺めているだけで、妙に気分が落ち着いてくる。

 とはいえ、こうして広場に突っ立っていても仕方がない。

 俺達もその辺の空いてるベンチで、暫し寛ぐことにした。

 で、なぜここに来たのかだが……それは勿論、ここがレイスさん達との待ち合わせの場所になっているからだ。

 そう……今日はいよいよ、ガルテナへと出発する日なのである。

 しかし、まだレイスさん達は来てないようだ。

 だが、もうそろそろ来る頃だろう。

 なぜなら、朝のイシュラナの鐘が鳴ったら、この広場に集合という事になっているからだ。


(レイスさん達もそのうち来るだろう。さてと……)


 俺は石のベンチに腰を下ろした。

 するとそこで、アーシャさんが話しかけてきた。


「コタローさん、全員揃いましたら、出発する前に、この広場の隣にあるイシュラナ神殿に寄ってから行きましょう」

「イシュラナ神殿に? なんでですか?」


 俺は広場の向こうに見える古代ギリシャ風の神殿に目を向けた。


「これは聞いた話なのですが、旅人達の間では、イシュラナ神殿で道中の安全を祈ってから出発するのが、習わしみたいですよ」

「へぇ、そうなんですね。初めて知りました」


 世界は変わっても、こういう験を担ぐ行為は同じなようだ。

 また、それを裏付けるかのように、イシュラナ神殿へと出入りする冒険者らしき者達や、旅人達の姿が確認できる。

 アーシャさんの言う通りなのだろう。

 ちなみに、俺は信心深い人間ではないから、そういうのはあまり気にしない方だ。

 だがこういう事は、信じる信じないに関わらず、やっておくと気分的にすっきりするので、やった方が良いのだろう。


「じゃあ、俺達もそれに習いますかね。初めての本格的な長旅ですし」

「ええ、是非そうしましょう」


 俺はそこでアーシャさんをマジマジと見た。

 今日のアーシャさんは、昨日と同じように、ツインテールに丸メガネ、そしてサークレットに茶色いローブといった出で立ちである。

 だが良く見ると、茶色いローブの下には魔法の衣が見え隠れしているので、流石に守備面を無視した変装はしてこなかったようだ。まぁ当たり前か……。

 それと武器は、修行の時にも愛用している慈愛の杖であった。

 アーシャさんはレアとかの回復魔法が使えないので、この慈愛の杖はある意味、ピッタリの武器である。

 ちなみに俺の装備はレイスさん達と交渉した時とほぼ同じだ。

 この衣を着てると頭が冴えるので、結構お気に入りになったアイテムである。


   *


 話は変わるが、風の冠は今、俺がフォカールの呪文を使って預かっているところだ。

 なぜ俺が持っているのかというと、アーシャさん曰く、失くすといけないからである。要は用心の為であった。

 他にも、人に見せたくないというのもあるに違いない。

 今のところ、アーシャさんにとっては唯一無二の宝物だし、こうなるのも仕方ないだろう。

 そして俺は本格的に、アーシャさんの道具箱になりつつあるのであった。

 歩く物置と思われてそうである。とほほ……。

 悲しくなってくるので話を戻そう。


   *


 俺がアーシャさんの服装を見ていると、丁度そこで、アーシャさんと目が合った。

 アーシャさんは首を傾げる。


「今、私をジッと見てましたけど、何か気になる事でもおありですか?」


 俺はとりあえず、適当に答えておいた。


「いえ、別に深い意味はないですよ。ただ、アーシャさんはどんな格好しても可愛いなと思って」


 すると見る見るうちに、アーシャさんの頬は赤く染まっていった。

 そして、慌てて顔を背けたのである。


「と、と、突然、何を言うんですかッ。そ、そんな事……今は関係ないじゃないですかッ。ふ、不謹慎です」


 かなり照れてるみたいだ。

 というか、軽く褒めただけなのに、まさかここまで取り乱すとは……。

 まぁこういうところも可愛いんだけどね。 

 でも機嫌を損ねられると後が怖いので、ちゃんとフォローはしておこう。


「すいません、アーシャさん。気を悪くしたのなら謝ります。今の言葉は忘れてください」


 アーシャさんは恥ずかしそうに、上目使いで俺を見る。


「いや……その……ベ、別に、謝らなくてもいいですわ。でも、こんな時に、そんな事を言わないでください。もっと他の時に……」


 確かに、アーシャさんの言うとおりであった。

 今はヴァロムさんの任務を遂行するのが、一番の優先事項なのである。


「確かに……そうですね。アーシャさんの言うとおりです。気を引き締めないといけませんね」

「そ、そうですよ」

「ン?」


 するとそこで、広場の横にある道沿いに、1台の馬車が停まったのである。

 御者はレイスさんであった。

 着いたようだ。


「どうやら、レイスさん達が来たみたいですよ」

「そのようです。それにしても……昨日、あの馬車を購入した時、かなり質素に見えましたけど、やはり引く馬がいると様になりますね」


 アーシャさんはそう言うと、感心したようにマジマジと馬車を眺めた。

 そう……実はこの馬車、昨日購入した物なのである。

 レイスさん達は2頭の馬を所有してたので、それならと考え、思い切って購入する事にしたのだ。

 一応、人を乗せる為の馬車ではあるが、一番安い質素なやつにしたので、当然、飾りっ気は全くない。

 とはいえ、乗車定員も御者を入れて8名ほどは乗れるので、この国では中型の部類に入る馬車なのである。

 しかも、屋根と日よけのシェードがついているので、雨や日差しは何とか防げる仕様なのだ。

 ちなみに馬車の代金は俺が払ったのだが、こんな質素な物でも1000ゴルであった。

 これを安いと見るか高いと見るかは人によって判断の分かれるところだが、俺は旅の為の出費と割り切って購入したのである。

 まぁこればかりは仕方ない。

 必要な物は必要だからだ。


(俺は馬に乗れないから、馬車はやっぱり必須だな。徒歩で王都までは流石に勘弁したいし……)


 レイスさん達は馬車から降り、俺達の方へとやってきた。

 3人共、準備万端のようで、意気揚々としている。

 鋼鉄の鎧と鉄の盾、それから鋼鉄の剣を装備するレイスさんとシェーラさんは、戦士そのものという出で立ちであった。

 この2人の装備を見ていると、やはり、重装備ができる前衛戦力は外せないなと俺は感じた。

 そして、この頼もしい2人に守られるように、魔法の衣に身を包むイアちゃんの姿があったのだ。

 これで全員集合である。

 

「待たせてすまない、コタローさんにアーシャさん。馬車の調整と荷物の積み込みに少し時間が掛かってしまった」


 レイスさんが頭を下げた。


「俺達もさっき来たところですから、そんなに待ってませんよ。気にしないでください」


 続いてシェーラさんとイアちゃんが前に来る。


「コタローさんにアーシャちゃん、おはよう」

「おはようございます、コタローさんにアーシャさん」

「おはよう、シェーラさんにイアちゃん」

「おはようございます。その様子ですと、皆さん、昨晩は良く眠れたみたいですね」

「そうなのよ。だから私、朝から調子いいわよ。アーシャちゃん」


 シェーラさんはニコっと微笑み、任せなさいとばかりにガッツポーズをした。

 この様子だと、心身充実しているみたいである。頼もしい限りだ。


「さて、それじゃあ出発する前に、向こう見えるイシュラナ神殿で、旅の安全をお祈りしてから行きましょうか」

「ああ、構わんよ。我々は女神イシュラナの信者ではないが、この国で信仰する神だ。安全の祈願はしておこう」


 その後、俺達はイシュラナ神殿で旅の安全祈願をし、北に向かって馬車を走らせたのである。

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