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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、王都への道

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Lv.40 師の手紙

   [Ⅰ]



 俺はアーシャさんの迫力にたじろぎ、彼女のガルテア行きを認めてしまった。

 その後、少し打ち合わせをし、俺達は午後にもう一度会うという約束をして、この場は一旦お開きとなったのである。

 洞穴の外に出たところで、アーシャさんは風の冠を被り、俺に振り返った。


「では、コタローさん。お父様をお見送りした後に、またお邪魔しますから、それまでに準備しておいて下さいね」

「了解です。それではお気を付けてお帰り下さい」

「それじゃ、また後で」


 そして、アーシャさんは白い光に包まれ、マルディラントへと帰って行ったのだ。

 俺はその光景を見ながら、大きく溜め息を吐いた。


「はぁ……何か、えらい面倒臭い展開になってきたなぁ。まさか、アーシャさんがここまで強引だとは……」


 そこで、首に掛けたソーンのオッサンが話しかけてきた。


「コタローよ、疲れているところ悪いが、ヴァロム殿から言伝がある」

「言伝……まだ何かあるのか?」


 俺は少しゲンナリとした。


「ヴァロム殿はこう言っていた。10日経っても帰らない場合は、壁際の机の上にある黒い箱を開くように言っておいてくれ……とな」

「黒い箱? ああ、あの四角い箱の事か。でもあれはヴァロムさんの貴重品入れだから、鍵が掛かっていた気がするぞ」

「鍵は机の天板の裏に貼り付けてあると言っていた。だからそこを調べてみろ」

「天板の裏ね……」


 というわけで、俺は早速調べてみる事にした。

 洞穴の中に戻った俺は、机の天板の裏側を確認してみた。

 すると、オッサンが言った通り、天板の裏には小さな黒い鍵が貼り付けてあった。

 俺はその鍵を使い、黒い箱を解錠する。

 そして、箱の上蓋を開いた。

 箱の中には、折り畳んであるベージュ色の紙と革製の茶色い巾着袋、それと、ネックレス状になった金色のメダルのような物が入っていた。

 俺は3つの品を暫し眺めると、まず紙を机の上に広げた。紙は2枚あった。

 するとそこには、この国の文字でこう書かれていたのだ。


   *


 ――コタローへ


 今、お主がこれを読んでいるという事は、儂は王都から帰ってくることが出来なかったという事だろう。

 いや、もしかすると、ソレス殿下経由で、アーシャ様から儂の身に何かあった事を聞いたからかも知れない。

 まぁどちらでも構わぬが、心配はしなくても良い。

 これは全て想定していた事でもあるのだ。

 儂はこれから、王都で大きな波紋を起こそうと思っている。

 この国……いや、この世界の在り方をも変えるほどの大きな波紋をの。

 凶悪な魔物の襲来によって滅亡した国や、イシュマリアのようにそうなりつつある国。程度の差はあれ、今の世は確実に悪い方向に傾いている。

 そう遠くない将来、この世界が魔の世界へと変わるかも知れないくらいにの。

 儂はその流れを変えようと思っておる。いや、変えなければならぬのだ。

 しかし、流れを変えるには、お主の助けがどうしても必要だ。

 そこでお主に頼みがある。

 マール地方の北に位置する山岳地帯に、ガルテナと呼ばれる村があるのだが、そこへ至急向かってほしい。

 ガルテナにはリジャールという名の年経た男が住んでいる。

 この男は儂の古い友人でな、先代のイシュマリア王に仕えていた魔法銀の錬成技師でもある男だ。

 儂はリジャールに、とある魔道具を作るよう依頼をした。

 お主は儂に変わり、リジャールからソレを受け取ってきてもらいたいのだ。

 この手紙と一緒に入れておいたオルドラン家の紋章を見せれば、リジャールは儂の使いじゃと信じるだろう。

 そして、それを受け取り次第、お主には王都へと向かってもらいたい。


 以上が今後の大まかな流れだが、長旅には当然お金がいる。

 箱の中には、この手紙と紋章の他に、茶色い皮袋がある筈だ。

 その中に路銀として5000ゴルを用意しておいた。

 これを旅に役立ててもらいたい。

 ちなみに、このお金はお主の物として自由に使ってもらって結構だ。

 だから、気兼ねなんぞせず、遠慮なく使ってくれ。


 さて、そういうわけで長い旅をさせる事になるが、今のお主ならば、必ずや乗り越えられると儂は信じている。

 もし判断に迷うような事態に遭遇した時は、ソーンさんに相談すると良い。必ずや力になってくれるはずじゃ。

 旅の仲間が必要ならば、マルディラントにあるエレンディアの酒場を訪ねてみるがよい。

 あの酒場には、冒険をする者や魔物の討伐依頼を受ける者等、旅慣れた者達が沢山集まってくるからの。

 王都に向かう者を探せば、旅に同行してくれる者が、もしかするとおるやもしれぬ。

 まぁ見つかるかどうかは、お主の交渉次第だがな。

 しかし、エレンディアの酒場で仲間を募る場合、同行する者には、儂の事や旅の目的は内密にしておいてくれ。

 これはあくまでも、お主と儂だけの秘密だからの。

 ではコタローよ。そういうわけで苦労を掛けるが、よろしく頼む。



 1枚目はこんな感じであった。


(エレンディアの酒場か……アーシャさんも言ってたし、行ってみるか)


 俺は続いて2枚目に目を通した。


   *


 儂はずっと、コタローに話しておきたい事があったが、お主が修行中の身であったが故、余計な雑念を入れないよう儂は黙っておった。

 しかし、もうよかろう。

 機は熟したように思うので、それをここに書かせてもらうとしよう。

 こんな手紙という形でそれを言うのは気がひけるが、そこはどうか大目に見てほしい。

 では始めよう。


 思い返せば、お主と初めて出会ったのはジュランの月であったか……。

 今でもあの時の事は鮮明に覚えている。

 最初、ベルナ峡谷で気を失っているお主を見つけた時は、てっきり魔物に襲われたのかと思っておった。

 そして、目を覚ましてから奇妙な事を口走るお主を見た儂は、襲われた時の恐怖心により、頭の中が混乱しているのだろうと考えていたのだ。

 だがその後、お主と会話を重ねるにつれ、なぜか分からないが、それが本当の事ではないかと最近では思うようになってきた。

 お主は不思議な男である。

 この国の常識等は全く分からぬのに、儂でも初めて聞くような事を沢山知っておる。

 チキュウ・ニホン・トーキョー・ジドウシャ・パソコン・コンビニ……そして、龍の神の幻想譚とかいう御伽噺じゃったか……。

 他にもまだあったが、本当にあるのならば、ぜひ見てみたい物ばかりだ。

 しかし……儂は時々考えるのだよ。

 最初はアマツの民か、もしくはその血を引く者かとも思うたが、実は、お主はこの世界の住人ではなく、まったく別の世界の住人なのではないかとな。

 そして、こうも考えるのじゃ。

 この世界を取り巻く大いなる存在によって、お主は儂の元に導かれたのではないかと。

 まったくもって、馬鹿馬鹿しい話じゃがの……。

 まぁいずれにせよ、お主が一体どこからやってきたのかという疑問は、今も尚、気になるところではある。が……儂は詮索するような事はしない。

 いつの日か、お主自身が語ってくれると儂は思っておるからの。

 それまで気長に待つつもりじゃわい。

 さて、では次じゃ。


 お主が初めての洗礼を行った時、王位継承候補者しか使えぬジニアスをお主が修得したのを見て、儂は不思議と運命的な巡りあわせのようなモノを感じた。

 それだけではない。儂は直感的に、お主を鍛え上げて一人前にする事が、自分に与えられた使命のようにも感じたのじゃ。

 だから儂は、魔法使いとしての真髄をお主に修得させようと、普通の術者ならば逃げ出すであろう程の厳しい修練をこれまで課してきた。が、実を言うと、耐えられるかどうかが、少々不安ではあった。

 しかし、お主はそれらを見事に克服し、乗り越えてくれた。

 そして、今やお主はもう、一人前の魔法使いと呼んで差支えがないところにまで成長したのだ。

 儂もこれまで何人かの者を指導してきたが、わずか1年足らずで、ここまで成長したのはお主が初めてだ。素晴らしい魔法の才である。

 とはいっても、儂から見ればまだまだじゃから、これからも精進を続けねばならぬがな。

 しかし、驚かされたのはそれだけではない。

 以前、陰ながらこっそりと、お主が毎朝行っている魔物との実戦訓練を見させてもろうたのだが、儂は驚いたぞ。

 剣士のような戦い方をする魔法使いというのを初めて見たのでな。面白い発想する奴じゃ。

 まだまだ荒削りではあったが、光るモノがある戦い方であった。

 中々、興味深い物を見させてもらったぞい。

 あれを見て、これからお主がどんな風に成長していくのか、儂も見てみたいと思ったわい。

 しかも、お主は妙に頭も回る。

 物事を上辺だけで判断せず、その中身や裏側を冷静に読み解こうとする。

 少し慎重過ぎるきらいはあるが、儂とよく似た物の考え方をする奴じゃ。

 だからであろうか。

 お主は弟子というよりも、相談しやすい親友の様に儂は考えておるのだよ。

 よって今回の事も、信頼のおける友人としてお主に頼んでおるつもりじゃ。

 そういうわけで回りくどくなったが、改めて言おう。


 我が友コタローよ、今回の件をよろしくお願いしたい。


 つまり、これを言いたかっただけなのじゃ。

 面と向かっては儂も恥ずかしいのでな。

 ともかくじゃ、よろしく頼んだぞい。

 

    そなたの友人であるヴァロム・サリュナード・オルドランより――


(友人より……か)


 この手紙を見て、今までヴァロムさんが俺の事をどう考えていたのかが、少し分かった気がした。

 そして思ったのである。あの時、俺を保護してくれたのがヴァロムさんで本当によかったと。

 だが、ここにも書かれている通り、ヴァロムさんは俺が異世界から来たのではないかと、漠然とだが感じているみたいである。

 でも、あえて突っ込まないところがヴァロムさんらしい心遣いであった。

 いつの日か、ヴァロムさんにだけは本当の事を話さないといけないな。

 俺はこの手紙を読んで、そう考えたのであった。


   *


 話は変わるが、ここに書かれているアマツの民というのは、遥か東方に住むと言われる民族の事らしい。

 ヴァロムさんから聞いた話によると、東方には空に浮かぶ島々があり、それら天の群島の事をアマツクニと呼んでいるそうである。

 つまり、そこの住民がアマツの民というわけだ。

 俺はこの話を聞いた時、凄く親近感がわいたのは言うまでもない。

 なぜなら、かなり日本チックな感じの名前だからである。

 一瞬、日本神話に出てくる天津神と関係があるのだろうかと思ったくらいだ。

 それに加え、ヴァロムさんが俺の事をアマツの民ではないかと考えた事からも、この民族が日本人みたいな風貌だと、容易に想像できるのもある。

 なので、凄く気になる上に、親しみも湧いてきたのであった。

 そして俺は考えたのである。

 もしかすると、このアマツクニというのは、ゲームに出てきたジパング的な立ち位置の国なのかもしれないと。

 直接見たわけではないので何とも言えないが、そんな気がしてならない。

 だが、遠方ということもあり、このイシュマリアとはあまり交流が無いとヴァロムさんは言っていた。

 とはいえ、アマツクニ出身の旅人も多少は行き来するので、そういった人達との交流はあるのだそうだ。

 空に浮かぶアマツクニとはどんな所なのかはわからないが、俺にとっては非常に気になる場所なのであった。

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