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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第一章 前略、RPG世界より

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Lv.32 魔物現る

   [Ⅰ]



 来た道を戻り、神殿を出た俺達は、その先に続く石階段を降りてゆく。

 そして、下まで降りたところで、俺達は待機させていた馬と馬車に乗り、撤収を始めた。

 だがしかし……イデア遺跡群の半ば辺りまで来た所で、前方を進む守護隊の方々から、大きな声が聞こえてきたのである。


「ティレス様にオルドラン様! 前方、北東の空に、見た事もない魔物の群れが現れましたッ。かなりの移動速度です。このままでは戦闘は避けれません!」


 俺はその声を聞き、馬車の窓から空を見上げる。

 と、次の瞬間、俺は思わず息を飲んだのであった。


(イ!? ア、アイツ等は!?)


 なんとそこにいたのは、ゲームでも中盤の終わりに出てくるような、ちょっと面倒な類の魔物だったのである。

 この遺跡にいる魔物よりも、遥かに強い敵であった。

 俺は思わず、魔物の名前を口にした。


「あ、あれは……バルピュロスとガーゴイル、それとドラゴンライダーか?」


 まだ遠くなのでハッキリと断言はできないが、とにかく、そんな感じの魔物の群れが見えたのだ。

 ティレスさんは魔物を確認すると、大声で守護隊の者達に指示を出した。


「総員、速やかに戦闘態勢に入れ! 敵は上空より攻めてくる。近接武器の装備者達は陣形の守りを固め、魔法を扱える者は魔法での迎撃に切り替えるのだ。そして弓を持つ者は、すぐに矢での迎撃態勢に入れ!」

「ハッ!」


 守護隊の意気揚々とした返事が聞こえてきた。

 どうやら、このまま戦闘に突入しそうな感じだ。

 だが俺は今、自分よりも遥かに強い魔物を見て、少し怯えていたのである。


(マズイかも知れん……敵はかなり強いぞ)


 外が慌ただしくなってくる中、俺は近づいてくる魔物を凝視し続けた。

 すると次第に、群れの構成がはっきりとわかるようになってきた。

 空にいるのは、ドラゴンライダーみたいなのが1体、バルピュロスのような翼竜タイプの魔物が6体、ガーゴイルみたいな悪魔タイプが6体の計13体の魔物集団であった。

 それとどうやら、ドラゴンライダーのような魔物がリーダー的な存在のようだ。

 群れのど真ん中で一際存在感を発している。

 まず間違いないだろう。


(こいつ等がゲーム通りの強さだとしたら、かなり厄介だぞ……守護隊の人達は、どうやってこの難敵と戦うつもりだ。対応を間違えると大きな被害がでる……ン?)


 と、その時である。

 魔物達は、こちらの進行方向へ先回りするかのように、進路を変えたのだ。

 恐らく、俺達の足を止める為に、わざわざ正面から襲うつもりなのだろう。

 こんな風に襲うという事は、この後、第2、第3の魔物達が来るのかもしれない。


(もしかして、これ以上に厄介な魔物が控えてるんじゃないだろうな。これが先発隊だとすると、かなり不味いぞ……ン?)


 と、そこで、ヴァロムさんが俺の肩にポンと手を乗せた。


「コタローよ……今、何か名前のようなものを言っておったが、空にいるのもアレに出てきた魔物なのか?」


 俺は頷いた。


「はい、アレに出てきた気がします。俺も記憶が曖昧なんで、あまり自信は無いんですが……」

「ほう……で、どんな魔物なのだ?」


 馬車にはティレスさんとアーシャさんしかいなかったが、聞かれると色々不味いので、俺はヴァロムさんに耳を打ちした。


「一応、あの御伽噺ではですが……あそこにいる青い翼竜みたいなのはバルピュロスといって、かなり力がある上に、素早い物理攻撃をしてくる強敵です。ですが魔法は使えなかった気がします。それと悪魔みたいなのは、攻撃力もさる事ながら、ウィザレスという魔法を封じる呪文が得意だった気がするんで、魔法使いにとってはある意味天敵ですね。ただ2体とも共通してる事があって、パサートという睡眠魔法が苦手だったような気がするんです。まぁ俺も記憶に曖昧な部分があるんで、そこまで自信は無いんですが……」


 ヴァロムさんは顎に手を当て、興味深そうに聞いていた。


「ほうほう、なるほどのぅ……パサートに弱い可能性がありという事か。で、もう1体の竜に跨っておるのは何なんじゃ?」

「あれは多分、ドラゴンライダーという魔物で、御伽噺上では、かなり強い魔物だった気がします。魔法は使いませんが、竜が吐く炎と、それに跨る魔物の騎士による双方の攻撃が、かなり厄介な感じに記述されてました」

「竜の吐く炎か……それは厄介じゃな」


 そう、俺もゲームでは結構苦労した魔物であった。


「ええ……しかもその上、魔法にも結構な耐性を持ってるらしくて、弱い魔法では話にならないような事が書かれておりました。まぁ俺の記憶が確かならですが……」

「弱い魔法は話にならぬ……か。ふむふむ、なるほどのぅ」


 ヴァロムさんはそう言うと、目を閉じて無言になった。

 多分、今の話を整理してるのだろう。

 程なくして、ヴァロムさんはティレスさんに視線を向けた。


「少しよろしいかな、ティレス様」

「はい、何でございましょうか?」

「1つ訊きたいのじゃが、守護隊の者でパサートを使える者はおるのか?」


 ティレスさんは頭を振る。


「いえ、今いる守護隊の中にパサートを使える者はおりませんね。今回連れてきた半数は、魔法戦士型の者達ではありますが、火炎や冷気系の魔法が得意な者と、回復魔法が得意な者だけです。このイデア遺跡群に出没する魔物を考慮しましたところ、補助的な戦士は必要ないと判断しましたので」

「そうか……。という事は、使えるのは儂だけという事じゃな」


 ヴァロムさんはそこで目を細め、真剣な表情になった。

 この表情を見る限り、ヴァロムさんは何かを始めるつもりなのだろう。 


「ティレス様……一旦、守護隊の者達に止まるよう、指示を出してくれぬか」

「えっ? それはどういう……」

「敵は空じゃ。地の利は向こうにある。おまけに奴等は、我等の行く手を阻む為に先回りしようとしておるからの。そのような場合は、移動しながらでは応手は難しかろう。ここは敵の思惑通り、止まって迎え撃った方が良いと思うのだが、どうかの?」

「何か策があるのですか?」


 ティレスさんは怪訝な表情でヴァロムさんを見た。


「なに、策というほどのモノではない。とっとと終わらせて、帰ろうと思っているだけじゃわい」

 するとティレスさんは、笑みを浮かべた。

「という事は、オルドラン様も手を貸してくれるという事ですね。わかりました。ここら辺で止まり、迎え撃つことにしましょう」

「うむ」


 そしてティレスさんは、大きな声で告げたのである。


「全隊員に告ぐ! 馬を止めるのだ! 止まった状態で迎え撃つぞッ!」

「ハッ!」


 その言葉を皮切りに、馬はスピードを落としていった。

 馬が止まったところで、ヴァロムさんは腰を上げた。


「ではティレス様、儂が奴等の相手をしよう。もし討ち漏らしたのがいたら、守護隊の方で始末してもらいたい」


 ティレスさんは眉を寄せた。


「え? オルドラン様……1人で戦われるのですか?」

「ああ、そのつもりじゃ。まぁ儂もたまには働かんとの。カッカッカッ」


 ヴァロムさんは豪快に笑った。

 だがそれを聞いたティレスさんは、なんとも言えない微妙な表情をしていたのである。

 まぁそうなるのもわからんでもない。


「……わかりました。では、オルドラン様をすぐに補佐できるよう、守護隊を背後に待機させておきます」

「うむ。そうしておいてくだされ」


 ヴァロムさんはそこで、俺とアーシャさんを見た。


「コタローとアーシャ様は、この中で休んでおってくれればいい。後は儂が何とかしてやろう」

「でも……1人で大丈夫なんですか? あの魔物達、結構強いと思いますよ」


 俺は思った事を正直に言った。

 とてもではないが、幾ら熟練の魔法使いとはいえ、1人では厳しいように思えたからだ。

 しかもこのドラクエ世界は、かなりの呪文が失われているという現実がある。

 その為、奴等を一掃できるほどの強力な攻撃魔法があるのかどうかも、怪しいのである。

 だがしかし……悲観的に思う俺とは対照的に、ヴァロムさんは非常に楽観的な表情をしていた。

 おまけに、笑みすら浮かべているくらいだ。


(1人で、あの魔物を相手にどう戦うつもりなのだろう……ここまで余裕の表情という事は、何か秘策でもあるのか?)


 ふとそんな事を考えていると、ヴァロムさんは俺に微笑んだ。


「まぁこれも勉強じゃ、コタロー。お主は、まだまだ学ばねばならん事が沢山ある。とりあえず、安全なところで、儂の戦い方を見学しておれ」

「……本当に大丈夫なんですか?」


 念の為、俺はもう一度確認をした。

 ヴァロムさんは頷く。


「心配は無用じゃ。ではティレス様、行こうかの」

「はい、オルドラン様」――

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