Lv.30 精霊王の贈り物
[Ⅰ]
俺とアーシャさんは全ての箱を開けると、中を確認していった。
すると箱の中からは、見た事もないような武具や道具が沢山出てきたのである。
その為、俺達はその都度、ソーンのオッサンに確認してもらいながら、箱から取り出した武具や道具類を床に並べていった。
とはいっても、オッサン自体も知らない道具が幾つかあったが……。
まぁそれはともかく、一応、宝箱の中身は以下のような感じであった。
グリフィンの翼×10枚
イグドラジルの葉芽×1枚
ウルズの雫×1個
祈念の指輪×3個
よく分からん指輪×1個
氷の剣×1振り
炎の大剣×1振り
名称不明の杖×1本
炎の盾×1個
星銀の盾×1個
精霊の鎧×1着
叡智の衣×1着
天女の羽衣×1着
風の冠×1個
よく分からん腕輪×1個
命の宝珠×4個
古びた地図×1枚
よく分からない黄色い石の球×1個
フォカールの魔法書×1冊
なんというか、中二病まっしぐらのネーミングアイテムである。
まぁそれはさておき、箱の中から出して広げて見ると、結構な数のアイテムが入ってたというのが、よく分かるところだ。
武器防具に関しては、大きく数も多いので、余計にそういう風に見える。
しかも、ゲームだと終盤で手に入りそうなアイテムが多いので、凄くありがたい品々であった。
だが……こうやって中身を広げた事で、1つ問題が発生したのである。
それは勿論、俺とアーシャさんだけで、これだけのモノを一度に持っていくのは難しいという事だ。
嬉しい悲鳴ではあるが、今はちょっと頭の痛い懸念事項であった。
「しかし、沢山あるなぁ。こんだけあると、持ってくのが大変だ……」
「ですね。どうしましょう……。これだけの古代魔法文明の遺物は、あまり人に見せたくはありませんし……」
アーシャさんも少し困り顔であった。
「お主達次第だが、簡単に解決できる方法があるぞ」
「は? 何言ってんだよ、オッサン。どう考えても、簡単に解決できそうな量には見えんぞ」
「フン……貴様のような青二才の思考じゃ、そうなるな」
(クッ、この野郎……)
今は、こんな事で熱くなってる場合じゃない。
ここは適当に流しとこう。
「はいはい。じゃあ、どう簡単なのか教えてくれませんかね。自称、心の広い、ソーンの鏡様」
「フン。口の減らぬ奴だ。まぁいい、教えてやろう。だが、1つ条件があってな。目覚めの洗礼によって、魔法を扱えるようになった者でないと、この方法は駄目だ。お主達、魔法は使えるのか?」
それなら問題なさそうだ。
「ああ、使えるよ」
「大丈夫です、ソーン様。私達は未熟ではありますが、魔法は扱えますので」
「なら話は簡単だ。今、箱から出した物の中に、フォカールの魔法書があった筈だ。それを使えばいい」
「フォカールの魔法書? ああ、さっきアンタが言ってた巻物みたいなやつだろ?」
俺はそう言って、床に置かれた茶色い巻物に目を向けた。
「恐らく、これの事ですね。どうぞ、コタローさん」
アーシャさんが、その巻物を手に取り、俺へと差し出した。
俺はそれを受け取り、オッサンに確認する。
「フォカールの魔法書って、これの事だよな?」
「ああ、それだ。まずは紐を解き、その魔法書を床に広げろ」
俺は言われた通りに、巻物を床に広げる。
すると、A3用紙ほどのサイズになった。
そこには魔法陣を思わせる奇妙な紋様が上に1つ描かれており、その下に、古代リュビスト文字の羅列が数行に渡って記載されていた。
「さぁ魔法書とやらを広げたぞ。で、これからどうするんだ?」
「後は簡単だ。上に描いてある魔法陣に触れて魔力を籠め、そこに書かれている呪文を唱えればよい。今のお主に、フォカールを扱える力量があるのならば、それで魔法は得られよう」
一応、理解はできたが、大きな障害があるので、俺はそれを告げる事にした。
「あのさ……1つ問題があってな。俺達、この文字読めないんだよね」
「……」
俺達の間にシーンとした沈黙の時が訪れる。
暫くすると、溜め息混じりのオッサンの声が聞こえてきた。
「フゥ……仕方ない。我が文字を読んでやるから、お主はそれに続いて唱えるがよい」
流石に悪いと思ったので、俺は高校球児ばりに頭を下げておいた。
「スンマセンした。お願いシャッス……」
「ではゆくぞ」
というわけで俺は、オッサンに続いて呪文の詠唱を始めたのである。
「ナ・カイナ……キオノーモ・ナリン・ベニカ……」
長い呪文であったが、俺はオッサンの後に続いて慎重に唱えていった。
そして、最後の呪文を唱え終えた、その時。
「うぉッ!?」
なんと、魔法書が赤く発光し、燃え尽きたかのように、一瞬にして灰になったのだ。
それだけではない。
俺の中に、何かが入り込んできたかのような感じも、同時に現れたのであった。
「なんだよ、今の感覚は……。それに、魔法書が灰になったじゃないか」
アーシャさんも目を見開き、驚きの声を上げた。
「ど、どういう事ですか! 何で魔法書が灰に……」
「上手くいったようだな。お主はもうフォカールを修得できた筈だ。心を穏やかにし、己の中を探してみるがよい」
「はぁ? 今のでもう修得できたのかよ。ちょっと待ってくれ、確認してみる」
俺はそこで目を閉じる。
そして、以前と同じように、呪文が刻まれているような感覚があるかどうかを探ってみた。
すると、ファーラとレアとジニアスの他に、フォカールという名の呪文が、俺の中で刻み込まれているのが認識できたのである。
なかなか、凝った魔法習得法であった。
「へぇ……なるほどね。よくわからんけど、ちゃんとフォカールを認識できるようになってるよ。で、どうするんだ?」
「では次だが、どちらの手でもいいから、まず、人差し指と中指だけを伸ばし、魔力の流れをその指先まで作れ。それからフォカールと唱えよ」
「おう、わかった」
俺は言われた通り、右手の人差し指と中指だけ伸ばして、魔力を向かわせ、呪文を唱えた。
「フォカール」
その直後、伸ばした2本の指先に、紫色の強い光が現れたのである。
「おお! よく分からんけど、指先に光が現れたぞ」
「なら後は簡単だ。その指先を真下に向かって振り下ろせばいい」
「え、それだけ?」
「ああ、それだけだ。やればわかる。さぁ、やれ」
いまいち要領を得ないが、俺は言われた通りにその指を振り下ろした。
すると次の瞬間、なんと、空間に切れ目が現れたのだ。
「うわ、なんだよこれ……。空間が裂けたじゃないか!」
「ど、どうなってるんですか!?」
アーシャさんも驚きを隠せないのか、大きく目を見開いていた。
「このフォカールはな、空間に物を保管する為の魔法なのだよ。だから、その切れ目の中に物を仕舞えばよい。空間を閉じる時は、逆に下から上へもう一度振り上げるだけだ。どうだ、簡単だろう? しかも、どこででも物を出し入れできる便利な魔法だ。有効に使え」
「マ、マジかよ……」
想定外の魔法であったので、俺は素で驚いていた。
要は、空間にジッパーをつけるような魔法なのだろう
とはいえ、かなり使えそうな魔法である。
これは良い魔法を手に入れたようだ。
俺がフォカールに感心していると、アーシャさんが慌ててオッサンに迫った。
「ソーン様ッ、魔法書が灰になりましたけど、この魔法は、今の魔法書がないと覚えられないのですかッ? わ、私には覚えることが出来ないのですか?」
「確か、魔法書は1つしかなかった筈……残念だが、そうなるな」
「そんなぁ……聞いてないですよ! こんな事なら、私がやればよかったです……」
アーシャさんは悲しい表情で、ガクンと肩を落とした。
見た感じだと、相当落ち込んでいるみたいだ。
俺もまさか、魔法書が灰になるとは思わなかったので、こればかりは少し悪い気がした。
しかし、魔法書が無いので、今更どうしようもないのである。
「それはそうとお前達、この床にある武具や道具をそろそろ片づけたらどうだ?」
「そういえば、それが目的だったな。魔法の凄さに驚いて、それを忘れてたよ」
「はぁ……そうですわね。片付けて、もう戻りましょう。疲れましたわ。フォカール……私としたことが、不覚です」
俺達はその後、空間へとアイテムを収納していった。
だがアーシャさんはフォカールが心残りなのか、終始、残念そうにしていた。
そして、俺を羨ましそうに見ていたのである。
ごめんよ、アーシャさん。
でも、悪いのは肝心な事を言わなかったソーンのオッサンだからね。




