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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第一章 前略、RPG世界より

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Lv.10 初の旅

   [Ⅰ]



 翌日の早朝。

 日が昇り始めた頃に、俺とヴァロムさんは、イシュマリア国南部に位置するマール地方最大の商業都市・マルディラントへと馬車で向かった。

 御者は勿論ヴァロムさんが務めており、俺は後ろの荷台に座って後方の監視をする様に言われている。

 要するに、魔物が近づいてきたら報告しろという事だ。

 そして監視をする以上、俺も魔物に襲われる危険があるので、ヴァロムさんから一応武器を用意してもらった。

 その名もなんと……木の棒。

 これを渡された時、表情には出さなかったが、正直、絶望的にガッカリしたのは言うまでもない。

 せめて「青銅の剣」くらいは用意して欲しかった。

 しかも、この木の棒……実は物干し竿代わりにヴァロムさんが使っていたやつらしいのだ。

 これを聞いた時、俺はもう絶句であった。

 おまけに「これしかなかったわい」と笑いながら渡してきたのである。もはやワザとやっているとしか思えない所業であった。

 恐らく、ガムルクラスの魔物をコレで攻撃したところで、与えられるダメージは蚊が刺した程度だろう。

 いやもしかすると、ダメージゼロという超展開も期待できるかもしれない。

 ハッキリ言って、心許ない武具なのである。

 俺もヴァロムさんに他の武器は無いかと、一応、聞いてはみた。が、即答で「無い」という答えが返ってきたのであった。

 とまぁそういうわけなのだ。もうなにもいうまい……。

 さて、では次に、移動手段の馬車についても触れておこう。

 まず簡単に言えば、モロに荷馬車といった感じの代物で、俺が座るこの荷台も飾りっ気などは全くない。

 しかも、糞暑い日差しが直に降り注いでくる、オシャレなオープンカー仕様となっているのだ。

 直射日光を受け続けて熱中症にならないか少し不安であったが、今日は風が多少あり、割と涼しい日であった。

 なので、熱中症になるほどの暑さではないのが唯一の救いだ。

 また、俺の座るこの荷台はほぼ木製で、金属のパーツ類は、繋ぎ目部分や強度が必要なところ以外は使われて無いようである。

 その他にも、この荷馬車は長い間使っているのか、所々に色褪せた部分が散見される外見なのであった。

 というわけで、見た目を分かりやすく言うと、古びたリヤカーを馬で引いてる感じだろうか。

 とにかく、そんな感じの実用重視な荷馬車なのである。

 だから、乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。 

 ガタガタという音と共に、縦横に揺れる振動が伝わってくるので、俺自身、最初の30分程は乗っていて気分が悪くなったものだ。

 しかし、今はこれ以上の移動手段は期待できないので、ここは我慢するしかないのである。


   *


 話は変わるが、出発してからかなり時間が経過しているにも拘わらず、俺達は今のところ、魔物には遭遇していない。

 いや、正確に言うと魔物の姿を発見する事はあったのだが、俺達に近づいて来ようとしないのである。

 ちなみに、それらの魔物の中には、蝙蝠みたいな翼を生やした子供の悪魔みたいなチャイルドデビルや、羊みたいな魔物の姿もあった。

 多分、羊みたいなやつは、俺の記憶が確かならマッドアリエスとかいう名前だったような気がする。

 それと他にもいたが、遠くて判別できない魔物もあったので、発見するだけなら何回もしていたのだ。が、しかし……なぜか知らないが、魔物達は俺達を避けるかのように、こちらには進んでこないのであった。

 それが不思議だったので、馬の休憩の時、俺はヴァロムさんに訊いてみた。

 するとヴァロムさんが言うには、魔物が嫌がる芳香をこの荷馬車が発しているからとの事だった。

 しかも芳香は、この荷台に使われている木材から出ていると言っていたので、これには俺もびっくりしたのである。

 かなり貴重な木材を使って作られた凄い馬車らしく、見た目に惑わされてはいけない馬車のようだ。

 考えてみれば、デフォルトで聖水の効果が備わってる馬車なんて、ゲームに無かった逸品。

 見た目は武骨でセンスの欠片もないが、まさか、こんなスペシャル機能があったとは思わなかった。

 俺はそれらを聞いて、この馬車に対する評価が180度変わった。

 またそれと共に、道中の不安も少し和らいだのである。

 というわけで、話を戻そう。


   *


 俺達が移動を始めてから、もう既に6時間以上は経過していた。

 周囲は相変わらず、グランドキャニオンの様な赤い岩山だらけの所であったが、心なしか、岩山の高さも少しづつ低くなってきていた。

 また徐々にではあるが、芝生の様な緑の雑草が生い茂る部分や広葉樹の姿も、チラホラと確認できるようになってきた。

 これらの変化を見る限り、恐らく、このベルナ峡谷も、そろそろ終わりが近づいてきたという事なのだろう。

 それにしても、このベルナ峡谷というところは、かなり広大な地域のようである。

 しかも広大な上に、非常に険しい一面も持っている。

 ヴァロムさんが初日に、俺のような格好をした者が来る場所じゃないと言ってたが、この光景を見る限り、頷かざるをえまい。

 おまけに魔物が住んでいるとなれば、尚更である。

 あの時はよく分からなかったから適当に聞き流していたが、保護してくれたヴァロムさんに感謝しないといけないなぁと、俺はこれらの光景を見ながら思っていたのであった。


 ―― それから1時間後 ――


 ベルナ峡谷はもう完全に抜けており、周囲の景色も、無機質な岩や砂の大地から、草原の広がる青々とした大地へと変化していた。

 先程までは後方に確認できたベルナ峡谷の姿も、ほぼ見えなくなったところだ。


(さて……ベルナ峡谷は抜けたけど、このまま道なりに行けば、マルディラントなんかな)


 ふとそんな事を考えていると、ヴァロムさんの声が聞こえてきた。


「コータローよ。見えてきたぞ。あれがマルディラントじゃ」


 俺は前方に目を凝らす。

 すると、蜃気楼のように見えるぼやけた街の姿が、前方に小さく見えてきたのである。 

 あの位置を考えると、どうやら、ベルナ峡谷から少し離れた所に、マルディラントという街があるようだ。


「やっとですね。かなり長かったので、何もしてないのに疲れてしまいましたよ」

「カッカッカッ、まぁそうじゃろうな。荷台はかなり揺れるからの。とりあえず、後もう少しじゃ。我慢せい。ソレッ」


 意気揚々とヴァロムさんは手綱を振るう。

 そして、馬車はマルディラントへと、足を速めたのであった。

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