エピローグ
あれから村の中で色々と変化があった。
まずは領主のことなんだけど、今回の事件で死んだ人間はほとんどが冒険者だったので、そこまでお咎めはなかった。冒険者がダンジョンで死ぬのはよくあることだったからだ。一人だけいた使用人の男の家族には、領主の財産から見舞金が送られた。
領主はあの公開処刑がよほど堪えたらしく。以後はアイリさんに一切逆らわなくなった。現在、領地運営の方はほとんど奥さんが決めて、アイリさんが許可を出して、そして領主がサインするという流れができた。村人の声もちゃんと届いていて、良い政治になったと評判だ。
☆
「もう、行くんだ」
隠しきれない寂しさの表情が僕の顔に浮かんでる気がする。
「あんたもたまには王都へ観光に来なさいよ。陛下も喜ぶわ、もちろんアイリちゃんと一緒にね」
ばっちり決めたウィンクが眩い。ルシアも少しは寂しがるかと思ったら、全然そんなことはなかった。
僕達はそろってフロア村の馬車駅に来ていた。竜との死闘から二週間ほどが経過していた。
アイリさんがとにかく領地運営で忙しく、ダメ領主が溜め込んだ仕事に追われていたのだ。
ブラック家は代々フロアベット領の相談役だ。本来だったらアイリさんの兄上や父君がやるべきことなんだけど、二人は軍の仕事で忙しく、最高司令官の父君が軍を引退するまではまだアイリさんが相談役を務めることになるだろう。一応、新婚もといできちゃった婚をする娘を激務の環境下に置くのは悪いと思ったのか、父君もとい僕の義父は近々軍を退くようだ。
しかし、奥方の政治の才能はかなりのものらしく、僕らのゆったりした生活が復活する日も近いんだとか。
「こちら、サンドイッチと蜂蜜パイです。道すがらのお弁当にどうぞ」
「ありがとう、アイリちゃん。ここの生ハムと蜂蜜は最高だからね」
「いいな~僕も欲しい」
最近、アイリさんの料理を食べていない。僕の中のアイリさん成分が不足を示していた。
「お屋敷に戻ったら、ランチに食べましょう」
「えっ! ホント? 僕の分もあるんだ」
僕は嬉しくなって小躍りしてしまった。
そこへ、ガラガラと音を立てて、馬車がやってきた。
「遅くなりやした、聖女様」
ベンリさんだ。ちょっとの遅刻をまったく気にした様子もなく。いつもの営業スマイルだった。
「じゃあ……行くわ」
ルシアが馬車に乗る。ベンリさんの作った馬車は外見や内装も綺麗だった。赤を基調とした上品な車体を選りすぐりでよく鍛えられた駿馬が二頭立てで引いていた。
馬車に乗り込むルシアを目で追う。去り際にニッコリ笑ってこちらに手を振った。僕も手を振り返す。ふと自分の薬指の指輪が目に入った。
ルシアが視界から消えて、馬車が遠ざかっていく。僕はきちんとメイド服を着込んだアイリさんを見た。その左手の薬指にも指輪があった。ルシアからもらったお揃いの指輪だった。
言うまでもなく、僕らは結婚したのだ。これから二人でスローライフを生きていくんだ。
これにて完結いたしました。応援ありがとうございました。
よろしかったら同人誌(エッチなお話し)の方もよろしくお願いします。
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