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魔王を討伐したので年上メイドと辺境でスローライフします!  作者:


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17/30

畑作り

「わぁ……埃っぽいな」

「しばらく使うものがいなかったので、ほっぽらかしにされていたんでしょう、ユウキさまお気をつけて」


 やたら頑丈な鍵の付いた倉庫の中は薄暗く、少し土埃(つちぼこり)の臭いがした。午前の陽射しが倉庫に差し込んでいて、宙を舞う埃が見えた。

 一応、それなりには整理がされているようで、道具は用途ごとにまとめられていて、農機具も一式あった。


「これは草刈り用の鎌に、鍬もあるな、ツルハシと、くい打ち用のハンマーと……」

 と、色々な農機具たちがあった。


「これは魔法が切れていますね。使えないわけではありませんが、魔法がかかっていない鍬で畑を耕すのは非常に効率が悪いですね」

「そっか、魔法は掛け直せるの?」

「わたくしはクラフター系の魔法が得意ではありません、所詮壊し屋ですから」

 アイリさんは少ししょんぼりとそう言った。


 天使のような優しさに、人並み外れた薬草の知識を見せられ忘れていたけど、アイリさんは殺人魔法のスペシャリストだった。軍隊の中隊クラスを一撃の魔法で全滅させるほどのブラック家の人間だった。そんなアイリさんがなんで薬学なんかを学んで、こうやって僕付きのメイドなどをやっているのか、少し疑問に思ったが、この時僕はそれを聞かなかった。

 軍隊に入れば瞬く間に出世するだろうに、でも薬で子供を助けたり、僕に食べさせる料理を作っている時のアイリさんはなんだかとても生き生きしていて、まぶしかった。


「じゃあ、ベンリさんのところへ買い物にいきますか」

「そうですね。それが良いと思います」

 アイリさんはスカートの(すそ)についた砂埃を軽くはたく、僕はその所作に少し見惚れた。


 ☆


「へえ……勇者さまが農民のマネですか?」

 僕が勇者であることを知ってもベンリさんの僕に対する接し方は変わらなかった。一応詫びのようなものは入れてきたが、そんなことを気にしている様子は微塵(みじん)もなかった。僕もそれで一向にかまわないけどね。


「このアダマンタイト(こう)で作った鍬にいま魔法をかけましょう」

「アダマンタイト⁉ そんな高価なものはいいですよ」

「でも、圧倒的に使いやすいですぜ」


 アダマンタイトは一般に鋼鉄をさすが、ベンリさんが見せてくれた鍬はそこにさらに錬金術の秘薬を加えて、硬度と柔軟性を増したマジモノの最高級品だった。


「ユウキさま、お金の心配をする必要はありません」

「でも、家庭菜園にアダマンタイトの鍬なんて」

 僕はかぶりを振って言った。ベンリさんが少し困った顔をして僕を見ている。


「勇者の坊ちゃん、ちょっとこれ、持ってみてくだせえ」

 そう言って鍬を僕に渡した。


「あ……これは凄い」

 重さはちょうどよく、重心のバランスもよかった。僕は鍬の先端に触れてよく見てみた。


「これは良いアダマンタイトだな……」

 勇者パーティの騎士団長ギレンが、両刃のアダマンタイト製のロングソードを愛用していた。この鍬の鋼は彼が使っていた剣にも勝るとも劣らない逸品だった。


「これ、……ベンリさんが?」

「そうでさあ、鍛冶はアイテムショップの重要技術で若い時はヘパイストス協会に所属して腕を磨いたもんです」

 何気にこの人、凄い人だったんだ。僕は思わず感心してしまった。


「道具が良ければ作業もはかどりますし、モチベーションの維持にもつながりますよ。ユウキさまはもっと贅沢をしても良いのです」

 アイリさんが微笑みながら僕にそう言った。


「そっか……じゃあ、これにするよ」

「毎度ありっ! お買い上げのサービスで、作物作りをレクチャーしますわ」

「良いんですか?」

 そこまでしてもらうのは確かにありがたいけど、ちょっと悪い気もする。


「これ一個で一般家庭用魔法具が百個は買える計算でさぁ、今日一日潰しちまってもおつりがたんまりですわ」

「そっ……そうなんだ」

 もう、買うと決めてしまったからしょうがない。心置きなくベンリさんをこき使おうと僕は思った。


「作物は何にするんです? 坊ちゃん」

「すごく美味しい生ハムをもらったし、それに合う野菜と言えばやっぱりトマトかなぁ」

 トマトの旨味成分は肉類や乾燥魚なんかの味を一段と引き立てる。生ハムとトマト……うん、よだれが出てきた。


「トマトだったら良い種があるんでさぁ。農家兼錬金術師のババアがいて、恐ろしく性格が悪いんですが、腕は超一流で。首都フロアベットにいる妖怪みたいなババアでして、そのババアの作る野菜の種は、これまた美味い野菜ができるんでして」

 基本ニコニコと話をするベンリさんがババアという時だけ顔をしかめていた。

「錬金術師長のおばばさまの性格は悪くないですよ。ベンリさんが嫌われているだけです」

「ひ、姫ぇ」

 アイリさんに一刀両断されたベンリさんは、オヤツを抜かれた子供のようにげんなりした様子だった。


「と、まあここにあるのが、とんでもなく美味いトマトのできる種でして、こいつはサービスさせてもらいます。ホンじゃあ、ま、お屋敷の畑まで行きますかね」


 ☆


「わっ……凄いっ! 固まってる土が簡単に耕せる」

 アダマンタイト製の鍬の性能は素晴らしかった。固まってしまっていた土がみるみるほぐれる。


 最初に畑を見た時、僕はびっくりしてしまった。雑草がこれでもかというくらい生えていて、これは草を刈るだけで今日一日終わるんじゃないかと思った。

 しかし、ベンリさんが魔法を唱えると、草があっという間に(しお)れていき、土に返ってしまった。


「すっ……凄いですねベンリさん」

「あっしは戦闘魔法(ケンカ)の才能はからっきしですが、一般魔法は大陸でも五本の指に入るといわれますわ」

「ちなみにベンリさんに魔法を教えたのは勇者パーティのデッカード氏の師匠です」

「魔法学院の名誉教授だったっけ?」

 うんうんと二人は頷く。


「ガンダーウルフっていう爺さんですわ。これがまた性格が悪い悪い」

「ガンダーウルフさまも性格は悪くないですよ。ただちょっと変わった人です」

 そう言えばデッカードも師匠は変わった人だって言ってたな。


 そんな雑談をしながら、僕は畑を耕す。一通り耕したところで種を植え、水をやった。そして180センチほどの支柱をいくつか立て、僕のやることは終わった。

「あとは任せてくだせぇ」


 ベンリさんは(かが)んで畑に手を付けた。

「恵司る大地の精霊よ……」

 ベンリさんが魔法を唱えると、手が光りその光は畑を包み込んだ。


 畑のいたるところに緑の芽が出たと思えば、それらがぐんぐん大きくなる。支柱にそって大きくなり150センチほどの高さになり、真っ赤な実をつけた。

「す、すごい」

「これで今晩の晩飯のオカズが出来上がりって寸法でさぁ」

 確かにベンリさんの一般魔法は凄い。まさしく達人の技だ。


「それでは収穫しましょう」

 アイリさんはたいして驚くでもなく、ささっとトマトを収穫してしまった。


「それでは、本日のディナーはトマトのフルコースです」

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この小説のエッチなお話しを同人誌でやっております。
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