二日酔いな朝
う~ん、頭が痛い。あれ? 今何時だっけ? 昨日は宴会で……。
そこではっと僕は目を覚ました。
「あいててて……あ、アイリさん」
見れば寝室の入口にアイリさんがガラスコップと水差しを持って立っている。
「うなされてましたよ。ユウキさま。二日酔いですね」
「う、……うん。そうみたい、頭が痛い」
「村長に勧められるまま飲むせいですよ。村娘たちに鼻の下を伸ばしてましたね」
少し呆れ気味にアイリさんが言った。
「うう、面目ない」
「はい、冷やしたお水ですよ」
僕は言われるがままガラスコップに口をつける。
「う、美味い、この水は?」
「山のふもとで湧き水をとって、浄化魔法をかけたものです。それを一般魔法でわたくしが冷やしました」
「そうなんだ、ありがとう。これは最高の酔い覚ましだな」
ごくごくと喉を鳴らして、立て続けに三杯飲んだ。
「ぷっ……はぁ……生き返る」
「朝食は食べられそうですか?」
「うん、何とか食べられそうだよ」
「それではダイニングまでお越しください」
アイリさんに誘われるまま、少し頼りない足取りでダイニングへ向かう。
「わぁ……凄い、ごちそうだ」
炭火で焼いたような何かのロースト肉にスープ、ちぎりレタスのサラダにクロワッサンのサンドイッチだ。
「この肉良い匂い」
「それは昨日、ファイヤボールで焼かれたイノシシの肉です。地元の猟師がもったいないからと取っておいたものを分けてもらいました。スープもイノシシ肉と骨からダシをとりました」
「うん、このスープ凄く真面目な味、手抜しないでちゃんと作ったスープだ」
イノシシの骨から良いスープが出てる。骨以外には香味野菜だろうか。この味僕は好きだ。
「サラダは昨日、ユウキさまが一緒に踊った村娘の家がお礼にくれたものです。新鮮な朝採りのレタスですよ。バルサミコ酢のドレッシングで召し上がってください」
「うん、シャキシャキ感からいって全然違うな。体中の血が綺麗になるような鮮烈な甘さのあるレタスだね」
これは美味しい。ちょっと子供舌の傾向がある僕は、あまり生野菜が好きではないけど、これならいくらでも食べられる。
「クロワッサンのサンドイッチには、村長から送られた生ハムを使っています。レタスを使うか迷いましたが、サラダとかぶるので、生ハムとチーズのサンドイッチです。チーズもこれまた昨夜ユウキさまと踊った酪農家の娘から頂いた、生モッツァレラチーズです」
フロア村の農家の皆、ありがとう。どの食材もレベルが高い。
「クロワッサンは昨日、ユウキさまがでへでへしながら踊っていた。とても胸の大きな村のパン屋の娘から頂いたものです。凄い人気ですねユウキさまは」
「そ、……そんなにでへでへしてたかな?」
その娘のことはしっかり覚えている。確かに人一倍胸の大きな娘だった。でも僕はアイリさんの胸が一番好きだよ……とは言えず。僕はちょっと小さくなりながらサンドイッチを齧った。
「こ、これは美味い。この生ハムが美味いのは知ってたけど、チーズとクロワッサンが合わさるとさらに美味くなるね」
思わずがっついてしまうほどの美味さだ。スープで口の中を湿らせながら、僕はハイペースでサンドイッチを食べた。
「メインはイノシシ肉の炭火焼、こちらは炭火で焼いて岩塩をかけただけです」
「うううう、美味い……肉汁がジューシーで肉と脂身がなんて美味しいんだ」
山を駆けずり回っていたであろうイノシシは筋肉がしっかりついてて食べ応えがある。多分森のどんぐりなんかを食べていたせいか、脂身がサラッと口の中で蕩けて旨味が口いっぱいに広がる。
「ご馳走様でした」
僕は手を合わせて頭を下げる。本当にフロア村の農家の人たちには頭が下がる思いだ。
「はい、おそまつさまでした。それでユウキさま、本日はいかがお過ごしのつもりですか?」
「う~ん……」
特に何かをやらなければいけないわけじゃない、ゴロゴロしてもいいし、また釣りに行ってもいい。どうしたものか。
そこで、農家の人たちの顔がよぎった。そうだ! これだ!
「庭に畑があったよね」
「ええ、ユウキさまのご希望でしたから、庭には作物が植わっていない畑があります」
「そこで何かを作ろう」
「よろしゅうございます。それでは倉庫の農機具を見てみましょう」
「うん、楽しみだな……何を植えよう」
僕の胸は期待で高鳴った。




