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バイキング前

 昨日は小さなお侍さん二人にエッセイの代打をたのんで、早朝から彼氏さんと京都へ行ってきました! 彼氏さんの運転で一般道をクルマでトコトコ走ってゆきます。コロナで3年ほど京都へ行けなかったので、よく知っている道なのに知らないおうちやお店ができている。ほんとにコロナは大変だったんだな……。


 今日は出町柳というところに車をとめて、叡山えいざん鉄道という電車に乗ってどこかへ行くらしい。どこが目的地か知らないのは、わたしがそういうコトに興味がないのと、彼が鉄ヲタなので万事決めてくれるからです。彼が電車に乗りたいなら付き合うよ♪


 2両編成の小さな電車に乗って、町中をトコトコ進みます。前回電車に乗ったのは、いつだったかなぁ? 思い出せない。コロナでお出かけできなかったものなぁ! 電車でひなたぼっこしながらボーっとしていると、彼氏さんが「次で降りますよ」と言った。もう降りるの? 修学院という小さな駅で降りると、スーパーやお店がたくさんあります。滋賀とはちがって人が多い! 少し歩いてシャッターだらけの静かな商店街のアーケードを歩いてゆきます。昭和な感じの商店街で、閉店しているお店が多い。こんなところになぜ来たんだ? それにしても、さっきからイイニオイがするな……。歩いてゆくと1軒だけ人の並んでいるお店があります。それは小さなパン屋さんでした。このイイニオイはパンの焼けるニオイか。おなかすいたよ。


 そのお店はガラスケースにパンが並んでいて、おしゃれな女性店員さんが対面式で注文したパンを包んでくれるシステムです。ガラス張りの店の奥では男性がパンを作っていて、大きなオーブンが稼働しています。並んでいるパンは15種類くらい、数にすると40個くらいかなぁ。たった40個のパンを対面式で売るなんて、コストがかかるよなぁ! やっていけるのか? 前に並んでいた地元のご婦人が、慣れたようすで次々にパンを注文します。ケースに並んでいない食パンやブリオッシュも注文している。店員さんが「今日は焼き上がりが早いので、あと5分ほどで焼き上がります♪」そう言っている。なるほど。店先のパンだけでなく、随時焼き上がるパンがあるのか。


 ご婦人が「また後で来ます。先にお会計を」そう言うと、3千円(!)支払った! 高っ! 驚いてパンの値札を見てみると、どれも単価が高い!! 200~800円くらい! そしてフランスパンもエピもクロカンブッシュも、どれも本格的! たぶんクリスマスにはシュトーレン(高級なお店がこぞって作る干した果物がギッシリ入っためっちゃ甘いお菓子。とりあえず値段が高い!)も作ってるな……。シャッター街のお店だから油断していたが、とんでもなく客単価が高いお店らしい……!!


 彼が言うにはクロワッサンが有名なお店だそうです。一つ230円! あまりの高さにビビって「あなたが食べたいパンを選んで」そう言って丸投げする。普段5枚で99円の特売食パンを食べているわたしが、一つ数百円もするパンを選ぶなんてムリです!


 そう言っている間に後ろにお客さまが並んだので、わたしは行列から離れました。向かいのお店の昭和な婦人用品店のちゃんちゃんこを眺める。ちゃんちゃんこ……あったかいですよね♪


 彼がパンの入った袋を下げて歩いてきました。お飲み物をゲットしなきゃ。あったかいコーヒーが飲みたいので、コンビニカフェのコーヒーを買いにゆきます。コンビニの店員さんが親切そうな女性だったので、聞いてみました。


 ソウ:この近くに、このコーヒーを飲める小さな公園はありますか?

 店員:この道をまっすぐ行ってイオンスーパーから右に曲がると、小さな三角公園がありますよ♪


 礼を言って店を出ます。小さな三角公園はすぐ見つかりました。小春日和の日差しがベンチに降り注ぐ、こじんまりした素敵な公園です♪ ベンチに座ってクロワッサンをかじると……。


 ソウ:うまい! なんだコレ!?

 彼氏:おいしいですね! 


 バターと小麦と塩の美味しさを最大限に引き出したような、シンプルで奥深い味がする! 外はサクサク、中はしっとり。冷えた状態でこれだけおいしいなら、焼き立てはどんだけうまいんだ!? フランスには一度も行ったことないけれど、このクロワッサンは本場フランスのクロワッサンと互角に戦えると思う! めっちゃおいしい!! 230円が高いなんて思ってごめん! ジュワっと感じるバターの量で、230円は適正価格だってわかるよ!! 夢中で食べて、合間にあったかいコーヒーをすすります。めちゃめちゃ美味しい!! 


 あっという間に食べてしまった……。今日の晩御飯はバイキングなので、それまで絶食です。でももう少し食べたい……。すると彼が包みを取り出した。


 彼氏:じつはあまりにも美味しそうだったので、カレーパンとソーセージパンを買いました。

 ソウ:それを早く言えよ!!


 どちらも高級かつ素朴で絶品なお味でした! ハーブがきいてておしゃれな感じ。なおかつうまい!! あまりの美味しさと空腹で、ガツガツ食べてしまった。このお店が近所になくて、本当に良かった! もし近所にあったらお給料のすべてをパンに突っ込む自信がある! 買いに行けない距離で良かった!


 大満足で駅へ戻ります。ちょうど電車が来たので乗り込む。どうやら今日の目的地は、最終駅の「鞍馬駅」らしい。


 ソウ:鞍馬? 天狗の?

 彼氏:そうです。

 ソウ:じゃあ今日は天狗をつかまえる! 鼻を持ってブンブン振って弱らせて、家に連れて帰る!

 彼氏:天狗のご飯はどうするのですか?

 ソウ:さっきあなたにミカンとリンゴをもらったから、それを分けてあげる。

 彼氏:たぶん天狗はトンカツとかすき焼きとか重たい食事が好きなんじゃないですか?

 ソウ:トンカツやすき焼きなんて贅沢な食べ物、わたしだってめったに食べられないよ! そんなの食べさせてあげられへん!

 彼氏:それなら天狗は来てくれないと思いますよ。


 アホみたいな会話をしながら進んでゆくと、住宅街が途切れて山肌が見えてきました。急な傾斜に杉の苗木が規則正しく植えてあります。


 ソウ:あんなに急な斜面で穴を掘って苗を植えるの!? 林業の人って、どんだけアキレス腱が強いんだ!?

 彼氏:苗木を白いネットでおおっているでしょう? あれはシカに食べられないために保護しているんです。

 ソウ:シカは苗木も食べちゃうの!?

 彼氏:アイツらは何でも食べるんですよ! ものすごく迷惑です! シカもイノシシもアライグマも!!


 彼のお寺は山の中にあるので、けものたちに苦労させられているらしい。端正こめて育てている庭木がシカやイノシシに食べられて激怒していたこともあったし、アライグマに靴を片方持っていかれてマジギレしていたこともあったな……。


 ソウ:でもでも、アライグマはかわいいよ?

 彼氏:かわいくなんかありません! あんなヤツら滅び絶えてしまえばいい!


 普段は優しくて温厚な彼氏の心の闇を垣間見ていると、鞍馬駅につきました。ととと、とりあえず今日は小春日和のハイキングを楽しもうよ!! 小さな駅の改札を抜けると、すぐそばに山が迫っています。紅葉の時期は終わったはずなのに、ところどころに真っ赤な紅葉がある! キレイ! そしてキレイな紅葉と同じくらい真っ赤な顔の大きなおおきな天狗の顔が置かれていました! 2×2メートルくらいの大きくて真っ赤な顔から、3メートルくらいの長い鼻が突きだしてる! これが天狗か!? 立体は初めて見た!!


 ピョンピョン飛んでみても、鼻に手が届きません。ピョンピョン!


 ソウ:手が……手が届かない!

 彼氏:マチちゃん、鼻からぶら下がるつもりでしょう!? ダメです! 見るだけにしてください! 壊れたら怒られますよ!!


 さすが彼。一瞬でわたしの狙いを見抜いた! ちぇっ! 鼻からぶら下がってみたかったのに!!


 風雨にさらされた古い和風なお土産やさんを冷やかしながら歩いてゆきます。店先に牛若丸の絵が置いてある。


 ソウ:牛若丸? なんかゆかりがあるの??

 彼氏:牛若丸はこの鞍馬山で修業をしたんですよ。


 そうなの? 牛若丸って鎌倉時代でしたっけ? そんな時代からここに人が来てたの? そして当時の話がいまだに語り継がれてるの? すごいなぁ!!


 そしてすみません! タイトルの男のロマンにも意味不明な結末にもたどり着けないまま、明日へ続きます! また明日、お会いしましょう~!!


(続く)

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― 新着の感想 ―
[一言]  シカやイノシシは食べてしまえますけど、アライグマはそうはいかない(たぶん)ので、よけいやっかい?  義経は、牛若丸として、たくさんの言い伝えがありますね。大陸に渡った生存説とか。
[一言] アライグマはねぇ。 見た目だけは可愛いけど『凶暴かつ獰猛』『何でも食い荒らす』『どんどん増える』と三拍子そろってる厄介者なんですよ。 彼氏さんの気持ちもわかるなー(^^; ラス〇ルのイメー…
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