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92.カイリの想い

パリーンっ!!


「危ないっ!!」

皆が駆け寄るよりも早く、ものすごい音を立てていきなりクリスタルが砕けた


クリスタルはみさきを避けるように辺りに散らばり、その中心でみさきは頭を抱えて倒れている


カイリはみさきをそっと抱き上げた

「大丈夫か!!!?」


みさきはうなりながら耳を塞ぐように両手で頭を抱えている


(過去の記憶を辿っているのか……)

肌は、石のように無機質で冷たい


トキがみさきの額に手をかざし、魔力の流れを探った


「外的な要因ではなさそうだけど………。」

みさきの中の魔力の穢れが濃い


「介入できないね……。」

反発が強い。いかなる魔力の侵入も拒否しているようだった


ルイは辺りにちらばったクリスタルを1つ手に取って言った

「このクリスタル…」

皆の視線がルイに集まる

ルイはクリスタルの一片を掲げる

そのクリスタルは先程までの淀みは無くなり、輝きを取り戻していた


皆は辺りにちらばったクリスタルを見渡すと、

クリスタルの欠片は全て綺麗に浄化され、普段の輝きに満ちていた


「浄化したのか……」

カイリの一言で皆の視線が再びみさきの元に集まった


「シスター?どこか休めるとこはあるかな?」


何が起こったのか、呆気に取られているシスターはトキの声に慌てて反応して、奥の間を指し示した


「あちらにっ……!」

カイリはみさきをゆっくり抱き上げると、

シスターが指し示した奥の間に進む


みさきは、あの冷たい水の中のような空間を1人で、さまよっているのかもしれない

辛い記憶の海の中を1人で……


何かしてやれることは無いのか

と思えども、過去に介入することは難しい


教会の奥には客間のような一室があり、そこのベッドにみさきを横たえた


「……ん?」


頭を抱えていた両手は、いつの間にかカイリの服をギュッと掴んでいた


その手をとり、自分の温もりを分け与えるように手を包んだ


険しい表情は少し和らいでいるが、苦しそうな様子には変わりない


「みさきの拒絶が強すぎて魔力の介入ができないね」

トキはみさきの頬を撫でながらぽつりと呟いた


「無理はさせたくない」

無理やり介入することも出来るが、嫌な思いはさせたくない

過去にどんなことをされたのか……

あの晩も、何かに脅え、拒絶し、呼吸もままならない様子だった

体の強ばりを少しずつ解き、ゆっくりとだが魔力を受け入れてくれる姿に安心した

心を預けることに慣れてくれるといいのだが



「そうだね。とりあえず魔法薬作ってみようか。目が覚めて大丈夫そうなら飲ませよう。体の不調はそれで楽になるはずだから。」


「後は浄化を……どうするかだな……。」

きちんと浄化しなければ、いずれ負の魔力に心が侵食されてしまう


この国中、全ての人々の負の感情をクリスタルを介してるとはいえ、1人で浄化しているんだ

負担がないわけが無い

自分の意思で魔力が使えないみさきは、自分の意思とは関係なく力を使わされてる可能性もある

今回のように、クリスタル自体が穢れてしまえば、不調にも繋がる


「ちょっと、向こうがどんな様子が見てくるよ」

そう言ってトキが部屋を出ていった


ついでに魔法薬も用意して来るだろう


ただ見守ることしかできないもどかしさを胸に、みさきの髪を撫でながら彼女の安らぎを祈るしかなかった

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