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90.クリスタルの記憶

暗くて、深くて、冷たい

そうだ。ここはクリスタルの中だ

私は埋め込まれた

ここから出られないように

魔法が使えないから


『使えないマリアだ』


人は口々にそう言った

だから、この中でクリスタルと一体化して永遠に時を過ごす

それしか私の使い道がないらしい


だから私はクリスタルの中に漂っている

もちろん動けないし、誰もいないし、

聞こえるのは人の汚い思念ばかり


人々の恨み、妬み、怒り……

沢山私の中に入って来る


薄暗くて不快な空間には、逃げ場は無い

この冷たい空間で、私はただただ人の言葉を受け入れ続ける


感情の波は激しくて、その負の感情に支配される

拒否権は無い

私は人々の汚い心を受け入れ、人々が健やかに過ごせる未来を祈らなければならない

自分では何も出来ない私が、この国のためにしなくてはならない仕事


宮廷内は負の魔力で満ちている

息苦しいし、いざこざは絶えない

きっと、街中もそうだ

だから、私は浄化のクリスタルとして、このまま心を犯され続けることを受け入れるしかないんだ


負の感情は耐えることなく私の頭に流れてくる


もぅ、聴きたくない

耳を閉ざしても頭の中に流れてくる

人の心を救うために、私の心は死んでいく

体は、その言葉に支配されることを拒否するように

心に蓋をした

感情に蓋をした

欲望に蓋をした

体と心を切り離したら、何も感じなくなった

私の体と感情はバラバラにクリスタルを漂う

暗くて、冷たい、この中で

何も考えず、何も想わず

私は、眠り続けた


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