88.礼拝堂にて
門を開け、私達が中へ歩みを進めると、シスターは、再度門を施錠したところで、ハッとした表情を浮かべた
「あれ。なんで……」
シスターはボソッと呟いて、私たちを見つめる
トキ殿下は
「ルゥ。流石だね。僕が出る幕が無かったね」
と言って、2人を褒めた
褒められた2人は、嬉しそうにニコニコしている
「少しの心の隙間があれば、そこに同調して干渉できるから」
「僕達はきっかけを作っているだけ。あとは、シスターが話してくれるよ。きっと」
そう言って、シスターの方を見つめた
シスターは、観念したのか、
「なぜ、こちらにいらしたのでしょうか。ご要件を……」
と、言いかけたところで言葉を失った
カイリ殿下は、フードをとり、羽織っていたローブを脱いだ
「あ…………カイリ…………殿下っ!」
シスターは慌てて跪いてご挨拶の姿勢をとり、頭を下げた
その手は動揺を隠しきれずに震えている
「良い。顔を上げろ。それより、この教会はなぜ門を閉ざした?理由があるはずだな?」
そう言って、礼拝堂の扉の前に歩いていった
「あっ!その!!」
シスターは慌てて駆け寄ると、
礼拝堂に進まれるのを妨げた
「何かあるね?」
トキ殿下もフードを脱ぎ、行く手を阻んでいたシスターを見つめる
赤い瞳と紫の瞳に見つめられ、
シスターは観念して、力なく抵抗を辞めた
ガチャ……
礼拝堂の扉を開ける
中は昼間なのに薄暗く、人の気配はもちろんない
ステンドグラスの窓から差し込むはずの光は、辺りの小高い建造物にさえぎられている
『黒魔術が行われているという噂がある』
その言葉を思い出して、私は足がすくんだ
(え。なんかちょっと怖い。いきなり、ここでドアがバタンって閉まって、お前たちは生贄じゃーー!!みたいな展開になったらどうしようっ!)
私は、勝手な妄想に身震いし、近くにいたトキ殿下の服を掴んだ
それに気づいたトキ殿下は
「ん?どうした?」
と、言い、私を優しく抱き寄せてくれた
カイリ殿下は奥へ歩みを進めると、中央に掲げられたクリスタルの前で足を止めた
「これは……」
クリスタルは薄黒く濁り、本来の輝きはまるで失われていた
魔力の汚れが溜まりすぎている
そして
真ん中には大きな亀裂が入って、衝撃を与えると砕けそうだった
「申し訳ございませんっっ!!」
シスターが少し取り乱しながら崩れ落ちた
その様子を見て、ラディアさんがシスターを支えて起き上がらせ、近くの椅子に誘導した
「聞こう」
カイリ殿下が端的にシスターに説明を求めた
ラディアさんに支えられながら、シスターは説明を始めた