表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/174

85.ロイさんの魔力


門で待つと、ロイさんとフェンさんがお迎えに現れた


フェンさんは謎の噴水事件があってから、姿を見るのは久しぶりだ


2人は、片手を胸に当てて軽くお辞儀をした


堅苦しい挨拶が苦手なので、略式なのはありがたい


フェンさんが不安そうな顔で口を開いた

「みさき様。お加減はいかがでしょうか?」


フェンさんはとても真面目な人だ

きっと、私のために色々と気を使って行動してくれている


ラディアさんと相性が悪いと言ってはいるけど、それによって、私に影響が出るのを懸念しているんだろう


が、故に、謎の噴水事件のことを気にしていないはずがない


「大丈夫です。いつもお気遣い頂いて、ありがとうございます」


「それは、よろしゅうございました。それでは、あちらで皆様がお待ちですので」


と言って、見慣れた魔法陣の施された場所に道を指し示す


すると、ロイさんが音もなく私の隣に現れ、スっと手を差し出した

白い手袋に包まれたその手を取る


トキ殿下は黒だけど、ロイさんは白い手袋をしている

服装も、役人というより、秘書に近い感じだ

あと、なんか、気配がなくて、毎回ちょっとびっくりする


「失礼致します」

そう言って、私を抱き抱えた


「え!あの!私大丈夫です、何回か、渡ってるんで、多分、ここまでしなくても……」


「私が人を運ぶのが初めてでして、魔力特性的に、方向を見失われて、時空で迷子になられるといけませんので……。ぜっっったいに、離さないでくださいね?」


離さないでください?

離れないでじゃなくて?


意味深な物言いが気になったけと、ロイさんは、それでは。っと言って、転移の魔法陣に向けて足を踏み入れた


一瞬目の前が歪む

いつもはこのまま、気づくと目的地に足を下ろすのだが、今回はわけが違った


天地が、左右が、分からない

ロイさんに抱き上げられているはずなのに、地に足が着いている

いや?地に足は着いていない?

ロイさんはどこ?

私の手はどこ?

私はどこ?

ここは誰?

私はどこ?

パニックになる

どれもが正しくて、どれもが正しくない

何もかも投げ出して全てをリセットしたくなる


『離さないでくださいね』


あっ!!!!!

私はギュッと、手を握った

自分の手がどこにあるかさえも分からない

とにかく、よくわからないまま手を握った


すると


「みさき様!!??」



はっ!!!!

パチッと目を開けると、ロイさんは私を腕に抱えながら、心配そうに見つめていた


「あっ!え??なんか、今……」

さっきの方向感覚パニックがまだ抜けきらない


「申し訳ございません。やはり、私では危のうございますね」


なんだったんだ。さっきのは……


「私の魔法特性は『偽り』です。幻術と少し似ていますが、物、空間、方角、存在、ありとあらゆるものを偽ることが出来ます。諜報向きのスキルなので、人をお運びするのには、やはり不向きでしたね……」


離さないでと言われた理由がわかった気がした

離れなければ良いというものでは無い。その対象物を見失ってしまうのだ

偽りの先の真実を離さない!!という強い意志が必要だった


同じ魔法を使っても、使う人の魔力特性の違いで、こんなにも影響が違うなんて……


少しすると、感覚が戻ってきた


ロイさんは、私を丁寧に降ろすと、門の前で馬を準備しているみんなのところに歩み寄る

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ