83.ただいま
明日のことをユミさんに告げる
若干、ダメですって言われる気がしていたんだけど、答えは案外すんなり帰ってきた
「それは、お導きかもしれません」
「ですが、みさき様。くれぐれも、お気をつけください」
私は正直、ユミさんの言う『お導き』とか、『お示し』とか『運命』って、なんの事だか、さっぱりだった
でも、今は何となくわかる気がする
そのうち、神の啓示が下りました。みたいな神託を告げる教祖になれるかもしれない
なーんて
いやいや。冗談はさておき、
私は着替えて教会のご挨拶のお仕事を終えると、エリちゃんと一緒に明日の準備を整えた
よくよく考えてみても、王都から出たことは、ほぼ無い
というか、家から出ることも、今までは全然なかった
他の教会に行ったことも、見たこともない
『くれぐれも、みさき様がマリア様であることは、御内密に…』
ユミさんから聞いた注意点はそれだけだった
遠足前のワクワクで全然眠れない!みたいになったらどうしよう!!とか、
不安なことも沢山あるから、考えすぎて眠れない!!とかとか……
眠れなくなりそうな理由を考えててみたけど、考えているうちになんだか眠たくなってきた
私は月明かりが差し込む窓際のソファーに腰かけ、ライラさんから貰った薔薇の蕾をぼんやり眺める
月光を浴びてキラキラ輝いているように見える蕾は、貰った時から蕾のままだ
「私が魔力を使えれば咲くのかな?」
でもどうやって……
やっぱり、私にはできないことがいっぱいだ
とりあえず……明日は…………
眠気に抗えない私は、朝起きてユミさんに怒られることを覚悟で、ソファーの上で月の光に照らされながら寝落ちする道を選んだ