82.報告
テーブルの脇に控えていたラディアさんは、そこに立ったまま、胸元に片手を当てて
「それでは、殿下方にご報告申し上げます」
と、何かの報告を始めた
「第4都市の聖堂ですが、あちらは街中にあるため、周辺の都市開発が進み、信仰も薄れ、あまり利用する者も少ないようです。ですが、そのためか、街中にはあまり心地のいいものでは無い魔力が漂っております」
「で、関心の聖堂内は?」
「それが………中に入れていただけなくて……」
「は?どういうことだ?」
「強制的に中に入ることも出来たのですが、傍で小さな争い事が始まってしまい、それを仲介していたら、負の魔力を教会内に撒き散らしに来たのか。と、追い出されまして……」
「そもそも、教会は魔力を浄化するために作られてた施設だと思うんだけど?そのためのクリスタル……違ったかい?」
「やはり、様子がおかしいので、他の方面から内部を調査した方が良いかと存じます。わたくしは取り急ぎ、ご報告に戻りました次第です。」
「わかった。私が向かう」
カイリ殿下がスパッと言い切った
一体何が起こっているのか、私にはサッパリだ。
「あのぉ……私が聞いていい話だったんでしょうか……。」
私は心配になって聞いた
「構わない。みさきにも関係がない訳では無い」
「ん?」
私にも関係あることってむしろ何ですか?
「第4都市の聖堂で黒魔術が行われてるという噂があるんだ。それで、クリスタルに異変が起こってるんじゃないかってね」
「黒魔術????」
人を呪い殺すとかそーゆーやつですか?!
「よりによって、クリスタルのある聖堂だとね、みさきの頭痛もそれが関係していたりするのか気がかりでね」
「明朝出発する」
「あの、私も行ってもいいですか?」
「??んん??!!」
みんなが目を丸くして私を見た
「なんで?危ないよ?」
トキ殿下が慌てて私を止めに入る
「なんでか、行かなきゃって気持ちになって……」
ちょっとずつ思い出されていく記憶
でも、私は何時でも無力だ
今も昔も魔力は使えないし、
色んな人に助けられて生きてきている
ずっとこのままでいいのだろうか?
「………。もしかしたら。呼ばれているのかもな。クリスタルに……」
カイリ殿下は、ボソリと呟いた
「わかった。だが、無理はするな?」
「は。はい。」
「後、ラディァも一緒に来てくれ。」
「「兄上!!」」
ルゥ君が声を上げた
「ボク達も一緒に行きます!」
「お役に立てると思います!」
「わかった。2人とも準備をしておけ」
カイリ殿下はルゥ君達の同行を許可した
「となると、僕はお留守番かな」
「来ないのか?」
「え?だって。みんな出払ったら大変じゃないかい?」
「この際丁度いい。トキにも地方視察は必要だ」
「こっちのことはフェンとロイに任せておけば何とでもなる」
話はどんどん進む
カイリ殿下のお仕事風景の一幕を垣間見た気がした