75.思い出話
「僕達は、半人前で産まれてきているから、小さい頃は魔力量に器である体が耐えられなくて、熱を出すことが多かったんだ」
「そもそもボク達はフラスコで上手く成長出来なかったからね」
「そうそう。体は成長したけど、中身は産まれた時のまま……だから余計に魔力の制御もおぼつかないし、すぐに体調崩してたよね」
ルゥ君達は見た目の割に中身が幼い印象だったけど、この成長過程に何か原因があったのかな?
「そういえば、二人はカイリ殿下とトキ殿下といくつ離れてるの?」
「ん~……。年齢的には1つしか違わないけど、実質5~6歳位の差がある感じかな?」
なるほどぉ~~
なんかしっくりくるかも
「当時、兄上達に会うことは許されていなかったんだ。全ては大人たちの汚い思想のせいでね。兄上達に命を狙われてると聞いていたし、実際に、兄上の周りの大人達に何度か暗殺未遂されてた。本当に信じられるのはルカだけだったよ」
「本来僕達は、兄上達とは相容れない存在だからね。国の後継問題で、大人たちは勝手に争いの構図を整えて行った……。誰も信用出来ない。みんな僕らの命を狙ってる。ルイ以外はみんな敵だった」
王家って大変なのね……
カイリ殿下やトキ殿下から聞いた話もなかなかだったけど、優雅な階層の方達もそれなりに大変なのね……
「ある日、対立が激化してるさなか、ボク達は熱を出した。食事に毒を盛られることは日常にもあったけど、弱っている時を狙って来る大人達から逃げるのは大変だった」
え?熱出しながら逃げ回るの?むしろ、その行動で命危ういよ?!
「でも、その時にカイリ兄上が助けてくれたんだ!!!」
ルカ君はまるでヒーローが来たかのようなテンションだ
キラキラした目で天井を見つめながら、熱く語る
「意識が朦朧とするボク達を守ってくれて、」
「警戒心を解けないボク達に優しくしてくれて、」
「「兄上はヒーローだったんだよ!!」」
おう。やっぱりヒーローだったか
「でも、その後トキ兄上が監禁されてしまって、もしかしたらボク達のせいなんじゃないかって……」
「やっぱり、僕達は元々兄上達と関わってはいけなかったんだ……」
「ある日、ボク達はトキ兄上に謝りに行こうと思って、牢に向かった」
「僕達も少しずつ魔法を使えるようになっていたから、当時はユルユルだった牢の結界は僕の魔法で、門番はルイの幻術でイチコロだったね!」
えっ。すごっ……
ってか、二人の行動力もヤバイ……
「そしたら、その牢の中にカイリ兄上もいて」
「ええっ??!待って!!どういうこと?!」
私は思わず口を挟んだ
「カイリ兄上は、結構頻繁にトキ兄上に会いに、こっそり牢屋に潜り込んでたんだって」
嘘でしょ……牢ってそんなガバガバガバでいいい訳?
「当時のセキュリティはスカスカだったからね~形だけみたいなとこあったし。なんなら、その後、ボク達も協力して、抜け道作って結構自由に出入りしてた」
なんということでしょう……
劇的リフォームしてしまってる……
「そんなこんなで、僕達は兄上にちょっとずつ心を開いていって、結果、兄上が大好きってお話ね!」
ルカくんはサクッと話を切りあげた
あ……トキ殿下の甘やかし術を詳しく聞けなかった……
と同時にルイ君が私の隣から離れてサイドテーブルに置いてあるピンクの小瓶を手に取って、懐かしそうに眺めていた