59.私、昔の夢を見る
教会を出て、あおいお姉様と一緒に歩いていく
向かう先には立派な宮殿が沢山並んでいて、門をくぐると、空気は一変した
重くて息苦しい
整った石畳の道を通ると、大きな扉が目に入る
お姉様は、ドアの前に立つ人と何か話しをして、そのまま中に入っていった
入りたくない
本能は告げていた
ここの空気は尋常じゃなく曇っている
でも、お姉様が行ってしまう
待って……
追いかけて扉の中に入ると、そこには誰もいない
走っても走っても前に進まない
もがいてもその場所から動けない
息苦しい
1人取り残された不安と
進みたくても進めない、帰りたくても帰れない不安感
そこから逃げ出せない恐怖にもがいていると
「『助けて』と言ってご覧なさい?」
と。お姉様の声がした
声を出したくても声が出ない
苦しい……
「人に頼らないのと、人に頼れないのは違うのよ?」
そうだ。
お姉様はいつも私にそう言っていた……
「た……け…………」
振り絞って声を出すけど、声が出ない
ダメだ……意識が遠のいていく……
「……………さま」
「み……さま!」
「みさき様!!!」
はっ!
パッと目が覚めると、えりちゃんが私の腕を揺らしながら声を荒らげて、私の名前を呼んでいた
「はぁ……はぁ……」
息ができる
今まで呼吸ができていなかったのか、私は肩でハァハァと息をしながら、エリちゃんに支えられながら体を起こす
そうだ。私は王宮に行った
忘れていた記憶を思い出す感覚
でも、その先を思い出そうとすると息苦しくなる……
「みさき様。何か温かいものをお持ち致しましょうか?」
エリちゃんは私の手を握りながら、心配そうにそう言った
「あ。うん。ありがとう」
エリちゃんはパタパタと部屋を出て行った
部屋で1人になると、なんだか不安な気持ちが湧いてくる
落ち着かない……
早くエリちゃん戻ってこないかな……
窓の外を眺めると、シトシトと雨が降っている
私はベッドから降りて窓際の椅子に座ると、薄暗い空を見上げた